「愚者」の壁画に失笑。 低予算でデッカいテーマに挑んだホラー映画『キャビン』

the cabin in the woods

仙台でも『キャビン』(11)を劇場公開してくれたので観てきました。

「こいつはホラーの傑作だ!」という声もあれば、
「周りでいうほど大した映画じゃないぞ」という声もあって、
賛否半々という印象だったのですが、個人的には大当たり。
当方の期待以上に面白い映画でした。

何を書いてもネタバレになりそうなので、
内容についての具体的な言及は避けますが、
この映画の脚本を書いている時はさぞ楽しかっただろうなーとか、
ドリュー・ゴダードとジョス・ウェドンは本当にホラーが好きなんだなーとか、
作り手側の「ホラー映画愛」が伝わってくる作品だった気がします。
「昔のホラーを低予算でリメイクして手堅く稼ぐべ」
…という製作者とは志が違うというか何というか。
物語後半の展開も、あのラストも、個人的にはアリでした。

で、本編を鑑賞後、悪名高い日本版予告編とやらを初めて見てみたのですが…
いや確かにヒドいですねこれは。
「…と、ここまではよくある展開かもしれない」
などとドヤ顔(ドヤ声?)でネタばらししまくりな上に、
物語の核心に触れる後半の映像も見せすぎ。
本編を観る前にいきなりこれを見せられた日には、
「楽しみにしてたのにいろいろ見せやがって!」…と怒りたくなること必至かと。
ついでに言えば、日本版のチラシのデザインも何気にネタバレしてますね…。
何でUS版のポスターデザインをそのまま使わなかったのか。
(多分ビジュアル的に地味だからなんだろうけど)

今後、何か新作DVD/BDレンタルをした際に、
本編開始前の新作DVD紹介で『キャビン』の予告が入る事になると思いますが、
この映画を楽しみにしている人は絶っっっ対に予告編を見ないで下さい。
日本版公式サイトも見てはいけません。

まぁ事前情報や何の予備知識もなく、
面白いかどうか分からない映画にお金を投資するのもリスキーではありますが、
映画館の一般料金1800円ならともかく、
本編95分でDVDレンタル代の500円弱なら、
それほど痛い出費ではないと思いますので。

「何であんな予告編を作ったんだろうなー」と考えたのですが、
恐らく宣伝側としては「物議がカネを呼ぶ」というスタンスだったのかな、と。
「予告編がネタバレしすぎと言われようが何しようが、
とにかくネットで波紋を呼んで話題になってくれればそれでいい」
(後の評価はさておき、公開1週目にお客さんがたくさん来ればいい)
…と考えていたのではないかなー、などと思ってしまいました。

ま、確かに宣伝の仕方が難しい映画ではありますが、
こういう作品こそJ・J・エイブラムス的「見えそうで見えないハッタリ的プロモーション」が効果的なのではないかとも思います。
(『クローバーフィールド/HAKAISHA』(07)の時みたいなやつ)

オリジナル・スコア担当はデヴィッド・ジュリアン。
『フォロウィング』(98)、『メメント』(00)、『インソムニア』(02)、『プレステージ』(06)…と、
クリストファー・ノーランがハンス・ジマーとコンビを組む前の常連作曲家です。
この時期は「心理サスペンスを得意とする作曲家」というイメージでしたが、
ニール・マーシャルの秀作ホラー『ディセント』(05)を手掛けたあたりから、
「スノッブな作風のホラーが得意な作曲家」というイメージが強くなった気がします。
持続音や無調音を多用したダークな作風は『キャビン』でも健在。
後半の畳み掛けるようなサウンドがなかなか力が入ってますね。

エンドクレジットでナイン・インチ・ネイルズの「Last」が流れたのがツボでした。

 

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