皆さんイロモノ扱いしてるけど、『47RONIN』には評価すべき点もありますよ、という話

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『47RONIN』(13)を公開初日に観て参りました。

公開日が何度も延びたとか、
追加撮影とかVFX作業が遅れて再編集作業が遅れたとか、
作曲家が交代したとか、
あまりいい話を聞かなかったので、
一体どんな映画になったのかと内心ハラハラしていたのですが、
思った以上に頑張っている作りだったので安心しました。
というか、僕は結構楽しめました。
先日twitterにも書きましたが、
この映画は「おりえんたる・あくしょん・ふぁんたじぃ大作」なんだなぁ、と。
赤穂浪士の物語をベースにして、ファンタジー映画を作っちゃうよという。

何しろこういう映画ですから、
あそこがヘン、ここがヘンとツッコミながら映画を観る人も多いと思うのですが、
あんまり重箱の隅をつつくような見方をしても楽しくないですし、
多分それを聞かされる方もあまり面白くないような気もしますので、
個人的にはもっと広い心で本作を観て頂きたい所存です。
まぁ僕がキアヌ・リーブス好きなので、
単に贔屓目に観てしまっているだけかもしれませんが、
「ヘンな映画だと思ってたけど、あの場面は結構よかったね」という感じで、
愛のある目線で楽しんで頂きたいと思います。

個人的に「ここは素直に褒めてあげるべきではないか」と思ったのは、
「日本人(日系人)の俳優が日本人の役を演じている」という事。
これは『ウルヴァリン:SAMURAI』(13)でも出来なかった、ある意味快挙です。
あの映画は忍者のハラダが韓国系のウィル・ユン・リーだったし、
ノブローが「日本人と言われてもビミョーな顔立ち」のブライアン・ティーでしたので。
(一応ブライアン・ティーは沖縄生まれらしいけど)

もし『47RONIN』が90年代とか80年代に製作された映画だったら、
予算や作業効率などを考慮して、
四十七士の半分以上は「アメリカ在住の英語が話せる韓国・台湾系俳優」がキャスティングされていたのではないかと思います。
まぁ90年代と言わず最近でも、
「忍者」という割にショー・コスギ以外の日本人が主要キャラにキャスティングされていない、
『ニンジャ・アサシン』(09)なんて頭を抱えたくなる映画もありましたね…。

それに比べたら、『47RONIN』の日本人キャストの何と自然な事か。
ついでに言えば、ほとんど出番のないオランダ男(通称カピタン)の役も、
「アメリカ俳優にオランダ訛りの英語を喋らせる」のではなく、
オランダ系俳優のヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲンをわざわざ起用しています。
お気楽なエンタメ映画で、ここまでキャスティングに気を遣ってくれるとは。
一見地味な事ですが、これってすごく重要な要素ではないかと思います。

 

そして我がご贔屓のキアヌ・リーブスもいい演技をしてました。
カイは「イギリス人船乗りと農民(だったっけ?)の娘のハーフ」で、
「天狗に育てられたらしい」という素性なので、
浅野の家臣連中から「鬼子」と呼ばれて差別を受けている気の毒な男です。
もしこれがブラッド・ピットなら少しぐらい反抗しそうな気もするし、
トム・クルーズなら相手が怯んでしまうぐらい毅然とした態度を取りそうなのですが、
キアヌは捨て犬のような哀れを誘う表情で、ぐっとイジメに耐え続ける。
浅野の娘(柴咲コウ)との身分違いの恋もぐっと堪える。
これはあまりにも不憫で本気で泣けました。
キアヌの不遇のRONIN役、皆さんが思っている以上にハマってます。

そしてこの映画では真田広之が主役級の扱いなのもいい。
『ラスト サムライ』(03)では「渡辺謙のサブキャラ」という印象だったし、
『ウルヴァリン:SAMURAI』は結局サブ悪役だったし、
『サンシャイン2057』(07)も前半で退場してしまったけれど、
今回は全編出ずっぱりで、殺陣に踊り(婚礼の儀のアレ)に大活躍。
『47RONIN』=「真田広之のプロモーションビデオ」といってもいいかもしれません。

そんな大石内蔵助役の真田氏とは対照的に、
チンケな小悪党っぽい吉良上野介像を作り上げた浅野忠信も面白かった。
浅野内匠頭に向かって、
ミカを娘と知りつつ「いい側室をお持ちですなぁ」と言った後のあのニヤケ顔。
英語で言うところの”Oops!”という表情ですかね。あれ最高でした。
ま、忠臣蔵でも吉良はカリスマティックな悪役というわけではないので、
ああいう解釈もOKなのではないかと。

そして「吉良の側室と言いつつ実は一番のワル」というミヅキ役の菊地凛子。
この人のビッチなウィッチ(Witch=魔女)っぷりが一番のツボでした。
『三銃士』で言うところのミレディー的ポジションでしょうか。
狐に化けようが、吉良の「嫉妬と憎悪」から毒蜘蛛を作り出そうが、
髪の毛で箸をつまんで鮭の切り身を食べようが、
竜変化しようが、もう全然オッケーです。
もっといろいろハデにやってくれてもよかったぐらい。

何かあれこれ書いてたら文章が長くなってきたので、
続きはまた今度。

 

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