ジャジー&ブルージィな『ラストベガス』のサントラ盤にハマっております。

last vegas

還暦を過ぎた4人のオヤジが、
仲間の独身サヨナラパーティー(バチェラー・パーティー)で大騒ぎ!
…とまぁそれだけの内容なのに、
『ラストベガス』(13)が思った以上にいい映画で嬉しくなりました。

バチェラー・パーティーの話と言っても、
『ハングオーバー!』(09)ほど下品じゃないし、
主役が酸いも甘いも噛み分けたオヤジ4人組なので、
ハメを外しまくりつつも、ギリギリ一線は越えないところがいいなぁ、と。
たった数日の出来事しか描いていないのだけれども、
4人のオヤジたちの長年にわたる友情ドラマがいいんだなぁ、これが。
安易な回想シーンの挿入に頼らず、
いま現在の”オヤジ”たちに過去のエピソードを語らせる演出もいいですね。

マイケル・ダグラスの役は当初ジャック・ニコルソンが演じるプランもあったそうですが、
ダグラスで正解だったのではないかと思います。
オヤジ4人を並べる映画にはジャック・ニコルソンは個性が強すぎるし、
「カッコ悪い俺って、結構カワイイだろ?」とコッテリした演技をしそうなので…。
その点マイケル・ダグラスは、
歳不相応な若妻をゲットしそうな雰囲気があるし、
お金も持っていそうな感じだし、
傲慢そうだけども繊細な一面も持っていそうだし、
何よりアンサンブル・キャストに溶け込める(『トラフィック』(00)とか)俳優なので、
この映画のビリー役には適任だったのではないかと。

モーガン・フリーマンのマイペースな好々爺キャラも定番になりつつあるし、
「下ネタを言っても下品に見えない男」ケヴィン・クラインの「まだまだ現役」キャラも好サポート。
亡き妻へ一途な想いを募らせるロバート・デ・ニーロの偏屈オヤジ役も泣かせてくれます。

 

監督は『クール・ランニング』(93)、『あなたが寝てる間に…』(95)のジョン・タートルトーブ。
登場人物に悪い人が一人も出て来ないところとか、
サエない主人公が頑張って幸せをモノにする展開などは、
いかにもタートルトーブ作品という感じ。
そういえば今回の映画も味のある脇役が多かったですね。
「最近のあなたは生気が感じられないから、ベガスでハメを外してらっしゃい(でも何をしてきたかは言わないで)!」
…と浮気容認で亭主(ケヴィン・クライン)をベガス送り出す妻、いい人すぎ!
泣けたよ…。

しかしまぁ本作の一番の儲け役は、
ラウンジシンガー役のメアリー・スティーンバージェンでしょう。
ダグラスとデ・ニーロの両方から好意を寄せられて、
程よく距離を置きつつどちらともお付き合いしてしまうというオトナな女性。
「歳は取っても心根はガキのまま」のオヤジ2人との対比が秀逸です。
どうもこの人は『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』(90)の頃から、
年長者(=年配の人)から想いを寄せられる傾向があるようで。

 

で、音楽の話。
映画本編は何しろ「ベガスでバチェラー・パーティー!」という内容なので、
ダンサブルな音楽が終始ガンガン鳴っているわけですが、
サントラ盤はマーク・マザーズボーのスコアと、
メアリー・スティーンバージェンが歌うジャズ・スタンダードに絞って構成された、
ジャジーでブルージィな”オトナのサントラ”に仕上がってます。
ワタクシ映画を観るより先に、
ランブリング・レコーズさんからこの映画のサントラ盤を頂いたのですが、
音楽がすごくよかったので映画本編も観てみようかなと思った次第です。

まず何と言ってもマザーズボーのスコアがノリノリで素晴らしい。
ドラムスとベースのタイトなリズム隊に、
ハモンドオルガン、フェンダー・ローズ、クラビネットのアドリブを交えた軽快な演奏が乗った、
最高にグルーヴィーなスコアに仕上がってます。
『ラウンダーズ』(98)や『シェイド』(03)のスコアに似ているので、
予備知識なしで聴いたらクリストファー・ヤングのスコアと間違っていたかもしれません。
『LEGO ムービー』(14)でDEVO仕込みのテクノポップを聴かせたかと思ったら、
今回はグルーヴィーなジャズ/ブルース・スコアとは、
マザーズボーも多才な人ですね。。
彼ののスコアの欠点である、
「1曲あたりの演奏時間が短い」という要素もあるものの、
それを差し引いてもこの映画のジャジー&ブルージィな音楽は大変魅力的であります。

そして意外な掘り出し物…と言ったら失礼ですが、
メアリー・スティーンバージェンのヴォーカル曲がなかなかよかった。
声質的にはちょいとハスキーな感じなのですが、
どことなくコケティッシュというか愛くるしさがあって、
かといってアクの強さみたいなものがないので大変聴きやすい。
曲目はOnly YouやYou’re Nobody ‘Til Somebody Loves You、
I Only Have Eyes For Youといったジャズ・スタンダードものがほとんどですが、
1曲だけCup of Troubleというオリジナル曲を披露しているのがミソ。
たぶんスティーンバージェンが担当したのは作詞だと思われますが、
スタンダードものと並べて聴いても全く違和感ありません。

映画本編だと、エンドクレジットでアース・ウインド・アンド・ファイアーの超有名曲が流れてしまうので、
この曲のすさまじいインパクトのせいで、
マザーズボーのスコアの印象が薄くなってしまったかもしれません。
そのAW&Fの超有名曲がサントラ未収録で、
物足りないと思われる人もいるかもしれません。
でも収録曲のバランスを考えればこれでよかったと思うし、
マザーズボーの音楽もいい感じなので、
映画が気に入った方ならサントラ盤を買って損はないかと思います。

 

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