舞台設定とキャストの顔ぶれを観た時から期待していたのですが、
いや実に痛快なハット・スクワッド映画でございました。
『アンタッチャブル』(87)、『狼たちの街』(96)、『パブリック・エネミーズ』(09)、
『L.A. コンフィデンシャル』(97)、『ブラック・ダリア』(05)、
TVシリーズの『クライム・ストーリー』あたりが好きな人ならどっぷりハマれる、
「男が男(=漢)であった時代」の物語。シビれますねぇ。
40年代が舞台とはいえ、意外と作りが現代風なのがこの映画のポイント。
上記の作品がどこか後味の悪い結末(←ハードボイルドの定番)だったり、
暗くてどんよりしたトーンの物語だったりするのに対して、
『L.A. ギャングストーリー』(12)は完全に娯楽映画に徹しているのですね。
荒くれ刑事たちは「法で裁けぬ悪党は法を超越した軍団でブッ潰す」という信念を決して曲げません。
あたかもこの映画の監督や製作者たちが、
「警察の超法規的活動は是か非か?というテーマは重要ではありません」と言っているかのように。
仲間の殉職すら「行き過ぎた暴力に疑問を投げかける要素」でなく、
熱い男のドラマとして昇華させてしまう。
映画の中であれだけ銃をブッ放しておきながら、
最後は男と男の殴り合いでケリをつけさせるという男気溢れるクライマックスもアツすぎます。
ま、簡単に言ってしまえば非常にスカっとする映画なのです。
それにしてもこの映画にはいい面構えの俳優が揃ってますねー。
リーダーのタフガイ(ジョシュ・ブローリン)、ヤサ男(ライアン・ゴズリング)、古参のガンマン(ロバート・パトリック)、その舎弟(マイケル・ペーニャ)、頭脳派(ジョヴァンニ・リビシ)、武闘派(アンソニー・マッキー)と”いかにも”なキャラが揃ったロス市警ギャング部隊も最高だし、『狼たちの街』でハット・スクワッドのリーダーを演じたニック・ノルティが彼らの上司というキャスティングも秀逸。ミッキー・コーエン役でキレ演技を披露するショーン・ペンも、娯楽映画に徹しきったヤクザ芝居が痛快です。ちなみに「ボクシングの試合で顔が崩れた」という設定の特殊メイクは、毎朝3時間かかったらしい。
男臭い映画に華を添えるグレイス・ファラデー役のエマ・ストーンも最高ですねー。『ラブ・アゲイン』(11)を観ていると、ゴズリングとの恋のさや当てはほとんどギャグに見えてしまうのですが、それがまたイイ。クラシックなメイクもお似合いです。
…と、まぁここまでは割とメジャーな顔ぶれだし、パンフレットにも写真付きで顔と名前が載っているので、このブログではパンフでフォローされてない”いい面構えの脇役たち”をざざーっと紹介していきたいと思います。
まず映画開始早々、コーエンの拷問で酷い目に遭ってしまうギャングのルッソを演じているのはフランク・グリロ。『THE GREY 凍える太陽』(11)のトラブルメーカーな生存者とか、『プライド・アンド・グローリー』(08)の汚職デカ仲間を演じていた人。その拷問を目の当たりにしてビビりまくる仲間のギャング役は、『プリズン・ブレイク』でママっ子極悪マヌケ看守ベリックを演じたウェイド・ウィリアムズ。セリフらしいセリフもない役でのご出演。脇役キャラでは比較的儲け役だったジャック・ウェイレンを演じたサリバン・ステイプルトンですが、『アニマル・キングダム』(10)にコディ一味で出ていたあの人でした。いやー家に帰ってから調べるまで気づかなかった。身なりがかなり変わってたから。
コーエンの右腕カール役を演じたホルト・マッキャラニーは、『ビロウ』(02)の性格悪そうな副官ルーミス役(オイルサーディンの缶詰を食ってた人)が有名かと。同じくコーエンの手下ジョニー・ストンパナート役は、『パニッシャー』(04)でセイントのバカ息子を演じていたジェームズ・カピネロ。その仲間でグレイスに硫酸を股間にかけられて酷い目に遭うチンピラ(四角い顔の人)を演じたのは、『ジャーヘッド』(05)でオツムの足りなそうな海兵隊員を演じたエヴァン・ジョーンズ。コーエンを脅して逆に消される古株ギャングのドラグナ役は、『アメリカン・ギャングスター』(07)や『ミラーズ・クロッシング』(90)でもギャングを演じているジョン・ポリト。小太り・ヒゲ・メタボの3拍子揃った風体は、いかにもギャング的でありながらどこか笑いを誘います。
警察サイドでは、まず映画序盤にオマラの上司役で顔を出すジャック・マクギー。『マネーボール』(11)のスカウト役とか、『ザ・ファイター』(10)のミッキー・ウォードの父親役で味のある演技をしている名バイプレイヤー。コーエンに買収された保安官を演じているのは、出演作の8割は刑事役なんじゃないかという”刑事顔俳優”のジャック・コンレイ。『ワイルド・スピードMAX』(09)でポール・ウォーカーの比較的物分かりのいい上司を演じていたあの人です。『L.A. コンフィデンシャル』にもやっぱり刑事役で出てました。あとは『ダイ・ハード2』(90)でテロリストの一人を演じていたドン・ハーヴェイ(猿顔っぽい人)が、留置所の警官役で顔を出してます。
ところで、『ドライヴ』(11)でゴズリングに頭部をストンピングで粉砕されたあの俳優(ジェフ・ウルフ)がこの映画にも出てたらしいのですが、どの場面だったかなぁ…。
というわけで、脇役がいい味出してる映画は九分九厘面白いですねー。
「いい映画の条件はいい脚本」とも言いますが、
「巧い脇役が揃った映画はいい映画」と言っても過言ではないでしょう。
文章が長くなったので、スティーヴ・ジャブロンスキーの音楽についてはまた次回。