先日『オズ はじまりの戦い』(13)のサントラ盤リリースに関してあれこれ書きましたが、今回はダニー・エルフマンのスコアについて書かせて頂きます。
Oz The Great and Powerful (Original Motion Picture Soundtrack) – amazon music
映画ファン…というかサントラリスナーの方なら既にご存じの通り、エルフマンとサム・ライミは『スパイダーマン2』(04)のときに音楽の方向性を巡って意見が対立し、それ以降半ば絶交状態だったわけですが、本作で9年ぶりのタッグ復活となりました。
…などとサラッと書いてしまいましたが、エルフマンは『スパイダーマン2』の時に「彼は以前とは全くの別人になってしまった。二度と仕事したくない」的な発言をしておりましたので、これは奇跡に近いことではないかと思います。もっとも、マイケル・ダナも『ハルク』(03)の降板トラブルでアン・リーと疎遠になっていたのが『ライフ・オブ・パイ』(12)でコンビ復活を果たしているので、9年も経つと皆さんいろいろ心境が変化するのかな、とも思います。
さて肝心の『オズ』音楽はと申しますと、これが非常に素晴らしいのです。フルオーケストラにコーラスを織り交ぜた、いつものエルフマン・サウンドなのですが、彼の楽曲が映像(色彩やカット割を含む)やドラマ展開、キャラクターの表情やセリフと見事にマッチしています。全編ほぼ音楽が流れている(ような)印象を受けるのに、抑揚が効いているのでダレ場が全くありません。
映画のオープニング・タイトルで早々とメインテーマのメロディーを聴く事が出来るわけですが、オズ(ジェームズ・フランコ)が美女を口説く時に「祖母の形見」と言って聞かせるオルゴールのメロディーに、まさにエルフマンが作曲したメインテーマのメロディーが使われていて、彼の音楽が物語を牽引する重要な役割を果たしているのが素晴らしい。『オズ はじまりの戦い』は、メインテーマやサブテーマのメロディーを大事にした構成の映画と言えるでしょう。
ちなみに『チャーリーとチョコレート工場』(05)のウンパ・ルンパの歌のように、今回も”The Munchkin Welcome Song”でエルフマンが「ひとり多重録音」で奇妙な歌を唄ってます。
エルフマン本人が語ってくれた曲作りのプロセスについては、『オズ はじまりの戦い』の劇場用パンフレットで拙稿を読んで頂ければと思います。個人的には同じディズニー製ファンタジーのダニー・エルフマンのスコアでも、『オズ』の方が『アリス・イン・ワンダーランド』(10)よりもクラシカルな趣があるような印象を受けました。
IntradaからCDプレス盤がリリースされたとはいえ、このサントラがディズニー/エイベックスからCDプレスの国内盤としてリリースされなかったことがつくづく悔やまれます。
ダニーさんとサム・ライミの不仲の原因については諸説ありますが、一説によると「あるシーンの劇伴で『ヘルレイザー』(正確には1988年の『ヘルレイザーII』)のような音楽をリクエストされてダニーさんが機嫌を損ねた」のだとか。「だったらクリストファー・ヤングに頼めばいいだろ!」という話になって、本当にヤングを雇ってしまったと(ほかにもジョン・デブニーやスティーヴ・バーテクも追加音楽の作曲のために雇われた)。これもまたテンプトラックが生んだ悲劇ということでしょうかね…。