『クロッシング』(08)のイーサン・ホーク主演、
『エミリー・ローズ』(05)のスコット・デリクソン監督によるオカルトスリラー『フッテージ』(13)を鑑賞。
処女作以降ヒット作に恵まれない、スランプ気味のノンフィクション作家エリソン。
引っ越し先の屋根裏部屋で見つけた8mmフィルムに映っていたものは……?
噂には聞いてましたが、ものすごく怖いですこの映画。
強烈なゴアシーンがあるとか、オチが強烈とか、
暗闇から突然ドーーン!みたいな感じでビビらされるとか、
そういう怖さではなくて(3回ほど音でビックリしたけど:笑)、
何というか…生理的嫌悪感をもよおすような、
不気味で不吉で薄気味悪い、悪夢的な描写が頭から離れない映画です。
まさに「くらいよーせまいよーこわいよー」的世界観。
8mmフィルムの映像も気味悪いったらありゃしない。
果たしてこの映画の結末やいかに。
現実的な結論に持っていくのか?
それともオカルト的な結論に持っていくのか?
あるいは「犯人は実は自分でした」的なオチに持っていくのか?
まぁそれは観てのお楽しみという事で…。
さて肝心の音楽について。
オリジナル・スコアの作曲は『エミリー・ローズ』のクリストファー・ヤング。
『スペル』(09)とか『ブラックサイト』(08)、
『THE JUON/呪怨』(04)を手掛けた人なので、
納得の人選ではあるのですが、今回の音楽は凄まじかった…。
今までは「オーケストラを使ったホラー/スリラー音楽に定評のある人」
…というイメージだったのですが、
『フッテージ』の音楽は全編インダストリアル・ノイズ・サウンドが炸裂。
「それってどんな音楽?」という方は、
映画『セブン』(95)のオープニングタイトル曲(Nine Inch Nailsの”Closer”)をイメージして頂くと分かり易いかと。
ヤング自身も「前からずっとやってみたいと思っていた、全編シンセサイザーによるサウンド・デザイン系スコア」と語っています。
観客の神経を逆なでするような耳障りな電子音。
不安定なリズムを刻むエレクトロ・ビート。
調律が狂っているかのようなピアノ。
もわっとした低音の持続音。
叫び声ともうなり声ともつかないようなサンプリング・ヴォイス。
ほぼ全編に渡ってこういうメロディーレスな音楽が鳴ってます。
こんな薄気味悪い音楽を聴いたのは『セッション9』(01)以来ですね…。
音楽というより、もはや「音」「ノイズ」と言った方がいいかもしれません。
「面白い音だけど、こりゃ前衛的すぎてサントラは出てないだろうな」と思ったら、
何とVareseからしっかりサントラ盤が出てました。
思わず買ってしまいましたねー。
で、いざサントラ盤を聴いてみたら、
「あれ?こんな曲本編で流れたっけ?」みたいな箇所がいくつかありまして。
ブックレットに記載されているヤング自身のライナーノーツを読むと、
どうやらアルバムの1曲目から11曲目の楽曲は、
映画で使ったスコアをアルバム用に再構築・新規アレンジを加えたものらしい。
12曲目の”Sin Sinister Sweet”が、
ヤング曰く「映画本編で使ったスコアのよりstraightforwardな形の組曲」なのだとか。
13曲目はメインテーマのダンス・リミックス。
その結果、サントラ盤に収められた楽曲は、
映画本編のスコア以上に不気味な音楽に仕上がってしまいました。
特筆すべきは3曲目の”Levantation”。
気持ち悪いうなり声とか息遣いとかつぶやきに混じって、
「キョウ、ミンナデュ」「ナンデ、イッパイタベルヒャー」「オイシカッタネ」
…とか、ヘンな日本語のつぶやきが聞こえるんですが、
これは僕の空耳なんでしょうか。
ひぃぃぃぃ、恐いよぅ…。
夜中に部屋を暗くして、こんな音楽を一人で聴いていたら、
気がおかしくなりそうですね…。
あるいはミスター・ブギーみたいな悪霊に取り憑かれてしまいそうです。
でも面白いからついプレーヤーの再生ボタンを押してしまう。
何とも中毒性のある音楽です。
ナイン・インチ・ネイルズやトレント・レズナーの音楽が好きな方は、
結構気に入るタイプのサウンドかもしれません。
(ロックやダンサブルな要素は一切ありませんが)