『007 ゴールデンアイ』の音楽は是か非か

goldeneye

こんなブログタイトルにしてしまいましたが、
僕の中では既に答えが決まっておりまして、
『007 ゴールデンアイ』(95)のエリック・セラの音楽はもう断然”是”なのであります。

しかしコアな(年季の入った)007ファンの間では、
セラの音楽は賛否真っ二つ…というか、否定派の方が若干多い感じ。
今度の『007 スカイフォール』(12)の音楽より意見が分かれてます。
「まんま『レオン』(94)じゃん!」とか「こんなの007の音楽じゃねぇ」とか、
結構辛辣な意見もチラチラ見たりもするのですが、
いやかなり面白いですってセラの007音楽。

『ゴールデンアイ』は1989年の『消されたライセンス』以来、
実に6年ぶりのボンド映画だったわけですが、
ピアース・ブロスナン(当時42歳)を5代目ボンドに迎えて、
久々にシリーズを”復活”させるにあたって、
「新鮮さ」と「スタイリッシュさ」を前面に押し出す戦略で行く事にしたのでしょう。
となると、音楽もこれまでのジョン・バリーのスタイルとは違った路線で行きたくなるのが人情というもの。
そこで白羽の矢が立ったのが、
前年に『レオン』がスマッシュヒットを記録して、
英語圏での知名度が上がったエリック・セラだったのではないかと思うのです。

で、セラの音楽。まずガンバレルのシーンの曲からしてスゴい。
「007版ハウス・ミュージック」とでも言うようなノリで、
これを聴いただけで「今度の007は今までと何か違うぞ」と当時気分が高揚したもんです。
聞くところによると、このガンバレルの音楽もコアな007ファンには受け入れがたいらしいのすが。

映画本編の音楽も、『レオン』の流れを組むモワッとした重低音を効かせたサウンド。
冒頭の化学兵器工場のシーンでは、
「ジェームズ・ボンドのテーマ」のフレーズをティンパニで演奏していてなかなかユニーク。
ぶっといベース音と幾層にも重ねられたリズムが独特なグルーヴ感を生み出しています。
“The Goldeneye Overture”、”Dish Out of Water”、”The Scale to Hell”あたりは、
トリップ・ホップ感覚で聴けるスコアですね。
ゼニア・オナトップとの”峠レース”のシーンで流れる”Ladies First”はモロにハウス・ミュージック。
これもカッコイイ。

しかしながら、
セラの”我が道を行きすぎた”音楽はプロデューサー陣からもダメ出しが出てしまったようで、
サンクト・ペテルスブルグの戦車大暴走シーンの曲は、
セラの”A Pleasant Drive in St. Petersburg”のスコアがボツになり、
ジョン・アルトマンが作曲した「いかにもボンド映画らしい曲」に差し換えられてしまいました。
うーん、そんなに合わないかなコレ。
試しにそのシーンの音声を消して、
サントラに収録されたセラの音楽を流しながらDVDを見てみたけど、
結構合ってたけどなー。
これも「ジェームズ・ボンドのテーマ(Trip Hop Mix)」みたいな感じで気に入ってます。

こうしてエレクトロ系な音楽を鳴らしているセラではありますが、
“We Share The Same Passions”では綺麗なメロディーの流麗なオーケストラ・スコアを書いてます。
もともとセラはメロディーメイカーとしての才能に長けてますからね。
この点はもっと評価してあげてよろしいかと思います。

それにしても、セラはフランス本国と日本での人気・評価に比べて、
英語圏(特にアメリカ)での評価が不当に低いのが気になる。
こんな実力も才能も兼ね備えた作曲家に、
『バレット・モンク』(03)とか『ローラーボール』(02)とか、
B級映画の仕事しか発注しないハリウッドのスタジオっていかがなものか。

 

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