ディザスター、サバイバル、ロードムービー、そして頭文字Zのアイツ―― 『ワールド・ウォー Z』はミクスチャー・アクションホラー映画だった。

いくらお盆休み中でブラピの主演作とはいえ、真っ昼間からゾンビ映画を観に行く人はそれほどいないだろう…と思って『ワールド・ウォーZ』(13)予想以上にお客さんが入っていてビックリ。「ゾンビ映画であること」を徹底して隠した宣伝戦略が功を奏したという事でしょうか(観終わった後で何と言われるかは分かりませんが…)。

そんなわけでこの『ワールド・ウォーZ』はゾンビ映画ではあるものの、かなりいろんな要素が入っているように思います。
感染者が襲いかかってきて街中大パニックになるのはディザスター映画風。
主人公パーティーが手持ちの装備だけで何とか生き延びようとする展開はサバイバル映画風。
治療法を求めて世界中を飛び回り、道中で様々な人々と一度限りの出会いと別れを経験するのはロードムービー風といった感じ。
カメラが近すぎ&揺らしすぎで見づらいシーンがいくつかあるのが難点ですが、残虐描写は(これでも)控えめなので「走るゾンビ映画入門編」としてはよく出来た作品ではないでしょうか。

ブラッド・ピットが全編出ずっぱりの映画なので、共演のキャストは「地味だけどよく見かける顔の演技派俳優」で揃えてます。
一番メジャーなのは歯無しの元CIAエージェント役デヴィッド・モースでしょうか。『ザ・ロック』(96)『グリーンマイル』(99)のあの人。
名も無き空挺部隊員役で顔を出すのは『LOST』のジャック・シェパードことマシュー・フォックス。本当は続編を見越した重要な役だったのに、続編企画が棚上げになって出番が減ったらしい。
在韓米軍奇襲隊司令官役は近頃売れっ子になってきたジェームズ・バッジ・デール。『ローン・レンジャー』(13)でアーミー・ハマーの兄役を演じていた人。
WHO職員役でes[エス](02)のモーリッツ・ブライブトロイも出てました。
儲け役はイスラエル軍のセガン中尉を演じたダニエラ・ケルテスかな。「イスラエルのクリステン・スチュワート」みたいな感じで印象に残ります。

 音楽はここ数年売れに売れているマルコ・ベルトラミ。「噛みつく」というゾンビの習性を音に反映させるため、ペッカリーの顎関節を使って歯を鳴らす音を打楽器として使ったそうです。そしてペッカリーの頭蓋骨を勧めたのは、あのトミー・リー・ジョーンズらしい。

ベルトラミがジョーンズの監督作『The Homesman』(13)の音楽を担当していたので、その時に「実は今ゾンビ映画の音楽をやっていてね…」みたいな話になったのかもしれません。
『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』(05)、『エレクトリック・ミスト 霧の捜査線』(09)と、今やベルトラミとジョーンズはすっかり親友のようです。
他にも緊急警報放送のサイレン音を使ったり、なかなか実験的なスコアを作曲しています。ベルトラミのトレードマークとなりつつある、畳み掛けるようなストリングスも健在。

「チューブラー・ベルズ風の曲」とブラピが惚れ込んで使ったらしいMUSEの曲は、サウンドの質感がベルトラミと違うので、スコアとの一体感にはちょっと欠けていた印象。まあメインテーマ曲的な位置づけなのかもしれません。

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