映画『バックコーラスの歌姫たち』(13)を鑑賞。
有名アーティストのライブやスタジオレコーディングでバックコーラスを務める、
「知る人ぞ知る」女性シンガーたちのドキュメンタリー映画。
(「無名の」という表現はちょっと失礼な気がするので使いたくないですね)
うちのレーベルも「ホール&オーツのバックミュージシャン」である、
エリオットさん(key)やチャーリーさん(sax)のアルバムをリリースしているので、
なかなか興味深い内容でございました。
「面白い映画」というより、いろいろ深く考えさせられる映画とでも申しましょうか。
自分が多少なりとも音楽業界で仕事をしているからというだけでなく、
一人の音楽好きのリスナーとしても、
「いい加減な気持ちで音楽聴いちゃいけないな」と改めて思った次第です。
好きなアーティストの曲を聞く時は、
バックシンガーやサポートミュージシャンの演奏もキチンと聞いて差し上げるのが、
そのアーティストへの礼儀というか何というか。
しかしこの映画には「面白い」部分が多々あったのもまた事実。
洋楽好きの人、特に70年代洋楽に興味のある人なら、
女性シンガーたちの「ここだけの話」に思わずニヤニヤしてしまうのではないでしょうか。
例えばジョー・コッカーについて語るメリー・クレイトンの話。
「レイ・チャールズのコンサートの最前列で体をよじってる男がいて、”あの男、何者かしら?”と仲間に尋ねた」のだとか。
コッカーは自分のステージだけじゃなくて、
他人のライブを観ている時も客席で体をよじっていたのかと。
メリー・クレイトンは「ギミー・シェルター」録音秘話も面白かった。
頭にカーラー巻いてパジャマ姿のまま夜にスタジオへ呼び出されて、
“Rape, Murder It’s just a shot away, It’s just a shot away”のコーラスパートを延々録って、
扇情的な歌詞の内容に「なによコレ?」と思ったのだとか。
そりゃ初対面の女性シンガーに、
「レイプに殺人、目の前で始まったぞ」なんて歌詞を何度も歌わせたら、
相手もドン引きしますわなー。
「(録音が)終わったらブッ飛ぶわよ」と思ったらしい。
その結果、あのハイテンションなコーラスが録れたのだから見事と言うしかありません。
ミック・ジャガーやデヴィッド・ボウイと浮き名を流した、
クラウディア・リニアが語るジャガー/ボウイ評も笑えますね。
「ミックは悪ガキ、ボウイは中性的タイプ」って、もう第一印象そのまんまという。
「(彼女も)楽しかったと思うよ。あんな調子だし」と言って楽しそうに笑うミックも、
永遠の悪ガキっぽくて微笑ましい。
その一方で、波乱の人生を送ったダーレン・ラヴのエピソードは
観ていて本当に気の毒になりましたね…。
フィル・スペクターのヒット作にバックコーラスで貢献してきたのに、
使い捨て同然に扱われて、
失望のあまり音楽業界から退いて掃除婦をやっていたという逸話は悲しすぎます。
『リーサル・ウェポン』(87)にマータフの妻役で出演しているのを観た時は、
これまで「有名歌手のゲスト出演」的な感じだったのかなと思っていましたが、
本人曰く「表に出ていないと誰も自分を覚えていないから、名前を売るために出演した」のだとか。
フィル・スペクターの奇行については、
アル・パチーノがスペクターを演じたTV映画でも触れられてます。
天才と何とかは紙一重というやつですかね…。
というわけで、最後に『バックコーラスの歌姫たち』サントラ盤のご紹介。
編集の関係上、映画本編でフルで流せなかった曲はこちらでお楽しみ下さい。
Gimme Shelterがローリング・ストーンズのバージョンではないのはいつもの事ですね。
以前のブログにも書きましたが、
ストーンズのオリジナル楽曲は権利関係の問題からか、
サントラに収録されるのは極めて稀なので。
収録曲は以下の通り。
01: Walk on the Wild Side (ルー・リード)
02: Slippery People (トーキング・へッズ)
03: Nobody’s Fault But Mine (メリー・クレイトン)
04: He’s A Rebel (ザ・クリスタルズ)
05: Space Captain(ジョー・コッカー 「マッド・ドッグス・アンド・イングリッシュメン」より)
06: Gimme Shelter (メリー・クレイトン)
07: Sure On This Shining Night(リサ・フィッシャー)
08: Let’s Make A Better World (タタ・ヴェガ and ジュディス・ヒル)
09: Young Americans(デヴィッド・ボウイ)
10: Southern Man(メリー・クレイトン)
11: Desperation (ジュディス・ヒル)
12: A Fine, Fine Boy(ダーレン・ラヴ)
13: Lean On Me (ダーレン・ラヴ)
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