前回はフィリップ・シーモア・ホフマンについてあれこれ書きましたので、
今回は映画『誰よりも狙われた男』(14)に登場するその他の登場人物について。
まずはCIAベルリン支局のマーサ・サリヴァン。
ロビン・ライトがイヤな女を実に憎々しげに演じているうえに、
原作小説から登場人物を何人か削って、
数人分の憎まれキャラをマーサひとりにミックスしてしまった結果、
「本作で一番のワル」になってしまいました。
まぁCIAが悪者扱いというのは今に始まったことではないのですが、
なぜここまでCIAが外国で嫌われるかというのは、
『ワールド・オブ・ライズ』(08)を観て頂くとよく分かると思います。
あの映画でも太ったラッセル・クロウがいろいろやってましたからねー。
個人的な印象だと、
ロビン・ライトは『ドラゴン・タトゥーの女』(11)とか『消されたヘッドライン』(09)とか、
「何だかんだ言って主人公に一定の理解がある人」という感じだったのですが、
今回の彼女は終始一貫して食えない女だったので、
何かショックですね…。
ドイツに密入国した青年イッサに協力する人権団体の弁護士、
アナベル・リヒター役はレイチェル・マクアダムス。
カナダ・ロンドン出身のマクアダムスはドイツ女性に見えないのですが、
まぁ本作ではホフマンもウィレム・デフォーも、
「ドイツ訛りの英語を話すドイツ人」を演じているので、
このあたりをあーだこーだと突っ込むのは野暮というものでしょう。
ただ「人道主義に燃えて、後先考えずイッサに協力する」というキャラは、
『きみに読む物語』(04)とか『恋とニュースのつくり方』(10)の無鉄砲女子にも通じるものがあり、
そういう意味ではマクアダムスの個性が反映されたキャラなのかなと思います。
そのアナベルとイッサが接触を試みる銀行家のトミー・ブルー役は、
ワタクシの大好きな俳優のひとり、ウィレム・デフォー。
『フェアウェル さらば、哀しみのスパイ』(09)ではCIA長官を演じてましたが、
今回はスパイに協力を要請される側のキャラを演じております。
原作だと、ブルーは”少年聖歌隊の声を持つ女”アナベルに心惹かれている描写があるのですが、
映画版はそのへんの描写はばっさりカットされてますね。。
バッハマンに「あんた、あの女を抱きたいと思ってるだろ?もう歳だから諦めろ」とクギを差される程度。
しかしブルーの少ないセリフやちょっとした立ち振る舞いから、
原作小説にあったアナベルへの想いを読み取ってみせるのが、
デフォー好きの矜持というやつでございます。
こういう抑えた演技のウィレム・デフォーもいいですねー。
主要キャストはハリウッドの俳優を使わざるを得なかった本作ですが、
助演キャラはちゃんと人種に合致した俳優を使ってます。
例えばバッハマンのテロ対策チームのスタッフ、
マキシミリアン役は『イングロリアス・バスターズ』(09)のダニエル・ブリュールだし、
バッハマンの理解者ニーナ・ホス役もドイツ人のイルナ・フライ。
穏健イスラム派のアブドゥラ博士役のホフマン・エルシャディはイラン人。
(『ゼロ・ダーク・サーディ』(12)とか『君のためなら千回でも』(07)にも出てます)
チェチェン出身のイッサ・カルポフ役は旧ソ連・カムチャッキー出身のグレゴリー・ドブリギン。
憲法擁護庁のモア役もドイツ出身のライナー・ボックという具合。
(ライナー・ボックは『パッション』(12)のバッハ刑事役の人です)
ドイツ系・中東系の助演俳優の皆さん方が、
映画にリアルな雰囲気を与えているので、
このあたりにも注目して頂きたいなーと思います。
ワタクシのお気に入りの助演キャラはミヒャエル・アクセルロットですね。
その理由については次回お話しします。