『レッド・ドラゴン』(02)や『羊たちの沈黙』(91)の前日譚…という設定でスタートしたものの、話が進むとどんどん映画版と違うパラレルワールド的な展開になっていった、TVシリーズ版『ハンニバル』(13~15)。
「クラリスのいない世界だと、レクター博士の恋愛対象はウィル・グレアムになるんだね…」…という感じで、ワタクシそれほど熱心に入れ込んで観ていたわけでもないのですが、気がついたらサントラ盤をフルコンプしてしまっておりました。
『ハンニバル』のサントラ盤は各シーズン2枚ずつ発売されたので、フルコンプということは合計6枚買ってしまったことになるわけです。
正直、シーズン2くらいでもう買うのやめようかとも考えたのですが、やはり手元に4枚サントラ盤があると、全部集めないと何だかスッキリしないので、結局シーズン3まで全部揃えてしまったと。
TVシリーズ版『ハンニバル』の音楽はかなり前衛的なサウンドだったので、3シーズン全てのサントラを買いそろえるのは結構キビしいものがありました。
音楽担当はブライアン・レイツェル。
元Red Krossのドラマーで、『ロスト・イン・トランスレーション』(03)や『マリー・アントワネット』(06)、『ブリングリング』(13)など、ソフィア・コッポラ監督作での音楽監修/音楽プロデュースで知られる人ですが、こういうポップな音楽の印象が強いと「『ハンニバル』でも幻想的なシンセ・スコアを聴かせてくれるのかな?」…と思ったりするわけですが、これが真逆のサウンド。
というのもレイツェルは『30デイズ・ナイト』(07)でアヴァンギャルドな音楽を作っておりまして、この映画の監督であるデヴィッド・スレイドが『ハンニバル』の製作総指揮に名を連ねているので、『ハンニバル』は”こっち系”のサウンドになったというわけです。
したがって『ハンニバル』の音楽はメロディーを楽しむタイプの音楽ではありません。
耳障りな音を響かせるストリングスや、多種多様な打楽器(ガムラン・ゴングなど)、ザラザラした質感の電子音などを使った実験的・前衛的なサウンドになっています。
『羊たちの沈黙』や映画版『ハンニバル』(00)の音楽に慣れていると、「レクター博士とガムラン楽器」という組み合わせに違和感を憶えるのですが、ドラマを観ているとだんだん音が耳に馴染んでくる。慣れというものは恐ろしい。
ことほどさように前衛的な音楽で統一されたドラマ版『ハンニバル』ですが、ワタクシ個人的にはシーズン2の音楽が最もトンがった作りになっている気がします。
「勅使河原宏や武満徹の大ファン」
「打楽器はシンバルとか金属系のものの方が好き」
…というレイツェルの音楽嗜好がストレートな形で現れている印象。
シーズン2はエピソードタイトルが日本の懐石料理の流れになっていることもあって、レイツェルが自由奔放に「武満徹作品へのオマージュ」をやっている感じ。『怪談』(64)とか『砂の女』(64)の音楽世界ですよこれは。
ドラマ版『ハンニバル』のサントラは、基本的に各エピソードの曲をメドレー形式で1曲ずつ収録している構成です。なので曲によってはレクター博士が弾く(という設定の)ハープシコードの旋律や、音楽史上最も悪趣味かつグロテスクな楽器「人体チェロ」の音(という設定)の響き、ウィルのプロファイリング時に挿入される振り子イメージの音など、「あ、これドラマのどこかで聴いたな」という音やフレーズが挿入されています。
マッツさんのジャケ写目当てで購入するなら、シーズン2のVol.2とシーズン3のVol.1のサントラがよいでしょう。
シーズン3のVol.2は最終話のラストで流れた、Siouxsie Siouxの”Love Crime”が収録されているので、個人的にこのアルバムはどうしても手に入れておきたかったのでした。
なおジャケット裏面やバックインレイがグロい写真だったりするので、そのあたりはご注意下さい。
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