スティーヴン・キング/『ビッグ・ドライバー』を読む。

big driver

先週、スティーヴン・キングの新刊『ビッグ・ドライバー』を読み終えました。
4編の中編小説を収録した『Full Dark, No Stars』のうち、『ビッグ・ドライバー』と『素晴らしき結婚生活』の2編を収録したもの(残りの2編は『1922』に収録)。
原作者のキング曰く「不愉快で手厳しい(=Harsh)」作品だそうです。

 

図書館の講演会からの帰り道、暴漢に襲われて殺害されかかるも、辛くも一命を取り留めた女性作家テスが、自分を襲った相手への復讐を決意する『ビッグ・ドライバー』。

長年連れ添ってきた夫の「裏の顔」に気づいてしまった平凡な主婦の、恐怖と疑惑に満ちた日々を描く『素晴らしき結婚生活』。
キング自ら”Harsh”と言うぐらいだから、どちらも残虐描写が結構キツい。

『ビッグ・ドライバー』で心身共にボロボロになったテスの描写は痛々しいし、『素晴らしき結婚生活』のほうも、自分の夫が殺人鬼だと知って動揺する主婦ダーシーの心理描写が実に生々しい。ダーシーと夫のボブが対峙するシーンのネットリした会話劇も不気味極まりない。まさに”Harsh”。

 

どちらもホラーというよりサスペンス・スリラー的要素の強い物語ですが、ヒューマンドラマ的な側面も持ち合わせておりまして、物語の中で散々酷い目や恐ろしい目に遭った女性に、最後の最後で(それなりに)救いが訪れるところが実にキング作品らしいな、と。映画化作品で言うと、名作『黙秘』(95)のイメージ。
こういう細やかな人間描写とか、虐げられた人々へのシンパシーがあるから、キングの作品は単にホラーというジャンルにとどまらない味わい深さがあるのでしょう。

で、キングの小説と言えば映画ネタも欠かせないわけで、今回も『ブレイブ ワン』(07)を筆頭に『死の接吻』(47)とリチャード・ウィドマーク、『鮮血の美学』(72)、『暗くなるまで待って』(67)など映画のタイトルが出るわ出るわ。
妙なタイミングで挿入されるボニー・タイラーのネタとか、『チャーリー・シーンのハーパー★ボーイズ』が云々というくだりも、ダークな笑いを誘います。

今回の短編2作を読んでいて、「これは映画化もイケそうだな」と思いました。
本文中に『ブレイブ ワン』に関する言及もあるので、女性が主人公の復讐ものとして見応えのある作品が出来上がるのではないかと。自分としては主人公の作家テスをシャーリーズ・セロン、(あるいは「モイナはん」こと『ロード・オブ・ウォー』(05)のブリジット・モイナハン)イベント主催者のラモーナ・ノーヴィルをキャシー・ベイツ、(↑本の139ページの描写を読むと、この人しかいないなーと思ってしまう)ビッグ・ドライバーを『LOST』や『レギオン』(10)のケヴィン・デュランド、ベッツィー・ニールを『パラサイト・バイティング 食人草』(08)のローラ・ラムジーあたりに演じて頂きたいところです。監督はフランク・ダラボンで。

あとはこの作品のキモである、「喋るネコ」「テスに意見するカーナビ」の声キャスティングも結構重要ではないかと。カーナビの声は『パーソン・オブ・インタレスト』のマイケル・エマーソンなんかいかがでしょうか。

 

ほぼ密室劇の趣がある『素晴らしき結婚生活』は、ダーシー役をジュリアン・ムーアかダイアン・レイン、わけあり夫のボブ役はマーク・ラファロかフィリップ・シーモア・ホフマン、あるいは『クラッシュ』(96)、『モールス』(10)のエリアス・コティーズあたりに演じて頂く感じで。(後者の2人だと「明らかにフツーの夫じゃない」感じがプンプンしますが…)で、物語の最後に出てくる”眼光鋭い老人”ホルト・ラムジー役をエド・ハリスに演じて頂くと、非常にいい感じになりそうだなーと。

いや本当に誰か映画化してほしいですね。劇場映画化が望ましいけど、この際TV映画でもオッケーですので。でもTV映画化の際の監督は、ミック・ギャリス以外でよろしくお願いします(ギャリスさんごめんなさい)。いやその…ギャリスだとどうしてもB級感が出てしまうので。とはいってもキング本人はギャリスがお気に入りのようですが。

※追記
先頃『ビッグ・ドライバー』『素晴らしき結婚生活』も映画化されましたが、キャストはワタクシが考えていたのと全然違いました…。が、「ああそうか、そういうキャスティングがあったか!」というなかなかいい顔ぶれがそろっていると思います(ジョーン・ジェットはちょっと意外でしたが)。

 

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