『ケルティック・ロマンス』のアーティスト、マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る不定期連載企画。ちょっとご無沙汰してました。
現在、スティーヴン・キングの新刊『ビッグ・ドライバー』を読んでいるところなので、今回はキング作品繋がりで『アトランティスのこころ』(01)をご紹介したいと思います。
この映画が公開された頃は、確か「『スタンド・バイ・ミー』(86)の二番煎じ」みたいな言い方をされて不当に評価が低かった記憶があります。確かに「少年時代の親友の死を知った主人公が、当時の事を回想する」という導入部は似てますが、だからと言ってその批評はあんまりではないかと。僕個人としては『スタンド・バイ・ミー』よりも好きな作品です。
もちろん『スタンド・バイ・ミー』も名作である事には変わりないので、『アトランティスのこころ』とどちらが好きか、というのは好みの問題…というか、子供時代の経験に左右されるところが大きいのではないかなーと思います。つまり、
■子供の頃はそれほど腕白ではなく、どちらかというと大人しかった。
■子供の頃、特に意識したわけではないけど好きな異性の子がそばにいた。
■自分よりずっと歳の離れた大人の友達(もしくは気の置けない知人)がいた。
■家の引越しで大好きな友達と離ればなれになってしまった事がある。
…という人は多分『アトランティスのこころ』の世界観にどっぷり浸れます。
自分の場合、恥ずかしながら上記の4つ全てが当てはまるので、もう映画の要所要所で目頭が熱くなりまくりました。”アトランティス”について語るテッド(アンソニー・ホプキンス)のモノローグ、そして大人になったボビー(デヴィッド・モース)の最後のナレーションはいつ見ても泣けますね。いつになく優しい老人を演じたホプキンスの演技も素晴らしいし、子役3人の瑞々しい演技もいい。
どちらかというと子供の頃はヤンチャな悪ガキだった人は、「俺は『スタンド・バイ・ミー』の方がいいな」という事になるかもしれません。
さてそんな本作の音楽はと申しますと、チャック・ベリーの”Carol”、ザ・プラターズの”Only You (And You Alone)”と”煙が目にしみる”、パーシー・フェイス楽団の”避暑地の出来事のテーマ”など、映画の舞台となる時代の懐メロが使われています。まぁこのへんも「『スタンド・バイ・ミー』っぽい」と言われる所以でもあるのですが、あちらの映画のサントラと違うところは、オリジナル・スコアがサントラにきちんと収録されている事です。
そのマイケル・ダナのスコアがいいんですよこれが!
静寂の中、ピアノだけでポロン、ポロンと奏でられる透明感溢れるイントロ。木管で奏でられる、寂寥感と郷愁を漂わせた「マイケル・ダナここにあり」といった感じのメロディー。少年と老人の心の交流を優しく彩るオーケストラ。恐らくマイケルのフィルモグラフィの中で屈指の「優しさに満ちた音楽」なのではないかと。これほどまでにエモーショナルな音楽なのにもかかわらず、印象としては控えめで、感動を押しつけるようなスコアには決してなっていないのが、彼の音楽の魅力と言えるでしょう。”幻の国”アトランティスをイメージするかのような、グラス・アルモニカの音色も効果的です。
スコアは”Never Really Went Away”、”Summer Vacation”、”The Hill”、”Molly”(←この曲が一番好き)の4曲だけしか収録されていませんので、収録時間的な物足りなさはありますが、マイケルの音楽のクオリティはかなりの高水準と言えるでしょう。彼の音楽の特徴は木管のソロのメロディーによく出ているので、何作か彼のスコア盤をじっくり聞き込んでみると、他の作品でも”マイケル・ダナらしさ”が見えてくるのではないかと思います。