この話題をツイッターで目にした時、
誤報かタチの悪いガセネタだろうと思いました。
でも『ワイルド・スピード』シリーズや『タイムライン』(03)の作曲家ブライアン・タイラーさんが、
“Devastating. Paul you will be sorely missed.”
…とコメントしているのを見て、
これは本当の事なんだと知り、呆然としました。
映画の中ではいつも溌剌としていて、
カスタムカーを楽しそうに乗り回していた印象のウォーカーに、
こんな人生の最後を用意するとは、この世は残酷すぎますね…。
今後映画チャンネルやDVDで彼の姿を見た時、
恐らく今までとは全く違う思いが、胸の中にこみ上げてくる事になるのでしょう。
それを考えるとすごく切なくなってしまいます。
とはいえ、『ワイルド・スピード』以外の彼の出演作をもっと観て頂きたいので、
本日は『テイカーズ』(10)について書きたいと思います。
『テイカーズ』は「洒落者強盗団VS辣腕デカ」という構図の、
ヒップホップ感覚溢れる優れたB級アクション映画。
どのへんがヒップホップかというと、
まず強盗団のメンバーにティップ”・T.I.”・ハリス(本作の製作も兼任)と、
R&B界のお騒がせ男クリス・ブラウン(本作の製作総指揮を兼任)がいる事。
そして『ミニミニ大作戦』(03)の強盗作戦や、
ジョン・ウー映画的な銃撃戦(『トゥルー・ロマンス』(93)的銃撃戦でも可)、
『NYPD15分署』(98)や『NARC/ナーク』(03)的なバディ・コップ・ドラマ、
『YAMAKASHI』(01)的パルクール・アクションなどなど、
アクション映画の「おいしいところ」を片っ端から”サンプリング”して、
自分のモノにしてしまった大胆な脚本。
そして成金ヒップホップ・アーティストを思わせる強盗団のセレブライフ。
このあたりのノリがヒップホップっぽいな、と。
確かに強盗団の計画は雑ですし、
「こんな計画成功するわけないだろ」と突っ込む人も多いかもしれません。
が、しかし。
この映画の場合、強盗計画の成否はそれほど重要じゃないと思うのです。
むしろ、
「やむにやまれぬ事情で胡散臭い計画に乗った強盗団が、いかにして破滅するか」
…という部分がスリリングなストーリーなのではないかと思います。
誰が生き残るか。誰がどんな行動を取るか。
そこにスリルが生まれるのです(『アーマード 武装地帯』(09)と同じノリですね)。
出演者も先の読めないクセモノばかり。
イドリス・エルバ:強盗団のリーダー・ゴードン(弱点:薬物中毒の姉)
ポール・ウォーカー:強盗団のNo.2的参謀ジョン(弱点:特になし)
ティップ・”T.I.”・ハリス:腹に一物抱えてそうな強盗団の元メンバー・ゴースト(コイツが事件の元凶)
マイケル・イーリー:強盗団の仲間ジェイク(弱点:ガールフレンド)
クリス・ブラウン:ジェイクの弟ジェシー(弱点:短慮な性格)
ヘイデン・クリステンセン:強盗団の爆破担当(弱点:カワイイ若造なことw)
マット・ディロン:仕事熱心すぎて離婚された辣腕刑事ジャック(弱点:娘)
ジェイ・ヘルナンデス:ジャックの相棒エディ(弱点:難病を患った息子)
準A級(あるいはBプラス)のキャストとはいえ、
ひとクセもふたクセもあるなかなかの面々を揃えたなーという印象。
見るからにインチキ臭いティップ・ハリスとか、
いい奴なのか荒くれデカなのか読みにくいマット・ディロンの存在感もいい。
そして『ワイルド・スピード』のブライアン役より若干ニヒルな感じの、
ポール・ウォーカーのクールな佇まいもキマってる。
確かジョン・ラッセンホップ監督が、
「ポールはスティーブ・マックイーンのようだ」とか言ってたような記憶があります。
本作の音楽は『アドレナリン』(06)のポール・ハスリンガー。
相変わらずギター・シンセサイザー・ドラムスをメインに据えた、
メロディーレスでノイジーで畳み掛けるようなスコアを鳴らしています。
まぁこれはこれで疾走感溢れる映像とマッチしていてカッコイイですね。
サントラはiTunesで売ってます(CDでは出てません)。
ちなみにホテル内の銃撃戦のシーンで流れる音楽は、
リサ・ジェラードのSacrifice。
映画『インサイダー』(99)でも使われていたあの曲です。
(アレンジはあの時と若干異なります)
そしてエンドクレジットで流れるのは、
カサビアンのヒット曲Underdog。
スタイリッシュ・クライム・アクションはシメの音楽もナイスな選曲です。
R.I.P. Paul Walker.
Memories live on.