ジェフ・ダナ名作選 / ザ・ターゲット:陰謀のスプレマシー (2012)

 The Expatriate

『ケルティック・ロマンス』のアーティスト、
マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る不定期連載企画。
ちょっとご無沙汰してました…が、このネタまだまだ続いてます。

今回は弟のジェフの作品から、
『陰謀のスプレマシー』(12)を選んでみました。

邦題からは『ボーン・スプレマシー』(04)の二番煎じ的な匂いがプンプンするのですが、
劇場公開時は『陰謀のスプレマシー』だった邦題が、
DVD発売タイトル時には『ザ・ターゲット/陰謀のスプレマシー』にプチ改題。
「陰謀のスプレマシー」というのは日本語(英語?)表現的に合ってるのか?という気もいたしますが。
ちなみに原題は『The Expatriate』と言いまして、
さらにアメリカだと『Erased』というタイトルになったり、
映画タイトルがブレまくってます。一体どうしたんでしょうか。

さてどのへんの設定で『ボーン・スプレマシー』に便乗したのかというと、
「主人公がCIAの罠にはまって、組織に単身戦いを挑む」という部分と思われます。
ただ、ジェイソン・ボーンが事故でCIA暗殺者の記憶を失ったのに対し、
こちらの主人公ローガン(アーロン・エッカート)は、
「自分がCIA捜査官だという事を家族に隠して生活している」という設定。
記憶を失ったのではなく、あえてその事実を隠していたのですね。
で、ある出来事を境にCIAから命を狙われる立場になってしまったので、
娘(リアナ・リベラト)に自分の素性を明かして、
親子でベルギーの街を逃げ回りつつ、反撃に転じるというストーリー。
『ボーン・スプレマシー』というよりも、
『ボーン・アイデンティティー』(02)のノリに近いかもしれません。

で、ローガンのたった一人の家族である娘のエイミーが重要なキャラなのですが、
反抗期まっしぐらなお年頃ためか、正直あまり可愛くない(笑)。
もうちょっと感情移入させてくれるキャラだったらなぁ…と思わざるを得ません。
そういえばリアナ・リベラトって、
『ブレイクアウト』(11)でもあまり可愛げのない娘の役でしたね…。
ローガンのCIA時代の元同僚アンナを演じるのはオルガ・キュリレンコ。
正直に白状しますと、キュリレン子さんとジェフ・ダナの音楽だけが目当てでこのDVDを借りました。
しかしキュリレン子さんの出番はやや少なめでした(理由:特別出演扱いだから)。

 

が、しかし。ジェフ・ダナの音楽はなかなか健闘しております。
構成としては「オーケストラ+パーカッション+シンセ」という定番のスタイル。
サントラはダウンロードのみだし、
デジタルブックレットもないのでオケ編成の確認が出来ないのですが、
今回のレコーディングではブラスを使っていないようです。
そのせいかストリングスの音がソリッドで冷ややかな響きになっていて、
欧州的な翳りのあるベルギーの街並みを捉えた映像と絶妙にマッチしております。
メインテーマ的なメロディーもちゃんとあるし、
『ジェイソン・ボーン・シリーズ』とも違ったパーカッションの鳴らし方もメリハリが効いています。
メインテーマをじっくり聴かせるスコアという点では、
同じジェフの作品でも『バイオハザードII アポカリプス』(04)より、
本作の方が完成度は高いのではないかというのが自分の感想です。

このぐらいの規模のアクション映画だと、
サントラ盤すら発売されない事が多いので、
ダウンロードのみとはいえ、サントラがリリースされたのは非常に有難い。
『ケルティック・ロマンス』や『処刑人』とも違う、
職人作曲家ジェフ・ダナのアクション・スコアを楽しんで頂ければと思います。

 

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