新年を迎えて数日が過ぎたものの、
何だか「ハッピーニューイヤー!」という気持ちになれずにいます。
というのも、去年いろいろな訃報を聞きすぎたから。
特に映画・音楽・演劇業界の大御所の方の訃報がいつになく多かった気がします。
ポーランドの作曲家ヴォイチェック・キラールもその中の一人です。
一般的にキラールの映画音楽の代表作といえば、
フランシス・フォード・コッポラの『ドラキュラ』(92)なのでしょう。
日本初のドルビー・デジタル上映作品だったそうで、
劇場で聴くフルオケ・スコアもかなり迫力があったのではないかと思います。
しかし1992年当時の自分はまだ「映画館で映画を観る」という習慣がなく、
キラールの音楽もサントラ初心者の自分には難解すぎました。
そんなわけで、個人的に最も印象に残っているキラールの作品はというと、
ロマン・ポランスキー監督、ジョニー・デップ主演の『ナインスゲート』(99)なのであります。
僕は『エンゼル・ハート』(87)とか『ディアボロス/悪魔の扉』(97)とか、
悪魔を題材にしたオカルトスリラーが結構好きなうえに、
この時期(99年前後)「探偵もの」の小説や映画にハマっていたので、
「魔界に通じる扉の秘密」が隠された稀少本を、
「本の探偵」が調査するというストーリーに一気に引き込まれました。
巷の評価はどうだか分かりませんが、
白塗りも特殊メイクもなしの素顔(やや老けメイク感あり)のデップが見られるのと、
デュママニアの人しかついて行けそうにない原作本を、
万人向けに簡略化した脚本はもっと評価されていいのではないかと。
電話の向こうから悪魔的な声で喋るフランク・ランジェラとか、
画面に出た瞬間にヤバそうな雰囲気を漂わせるレナ・オリンとか、
さりげなく挿入されるブラックユーモアとか、
撮影監督ダリウス・コンジの陰影のある映像など、
見どころもいろいろありますので。
そしてキラールの音楽もまた、
非ハリウッド的な室内楽風のホラー音楽で面白いのです。
僕の場合、まずオープニングタイトル曲の悪魔的なワルツを聴いて、
「この映画の音楽は何か違うぞ」と思ったものです。
Plane to Spain (Bolero)のボレロのリズムも妖しくていい感じ。
重厚なオーケストラ演奏をバックに、
スミ・ジヨーにヴォーカリーズを歌わせているのにもちゃんと理由がある。
ジヨーの歌が、魔界の扉を開くカギの存在を暗にほのめかしているんですねー。
いやはや何とも奥が深い。
電子音を一切用いず、
むやみやたらに打楽器を打ち鳴らさない、厳かなホラースコア。
こういう音楽も非常に趣があっていいですね。
キラールのこの音楽があるからこそ、あの結末にも納得出来る。
決して「投げっぱなし」のラストなんかじゃありません。
あれでいいんです。
ところでこのサントラの国内盤、
差込解説書のデザインがなかなか凝っていまして、
映画本編に出てくる『影の王国への九つの扉』の挿絵をフィーチャーしたものになってます。
こういう凝った作りのアルバムは、
ずっと手元に置いておきたくなりますねー。
輸入盤はどうだか分かりませんが、
国内盤のブックレットは紙質もちょっとリッチな質感のものになってます。
アルバムはもう廃盤になっていますが、
もし中古CDショップなどで見かける事があったら、
手に取ってみてはいかがでしょうか。
ただし、中古CDショップで買う時は中身のチェックをした方がいいですね。
何しろ差込解説書が小冊子なので、
物によっては「差込解説書をなくした状態で売りに出した」中古品もあるかもしれないので。