CIAの凄腕暗殺者ジェイソン・ボーンを巡る一連の騒動は、
前作『ボーン・アルティメイタム』(07)で一応完結。
ポール・グリーングラスは「もうこのシリーズの監督はしない」と言い、
マット・デイモンは「ポールが登板しないなら自分も出演する事はないだろう」と言い、
製作総指揮のダグ・リーマンもシリーズから離れたわけですが、
それでも「このシリーズはまだ稼げるから続編作るぜ!」ってな感じで「番外編的続編」を作ってしまうあたり、さすがハリウッドですな。
いい意味でも悪い意味でも…というか、どっちかというと悪い意味で。
ま、フランク・マーシャルといえばやり手のプロデューサーですからね。
自作のクオリティを守るため、スタジオとケンカしまくった面倒くさいリーマン(フランカ・ポテンテの起用を巡ってモメたりもしたらしい)もいなくなったし、シリーズの脚本家トニー・ギルロイに監督させて、自分の作りたいように作るぜーと思った事でしょう。
そんなわけで、これでもかなり期待して『ボーン・レガシー』(12)を観に行ってきました。
今回はCIAの別な計画で作り出された暗殺者アーロン・クロス(ジェレミー・レナー)のドラマが描かれるわけですが、それだけだとシリーズ色が希薄になってしまう。そこで「ジェイソン・ボーンの死闘の裏で動いていたもうひとつの事件」という時間設定にして、パメラ(ジョアン・アレン)、ヴォーゼン(デヴィッド・ストラザーン)、クレイマー(スコット・グレン)、Dr.ハーシュ(アルバート・フィニー)、ウィリス(コーリィ・ジョンソン)、サイモン・ロス(パディ・コンシダイン)といったシリーズゆかりの登場人物を小出しにする事で、「これは正統なるジェイソン・ボーン・シリーズの続編なのですよ」とアピールしているのですが、正直これが肩すかしというか何というか…。
まずこのシリーズゆかりの登場人物、ほとんどカメオ出演程度の扱い。
パディ・コンシダインに至っては、アーカイブ映像でのご出演。
まぁCIAの皆さんはジェイソン・ボーンの一件で大忙しなので、アーロンの起こした事件に構ってるヒマはないという事なのでしょう、時系列的に。
で、アーロンの関わっている”アウトカム計画”のもみ消し・抹殺に躍起になる政府高官リック・バイヤーが新キャラとして暗躍するのですが、これを演じているのがエドワード・ノートン。
知性派アクターだし、ネチっこい悪役もイケる人なので、この映画でもどれだけアーロンをネチネチと攻め立ててくれるのかしらと思ったら、アーロンに裏をかかれっぱなし。これじゃ1作目のコンクリンと一緒ですよ…。
この人たちの他にも、『プリズン・ブレイク』のステイシー・キーチとか『ハンニバル』(00)のジェリコ・イヴァネクとか『ドライヴ』(11)のオスカー・アイザックまで贅沢に脇役で使っているのに、各々大した見せ場がないのが実に勿体ない。レイチェル・ワイズは最後に殺し屋を蹴り飛ばして活躍しましたけど。
たぶん普通のスパイ・アクションとしてならよく出来た作品だったのかもしれませんが、やはり『ジェイソン・ボーン・シリーズ』の看板を背負ってしまうとねぇ、いろいろ期待されちゃうから大変よねぇ、と本編を見ていて思いました。ジェレミー・レナーがいい芝居をしているだけに惜しいなぁ、と。
あの終わり方だとアーロン・クロスであと1本は続編を撮りそうですが、果たして出来栄えやいかに。
音楽についてはまた次回。