何だかコーフン気味のタイトルになってしまいましたが、
本当にハリウッド版『オールド・ボーイ』(13)の音楽は素晴らしい出来です。
ライナーノーツの仕事で何度も何度も音源を聴き込んだ結果、
ウォークマンの★評価が4日か5日くらいであっという間に★5になったほど。
何度聴いても飽きない、
そして聴く度に新しい発見のある奥の深ーーーいスコアです。
音楽を手掛けたのは、
『マシニスト』(04)やリメイク版『死霊のはらわた』(13)のロケ・バニョス。
「スパイク・リー映画の音楽ってテレンス・ブランチャードじゃないの?」
…と思った方も多いのではないでしょうか(筆者もその一人)。
どうもブランチャードとのコンビは『セントアンナの奇跡』(08)で一区切りしたらしく、
最近のスパイク・リーはブルース・ホーンズビイという作曲家と組んでました。
ちなみにホーンズビイは本作でもソース・ミュージック(ジョーの娘ミアが演奏するチェロ曲)を数曲手掛けてます。
ここではライナーノーツに書いたことと違うネタを書こうと思うのですが、
どうも当初は本作の音楽担当にマイケル・ナイマンが抜擢されたものの、
スコアが没になって急遽バニョスに白羽の矢が立ったらしいです。
作曲期間はおよそ3週間程度。
なかなかタイトな作曲・レコーディングのスケジュールではあるのですが…
このロケ・バニョスのオリジナル・スコアが絶品なのであります!
この作り込まれたハイクオリティなスコアをこんな短い期間に書き上げたのかと、
正直驚いた次第です。
ハリウッド版『オールド・ボーイ』の音楽、
ざざっと流して聴いた瞬間に分かるのですが、
とにかくメインテーマがしっかりしてます。
そしてメインテーマのメロディーをこれでもかー、これでもかーと反復させる、
「倹約の達人」ジェリー・ゴールドスミスの作風を彷彿とさせる構成になっています。
アルバム全17曲中、10曲以上のトラックでメインテーマの旋律が聞こえてくるほど。
さらに言えば、
メインテーマやサブテーマの旋律から匂い立つ「美しくも妖しい、そして危険な香り」は、
ブライアン・デ・パルマ映画の音楽を担当した時のピノ・ドナジオ的でもあります。
近年のハリウッド製サスペンス・スリラーの音楽から失われつつある、
「耳に残るメインテーマがしっかり存在する古き良きサスペンス・スコア」になっているんですねー。
「最近のサスペンス・スコアはメロディーがぼやけててつまんねぇ!」
…とお嘆きの方に是非聴いて頂きたいアルバムです。
アルバム17曲目のDestinyの美しさ、儚さは一聴の価値ありですよ。
さて本盤に耳を傾けていると、
何でこんなにメインテーマを執拗なまでに繰り返すのか?
その中で唯一異彩を放っているサブテーマは何を象徴するのか?
…というような疑問が湧き上がってくるわけですが、
これにもちゃんと意味があると思うのです。
そのあたりの考察を国内盤のライナーノーツに書かせて頂いたので、
映画パンフ代わりにご高覧頂ければ幸いに存じます。
恐らくパンフではロケ・バニョスのプロフィールとか、
彼の音楽については触れられていないのではないかと思うので…。
(プレス資料ではバニョスのプロフィールが紹介されていませんでした)
古き良きサスペンス映画の音楽を彷彿とさせつつも、
オーケストラにシンセ、エレクトリック・ギターの音色を組み合わせて、
今どきの音の質感に仕上げているのもポイントと言えるでしょう。
ちなみに先日の『ニード・フォー・スピード』(14)に続いて、
『オールド・ボーイ』も日本盤はHQCD(High Quality CD)仕様になってます。
ブラティスラバ・シンフォニー・オーケストラの演奏と、
バニョスが作り上げた妖しくも美しい旋律を、
是非HQCDで味わって頂きたい所存。
なお余談ですが、
日本版ポスターのタイトルロゴは普通のゴシック体ですが、
『オールド・ボーイ』アメリカ版ポスターの題字はジョシュ・ブローリンの直筆らしいです。
サントラ盤のジャケ写に書かれている”OLDBOY”のタイトルの文字がそれです。
『オールド・ボーイ』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ロケ・バニョス
品番:RBCP-2768
発売日:2014/06/04
価格:2,400円(税抜)