『エージェント:ライアン』の主要キャストをあれこれ検証してみる

shadow recruit_ryan

前回投稿した記事で、
『エージェント:ライアン』(13)の出演者についてほとんど触れていなかったので、
せっかくだから何か書きます。

まずはジャック・ライアン役のクリス・パイン。
『レッド・オクトーバーを追え!』(90)の初代ライアンがアレック・ボールドウィン、
『パトリオット・ゲーム』(92)と『今そこにある危機』(94)のハリソン・フォードが2代目、
『トータル・フィアーズ』(02)のベン・アフレックが3代目で、
本作のパインが4代目のライアンということになります。
「シリーズの再リブート」ということで、かなり若返りが図られました。

クリス・パインがジャック・ライアンに見えるかというと、正直ビミョーです。
やはり『スター・トレック』シリーズのカーク船長のイメージが強すぎて…。
あるいは『アンストッパブル』(10)の新人車掌、
はたまた『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』(07)のサイコな殺し屋と、
いわゆる「現場叩き上げ」系のキャラをこれまで見てきたので、
「現場経験ゼロの情報分析官」とはちょっと違うかな、と…。
もう少しアナリストっぽいヘアスタイルだったら印象も違っていたかもしれませんが。

しかしながら「まだCIAの現場に馴染んでない若造」というキャラの
立ち位置はうまく表現していたように思います。
身体を張ったアクションはさすがの安定感。
何しろ『アンストッパブル』で走る電車の上を歩き回った人ですから。

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ライアンの上司ハーパー役は、
「若者を陰で支える頼れる中年男」キャラで近年再ブレイク中のケヴィン・コスナー。
『マン・オブ・スティール』(13)のジョナサン・ケントとか、
『カンパニー・メン』(10)のベン・アフレックの義理の兄とか、
感情の抑制が利かない若者を叱咤激励する、あんな感じの役どころ。
プレス資料に「神出鬼没で時々不審な動きや不穏な発言を見せる人物」と書いてありましたが、
基本的にライアンをいろいろ助けてくれる頼もしい人物でした。
コスナーは「アメリカの良心」的キャラを演じていた若い頃よりも、
『スコーピオン』(00)で吹っ切れて以降の方がいい演技をしてますね。

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本作のヒール、ロシアの富豪ヴィクトル・チェレヴィン役はケネス・ブラナー。
唇の薄ーい口を真一文字に閉じて、
冷酷無比なサディストで愛国者で若干ナルシスト気味な男を好演しております。
パトリック・ドイル作曲のミサ曲をバックに、
ロシアの教会で祈る姿はまんまシェイクスピア映画のノリ。
(ややキザっぽい)
シェイクスピア俳優ブラナーの真骨頂と言えるでしょう。
キーラ・ナイトレイに白熱電球をくわえさせるドSっぷりも素晴らしいし、
キーラと自信満々に「知的な会話」を楽しんでいたつもりが裏をかかれて、
「虚栄心が強くて女好きなのはよくありませんな」とクギを刺した警備主任に突然キレる、
実業家らしからぬ小物っぷりも最高。
ブラナーの演技を見ているだけでもかなり楽しめます。
劇中「ロシアなまりの英語」を喋っていますが、
仲間との会話ではちゃんとロシア語を使ってます。

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『トータル・フィアーズ』でブリジット・モイナハン、
『パトリオット・ゲーム』『今そこにある危機』でアン・アーチャーが演じていた、
キャシー・ミューラー・ライアン役はキーラ・ナイトレイ。
プレス資料で「(ライアンの)行き先を知らないはずが、突如(モスクワの)ホテルの部屋に現れる」とキャラ紹介されていたり、
予告編でチェレヴィンにエスコートされてレストランに現れるシーンが使われていたりして、
「キャシーはライアンの敵か味方か峰不二子!」的な感じにされていますが、
実際は裏表のない、非常に健気なフィアンセの役でした。
チェレヴィンとのディナーのシーンがキャシー最大の見どころ。

その他、脇役で印象に残る面々を数人ばかりご紹介。

モスクワのホテルで突如ライアンに襲いかかる、
チェレヴィン配下のボディーガード、エンビーを演じるのはノンソ・アノジー。
『ロックンローラ』(08)で『日の名残り』のDVDを観ていた事情通のダフ屋とか、
『THE GREY 凍える太陽』(11)で亡き妹の幻覚を見て死んだ作業員、
『エンダーのゲーム』(13)で鬼軍曹を演じていた人です。
ゴツい風体ですが、立派なシェイクスピア俳優だったりします。

チェレヴィンに余計な忠告をして酷い目に遭う警備主任レムコフ役は、
『ミレニアム』シリーズでニルス・ビュルマン弁護士を演じていたピーター・アンダーソン。
国連のシーンで登場するアメリカ外交官は、
『スペル』(09)、『ペイバック』(99)などの名脇役デヴィッド・ペイマー。
ロシア側の外交官デヴィッド・ハイマンは『ジャッカル』(97)のチェチェン・マフィアの人。
『ゼロ・グラビティ』(13)のプロデューサーとは同姓同名の別人ですので念のため。
ライアンが勤務する投資銀行の上司ロブ役はコルム・フィオール。
フィオールは『トータル・フィアーズ』にも脇役で出演していましたが、
今回は全く違う役。
のほほんとした感じでライアンに一定の理解がある上司の役でした。

あと事件の黒幕という感じで思わせぶりな登場の仕方をしていた、
ロシア内務大臣のソローキン。
演じているのは懐かしのミハイル・バリシニコフでした。
『ホワイトナイツ/白夜』(85)のあの方。
ノンクレジットでの特別出演…だったのですが、
果たして何人の人がバリシニコフに気がつくか心配です。
(さすがに老けたので…)
バリシニコフは実際にソ連からアメリカに亡命した人なので、
「ロシアの政治家の恐さ」というやつを迫真の演技で見せてくれております。
出番は少ないですが、彼の出演シーンは要注目ですね。

 

製作費を抑えるためか、
脇役は比較的マイナーな俳優で固めることになったようですが、
皆さんなかなかいい演技を見せてくれていますので、
本編をご覧になる際は、
主要キャストの脇を固めるキャストの芝居にも是非注目して頂きたいところです。

 

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