ポール・マッカートニーの日本公演が終わった今こそ聴いて頂きたい、『ふたりだけの窓』サントラ盤

the family way

先日ポール・マッカートニーの来日公演がありましたが、
各会場のライヴに行かれた方は皆さん楽しまれたでしょうか?

ワタクシは諸般の事情で行かなかった(行けなかった)のですが、
今回は何事もなく全日程が無事に終わって心底ホッと致しました。
何しろ前回があんな感じでキャンセルになってしまいましたので、
今度何かあったらそりゃもう大変なことになりますから、
他人事ながらポールが全公演をやり遂げてくれて安心しました。

…というわけで、
御年72歳で3時間近いステージをやり遂げたポールに敬意を表して、
ワタクシここ数日『ふたりだけの窓』(66)のサントラ盤を延々聴いておりました。
ポールが初の映画音楽を手掛けたことでファンには有名なこの作品、
昨年ランブリング・レコーズさんの「サウンドトラック傑作選50」の企画でDSDリマスター盤が発売されていたのです。

「ポールが映画音楽を手掛けた作品」といっても、
彼が作曲したのはテーマ曲(Love in The Open Air)だけで、
あとはジョージ・マーティンがメインテーマを様々なアレンジに発展させたものなのですが。
当時のポールにオーケストレイションの知識がなかったから…ということなのでしょうが、
これを聴くと「ジョージ・マーティンはやっぱり凄い」と思いますねー。
ジョージ・マーティンのサポートがあったからこそ、
このような流麗なオーケストラ・スコアが完成したわけで。

とはいえ、ポールが単に主題歌や挿入歌を映画に提供するのではなく、
歌モノに頼らず本気でメインテーマを書き下ろしたという点が結構重要なのではないかと。
1966年と言ったらビートルズが現役バリバリの頃ですから、
「主題歌・挿入歌の提供のみ」というやり方もあったと思うのですが、
あえてそうしなかったところに彼の「本気度」が見えてくる。
主題歌を1曲提供しただけで、
「○○が映画音楽を担当!」というのとは重みが違うというか何というか、
Love in The Open Airのメロディー1曲にポールが全身全霊を傾けたのだと思うと、
このメロディーが大変贅沢なものに感じてくるのです。

このサントラはLove in The Open Airのメロディーをモチーフにした、
同一のメロディーのアレンジ違いの曲が14曲収録されているような構成なので、
普段映画のサントラ盤を聴く習慣がないビートルズファンやポールのファンがこのアルバムを聴くと、

「何だか同じ曲ばっかりでつまらない」

…という感想を持ってしまう恐れがあるわけです。

でもそれは違いますよお客さん!

まぁこれは『ふたりだけの窓』のサントラに限らず、
初めてサントラ盤(=スコア盤)を聴く時に誰もがブチ当たる最初の壁みたいなものなのですが、
この「ライトモチーフ」の概念というかメインテーマのバリエーションの面白さが分かるようになると、
映画のサントラというものが俄然楽しくなってくるのです。

かくいう自分もまだ子供の頃、
ジェリー・ゴールドスミスのサントラ盤を初めて聴いた時は、
「何で同じような曲ばっかり入ってるの?」とか思いました。
今となっては恥ずかしい話ですけども。
でも何度も何度もサントラを聴いているうちに、
同じメロディーが曲によって(=場面によって)全く違う顔を見せていく構成の面白さが分かってきて、
「これはすごい!面白い!」と思うようになったものです。

 

ですから今回のこの『ふたりだけの窓』のサントラ盤も、
ポールやビートルズのレア盤を収集している方だけでなく、
今までこのアルバムを聴いたことのなかったファンの方にも是非聴いて頂きたいですね。
映画主題歌ともひと味違った面白さがあると思いますので。

なおDSDリマスター盤では毎度おなじみの葛巻善郞氏によるコメントですが、
リマスター前の音源についてはかなり辛口のコメント。

「耳に痛く、何度も聴く気になれない」
「”レアな音源なので、ある程度売れるから”と適当に作られている感がして残念。」

…などなど、アルバムの資料的価値を知っているからこそ、
「こんな音で満足してちゃいけません!」とおっしゃられているようです(多分)。
で、本来のサウンドに戻すべく大幅に音を調整したとのことです。
なお葛巻氏のコメントはランブリングさんの特設サイトから引用させて頂きました。
(現在はサウンドトラック傑作選50の一部製品が生産終了になったので、
葛巻氏のコメントページがなくなってしまいましたが…)

まぁワタクシは以前の音源を持っておりませんので比較できないのですが、
こういう暖かみのあるレトロな音もいいもんですねー。

ちなみにこの映画、
ポールが音楽を担当することになって製作資金を調達しやすくなったそうです。
そういう意味でも彼が音楽担当でいろいろ助かったであろう作品ですね。

 

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