『ケルティック・ロマンス』のアーティスト、マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る不定期連載企画。今回はマイケルの作品から、CGアニメ映画『サーフズ・アップ』(07)をご紹介します。
サーフィン大会で優勝を狙う青年ペンギン・コディ(声:シャイア・ラブーフ)とその仲間たち、そして伝説のプロサーファー”ビッグZ”(声:ジェフ・ブリッジス)とのユルいドラマをドキュメンタリー番組タッチで描いたアニメ。
マイケル・ダナといえば、アトム・エゴヤンとかアン・リーのようなシリアスドラマ専門の映画音楽家という印象だったので、「マイケルがペンギンアニメの音楽をやるの?」と当時かなり意外に思ったもんです。
しかしそんな第一印象に反して、いい感じに肩の力が抜けたハートウォーミングな好スコアを書き下ろしておりました。系列的に言えば『リトル・ミス・サンシャイン』(06)系のサウンドかな、と。ウクレレやパーカッション、スティールドラムを使ったトボケたスコアなどは、今までマイケルの映画音楽作品では聴いた事がない感じのもので、なかなか新鮮でした(ちなみにウクレレ演奏は弟のジェフ)。
ピアノと流麗なメロディーが印象的なメインテーマ曲に、いつものマイケルらしさが感じられます。
SONYから出たサントラ盤はシュガー・レイやパール・ジャムなどの劇中使用曲をコンパイルしたヴォーカル盤でしたが、BUYSOUNDTRAX RECORDSから1000枚限定でスコア盤がリリースされました。全23曲で収録時間は28分強。
まぁ本編では歌モノがガンガン流れてたし、コメディもののスコアは1曲あたりの演奏時間が短いというのが一般的なので、収録時間が短いのは致し方ありません。1000枚限定とはいえ、スコア盤が出た事がダナ兄弟のファンとしては何より嬉しかったりします。
さて肝心の映画はというと、これがちょっと残念な出来。
たぶん『ハッピー・フィート』のヒットを受けて「ペンギンで何かCGアニメを作ろう!」というノリで製作したと思われますが、いかんせん題材がサーフィンなので子供には感情移入しにくく、J SPORTSで放送しているスポーツ・ドキュメンタリー番組風のドラマ構成(あたかも「TVクルーが撮影している」ような画作りになっている)もファミリー向け映画の手法とは思えない。だからといって大人が見るにはドラマが薄い、という中途半端な内容になってしまってます。
注目ポイントとしては、ジェフ・ブリッジスが『ビッグ・リボウスキ』(98)、『ヤギと男と男と壁と』(09)、『トロン:レガシー』(10)の系譜に繋がる「だらしない風体で隠遁生活を送っている導師」の役をまたもや演じているのと、インチキ臭いプロモーターのレジーを演じたジェームズ・ウッズのマシンガン・トーク。この2つは”いかにも”な感じなので必見。『バス男』(04)のジョン・ヘダーもボケ役でいい味出してます。
あ、ヒロインペンギンの声がズーイー・デシャネルなのもポイントですね。