先月末、巷であまり評判のよろしくない『ダイ・ハード/ラスト・デイ』(13)を観て参りました。
自分は『ダイ・ハード4.0』(07)のサントラ盤のライナーノーツを書かせて頂いた身ですし、その時に作曲家のマルコ・ベルトラミ(以下マルコさん)ともやり取りした思い出もありますので、せっかくマルコさんが前作に続いて音楽を手掛けたのに、ムゲにスルーのもいかがなものかと思い、わざわざ映画館まで観に行った次第です。
さてその映画の感想はと申しますと、
ひとことで言えば「雑」な映画だったかな、と…。
『ダイ・ハード』といえば、緻密な伏線と粋なセリフ、個性的なキャラクターがキモのシリーズなのに、どうにもそのあたりが大雑把な印象が拭えない。あと、ジョン・マクレーンの息子(ジェイ・コートニー)が活躍しすぎて親父の影が薄い。ファンはジョン・マクレーンの活躍が見たいのであって、息子が親父より目立ってしまうのはいかがなものかと。チェルノブイリのアレについては…もはや論外という事で。
もしこれが『ダイ・ハード』シリーズではないアクション映画だったら、比較的よく出来た作品だと思うし、ブルース・ウィリス主演の「『ダイ・ハード』とは別のアクション映画」だったら「あぁ、『ダイ・ハード』みたいな映画だね」という事になると思うのですが、何だか今回は映画本編から『ダイ・ハード』らしさが感じられない。一体どうしちゃったんだろう?脚本書いたの誰?と思ったら『ソードフィッシュ』(01)のスキップ・ウッズでしたか。そういえばあの映画も、テロリストのリーダー(ジョン・トラボルタ)が偉そうな能書きを垂れる割に、犯行計画が大雑把な話だったなぁ…。
世界興行収入的には一応ヒットしているので、数年後にまた続編が作られるのかもしれませんが、今回でシリーズ終了なんて事になったら「ジョン・ムーア監督=不死身の男ジョン・マクレーンに引導を渡した男」としてファンに認知されてしまうのではないかと他人事ながら心配しております。『フライト・オブ・フェニックス』(04)は結構好きだったんですけどねー。
と、まぁかなりガッカリ感の強い映画ではあったのですが、マルコ・ベルトラミの音楽はかなり健闘してました。映画本編がアレな出来でも、マルコさんの音楽のおかげで何とか『ダイ・ハード』としての体裁を保てたと言っても過言ではありません。
前作『ダイ・ハード4.0』でも、故マイケル・ケイメンの作風をかなり研究した音楽を書き下ろしていましたが、今回は前作以上に『ダイ・ハード』色濃厚な仕上がりになってます。映画が始まった途端ベートーヴェンの第九のフレーズが流れ出すし、ケイメン作曲の4音からなる「マクレーンのテーマ」(♪ターララーラーというアレ)のメロディーや、印象的なブラスの和音(♪パーパーパーパッパッパッパッというアレ)を盛り上げどころでしっかり使ってくれています。その一方で、マルコさんのトレードマークである管弦楽のキレのいい音も健在。ケイメンに比べると、マルコさんのほうがリズムのアタック感が強い印象がありますが、前作も今作も映像のテンポが速いので、これぐらいリズムを強調したスコアでいいと思います。
『フライト・オブ・フェニックス』、『オーメン』(06)、『マックス・ペイン』(08)でも組んでいる盟友ムーア監督のために、マルコさんがこれだけ気合いの入ったスコアを書き下ろしてくれたんだから、映画本編ももうちょっと頑張ってほしかったな…というのが正直な感想です。
逆に言えば、映画がイマイチでもサントラの出来はいいという事なので、『ダイ・ハード』シリーズのファン(&マルコさんのファン)なら買って損はない一枚ではないかと思います。
クドいようですが、マルコさんの音楽は健闘してました。
今の自分はそれだけで満足です。