マイケル・ダナ傑作選/偶然の恋人(2000)

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弊社リリース作品『ケルティック・ロマンス』の作曲家、
マイケル・ダナの映画音楽作品を振り返る不定期連載コーナー。
今回はベン・アフレック&グウィネス・パルトロウ主演『偶然の恋人』(00)をご紹介します。

 

この映画、アフレックが落ち目の頃の作品ですが、
当時の彼は行き当たりばったりに嘘をつきまくった『レインディア・ゲーム』(00)とか、
上司の娘とこっそり交際していた『アルマゲドン』(98)とか、
接触事故を起こして現場からさっさとトンズラした『チェンジング・レーン』(02)とか、
何だか不誠実なキャラクターを演じることが多かった。
今回の『偶然の恋人』で演じたバディという男もそんなキャラの一人でした。

悪天候で運休が相次ぐ空港で偶然知り合った男性(トニー・ゴールドウィン)に、
善意で(&バーで会った行きずりの女性と一夜を過ごしたくて)自分の航空券を譲ったら、
その飛行機が墜落して乗員・乗客が全員死亡。
良心の呵責に苛まれて、
自分の代わりに飛行機事故で亡くなった男性の妻アビー(パルトロウ)に会いに行くも、
肝心の真相を話せないまま、
ズルズルとアビーに惹かれていって関係を続けてしまう…という感じで、
「お前なにやってんだよぉぉ」とツッコミたくなってくるダメ男を、
アフレックが全編ぼさーっとした顔で演じております。

ことほどさように観ているコチラが悶々としてくる主人公なのですが、
この映画にも誠実なものがありました。
それがマイケル・ダナのオリジナル・スコアなのであります。

 

マイケル・ダナの音楽の特徴といえば、
過去の投稿でも何度も書かせて頂いているとおり、
悩める者、苦しむ者の心に寄り添う音楽」なわけですが、
今回も彼の音楽が「よかれと思ってやったことで人を死なせてしまった男」と、
「愛する夫を死なせた男と惹かれ合ってしまう女」のドラマに、
ある種の説得力を持たせている(ように思う)のです。
脚本で描き込み不足だった部分を音楽で補完しているとでも申しましょうか。

サウンド的にはマイケルさんのスコアの中でもコンテンポラリーな作風というか、
ストリングスにエレクトリック・ギターやキーボード、打ち込みのリズムを絡ませた、
ポップ・ミュージック風のスコアになってます。
聴き方によっては『(500)日のサマー』(09)の音楽のプロトタイプに聞こえなくもない。
ちなみにこの映画のスコアでギターを弾いているのは、
後に『ミッドナイト・ガイズ』(12)などの音楽を手掛けることになるライル・ワークマンでした。

メインテーマやサブテーマのメロディーも絶品で、
優しくて、でもどこか切ない旋律がじんわりと胸に染みてくるのです。
アルバム1曲目の”Weather”がいきなり名曲なのですが、
序盤でバンスリ(インドの笛)の哀愁の音色が聞こえてくるのがマイケルさんならでは。
基本的に切ない音楽が多いのですが、
10曲目の”Seven Steps”はアルバムの中で最もポップかつポジティブな楽曲になってます。
(アコースティック・ギターの伴奏がいい感じ)

 

ワタクシ映画本編はスターチャンネルだか何かで一度観たきりですが、
サントラ盤(スコア盤)は当時かなり聴き込みました。
当時は映画音楽にヒーリング・ミュージック的なものを求める傾向がありましたが、
本作のサントラ盤などはまさにそれで、
映画本編を未観でも「マイケル・ダナのソロアルバム」として楽しめるクオリティを持っています。
収録時間が30分強と少な目なのが残念ではありますが、
中古CDショップなどで見かけたら買ってみて損はないかと思います。

ところでこの映画、
もし物語の序盤でバディがアビーに真相を告白していたら、
マイケルさんの音楽も違うテイストになっていたのでしょうねー。
多分アトム・エゴヤン監督作品の時のような、
重くて暗ーーいスコアになっていたのではないかと思われます。
(それはそれで聴いてみたい気もするのですが)

 

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