『第9地区』(09)のニール・ブロムカンプ監督最新作『エリジウム』(13)。
僕がこの試写を観たのは7月下旬。
たぶん日本最速の試写だったと思います。
しかも『ホワイトハウス・ダウン』(13)と二本立ての試写だったものですから、
まぁー映画を観終わった後の充実感・満足感・高揚感がハンパなかった。
『ホワイトハウス・ダウン』もよく出来た映画だったし、
『エリジウム』も作り手の気迫が伝わってくる強烈なSFアクション映画だったのでもう最高。
大変充実した内覧試写デーとなりました。
現代の地球(南アフリカ)が舞台の『第9地区』と違って、
今回の『エリジウム』の舞台は2154年のやや遠い未来。
富裕層は荒廃した地球を捨てて小綺麗なスペースコロニー(トーラス型)に移住していて、
貧困層は地球で役人ロボット(ドロイド)に管理されながら生活しているという設定。
ガンオタ的には
「地球に住むのはエリート層、その他の人間は宇宙棄民政策でコロニー行き」
…という世界観が頭に染みついているので、
『エリジウム』がその真逆の設定になっているのが大変興味深いものに感じました。
映画的にはやはりというか何というか、『第9地区』との共通点が非常に多い。
今回はあの映画ほど奥の深い政治的メッセージはないけれども、
相変わらず差別や格差社会を風刺しているし、
スラム街と化した未来のLAが『第9地区』の隔離地区を彷彿とさせるし、
主人公が徹底的にヒドい目に遭うし、
話の通じなさそうな凶悪なヴィランは登場するし、
鈍色(にびいろ)の光を放つ無骨なメカが登場するし、
このテのSF映画やメカが好きな人にはたまらん出来に仕上がってます。
そしてこの映画、『第9地区』同様に観る者の痛覚を刺激する描写がキツい。
PG-12指定なので『第9地区』よりはマイルドですが、
主人公のマックス(マット・デイモン)は映画が始まって早々ロボットにボコられ、
勤め先の工場の事故で大量の照射線を浴びて余命5日の身に。
(しかもゴミ同然に解雇されて工場を追い出される)
エリジウムの医療ポッドで治療を受けるため、
スラムのレジスタンスに加入して非合法なエリジウム行きを企てるも、
レジスタンスの一員として活動するには身体がボロボロなので、
強化外骨格の「エクソスーツ」をムリヤリ装着させられる…と、
とにかく徹底的に酷い目に遭わされます(何も悪い事してないのに…)。
ちなみにエクソスーツの装着方法というのが、
「生身にボルトで直接外付けする」というものすごく痛そうな仕様。
予告編だと「武装の一環としてエクソスーツを装着している」ような印象を受けますが、
実際は「余命5日で身体が弱り切ってるから、強化外骨格でムリヤリ動けるようにしている」
…という極めて残酷かつ痛々しいな状況なのですね。
『第9地区』の主人公ヴィカスに勝るとも劣らない悲惨な状況と言えるでしょう。
しかし、そんな打ちのめされて打ちのめされて打ちのめされ続けたマックスが、
エクソスーツと重武装(エアバースト弾装備のケムレールガン、AK47改など)に身を固め、
エリジウム防衛軍やドロイド共を蹴散らすアクションシーンは、
『ランボー』(82)に匹敵する”虐げられし者が体制に一矢報いる”カタルシスに満ちています。
「スケールのデカい話を個人レベルで片付けすぎじゃね?」的な意見もありましたが、
レジスタンス(もしくはゲリラ屋)のやり方ってそういうものじゃないかな、と僕は思います。
物量差のある敵に対して、少数の戦力でいかに効果的な打撃を与えるかという。
『機動戦士ガンダムUC』で例えるなら、
「袖付き」にあたるのがスラムのレジスタンス、
「ラプラスの箱」がマックスのダウンロードした極秘データという感じでしょうか。
まぁダラダラと書いてしまいましたが、
この映画全体から発せられるカオスな空気感と、
クセのある登場人物たちが醸し出す異様なテンションは只者じゃありません。
自分が生き残るために行動していたマックスが、
世界を変える存在にならざるを得なくなる終盤の展開がマジで泣けてきます。
感動というより、何だかものすごく可哀想で…。
『パシフィック・リム』(13)で童心に返った(?)アタマをガツンと揺さぶる、
辛口の秀作SFアクション映画ではないかと思います。必見。
話が長くなったので、続きはまた次回。