さて今回は『スパイ・レジェンド』(14)の音楽についてのお話です。
オリジナル・スコア作曲は『ワールド・ウォー Z』(13)のマルコ・ベルトラミ。
ここ数年のロジャー・ドナルドソン監督作品は、『世界最速のインディアン』(05)、『バンク・ジョブ』(08)、『ハングリー・ラビット』(11)など、ベテランのJ・ピーター・ロビンソンが音楽を担当していたので、今回もロビンソンになるんだろうなーと当初思っておりました。
ところが本作の製作総指揮を兼任するブロスナンの提案で、ベルトラミを起用することになったらしいです(この辺の事情は日本版サントラのライナーノーツに書かせて頂きました)。
まぁ恐らくロビンソンが音楽担当だったら、正直サントラ盤がリリースになったかどうかも怪しかったので、こうしてサントラがCDアルバムリリースになったのも、ベルトラミのネームバリューあってのものだったではないかと。
マルコ・ベルトラミといえば、『ターミネーター3』(03)や『ウルヴァリン:SAMURAI』(13)、『ヘルボーイ』(04)、『ダイ・ハード』の4作目と5作目など、メジャー映画の音楽も結構担当しているし、聴き応えのある音楽を書いていると思うのですが、どうも彼の名前が表に出てくる機会が少ないなという気がします。
何でかなーと常々考えていたのですが、それは恐らく彼の「音楽でやりすぎない」という姿勢によるものなのかなと。
たとえば上記の作品群も、リモート・コントロール系の作曲家の皆さんだったら、もっとハデに音楽を鳴らしたり、キャッチーな「燃えるメインテーマ」を壮大に響かせたりしたと思うのです。
しかしながらベルトラミは、故ジェリー・ゴールドスミスの「汝、書きすぎるべからず」という教えを忠実に守っている人なので、そのあたりがRC系スコアやゲーム音楽が好きなサントラファンに”物足りない”と思われているのではないだろうか、と。
うーん、自分はこういうスコアも結構好きなんですけどね-。
そんなベルトラミがどのようなスパイ・アクションの音楽を作るのか。
マスコミ試写で本作を観る前から興味津々でしたが、なるほど、こう来ましたか!という感じのシブいスコアでした。
オーケストラ+ギター+打楽器(打ち込みのリズムを含む)という構成で、60~70年代のスパイ映画のようなシブーい旋律のメインテーマを奏でておりました。
このメインテーマがなかなか秀逸な出来で、東ヨーロッパ的な雰囲気を漂わせた哀愁のメロディーがカッコイイ&耳馴染みがよいのです。
007シリーズのデヴィッド・アーノルドのような、フルオケにデジタルビートをバッキンバッキン鳴らしたゴージャスな音楽ではありませんが、これはこれでシブくて素敵です。
アコースティック・ギターの入った音楽が好きなサントラファンなら”買い”の1枚でしょう。
…とまぁ、さんざんシブいシブいと書いてしまいましたが、個人的には『ウルヴァリン:SAMURAI』よりキャッチーな音楽だった印象を受けました。
こちらのメインテーマの方が美メロに仕上がっているからだと思いますが。
メインテーマ曲の完成度の高さから言えば、『3時10分、決断のとき』に継ぐ名曲ではないかと思いました(個人的には)。
ちなみに『スパイ・レジェンド』のメインテーマはトラック1の”Take Orders”で聴くことが出来ます。試聴の際の参考になればと思います。
サントラ盤は全18曲収録でプレイタイムも60分強。
映画本編の印象的なシーンで使われた曲はほどんど収録されているので、
ボリューム的にも申し分ないかと。
ボンド時代の華やかでゴージャスなブロスナンとはひと味違う、
デヴェロー役で見せるニヒルな彼の魅力を音楽でも味わってみませんか?
『スパイ・レジェンド』オリジナル・サウンドトラック
音楽:マルコ・ベルトラミ
レーベル:Rambling Records
品番:RBCP-2874
発売日:2015/01/14
価格:2,400円(+税)