『スーサイド・スクワッド』は既製曲よりスティーヴン・プライスの音楽をもっと聴きたかった…の巻

suicide-squad

先週『スーサイド・スクワッド』(16)を観てきました。
ド派手なポスタービジュアルからもっとアナーキーな内容を想像していたのですが、
デヴィッド・エアー監督にしては思ったより無難にまとめたような印象でしたね。。

荒くれ者集団のアナーキーっぷりなら『サボタージュ』(14)の面々のほうがいい感じにブッ壊れてたし、
捨て駒部隊の悲哀というテーマも『フューリー』(14)のほうが真に迫っていたし、
何だか不完全燃焼な感じがして仕方がない。

デヴィッド・エアーのことをあまり知らなければ、
(あるいはさほど彼の作品に思い入れがなければ)
『スーサイド・スクワッド』はフツーに楽しめる映画だと思います。
しかし『バッドタイム』(05)とか『エンド・オブ・ウォッチ』(12)とか『サボタージュ』とか『フューリー』とか、
彼の強烈な映画を散々観てきた後にこの映画を観ると、
全体的に薄味仕立てというか、何か物足りない。

ハリウッド映画界屈指の暴れん坊監督デヴィッド・エアーをもってしても、
何かと表現・演出上の制約の多いアメコミ映画で、
“独自色”を前面に出すのは難しかったのかもしれません。
これだけ強烈な悪党が一堂に会した映画にもかかわらず、
『スーサイド・スクワッド』はPG-13指定ですからね。。
(普段のデヴィッド・エアーならデップーみたいなR指定になっていてもおかしくないのに)

 

まあワタクシこの映画は本編の内容よりも音楽に注目していたのですが、
何だかこっちの方も正直ノれなかったなぁ、と…。

いや、スティーヴン・プライスの音楽はとてもよかったのです。
でも既製曲の選曲センスがいささかベタというかあざとい感じで、
いつものエアー作品のサウンドトラックのような”ヤバさ”が足りなかったかなと。
これだったら既製曲をガンガン流す代わりに、
スティーヴン・プライスの音楽でそのシーンを観たかったなぁ、とも思ったり。

そんなわけで、スティーヴン・プライスの音楽は今回もなかなかの力作です。
『ゼロ・グラビティ』(13)、『フューリー』同様に音数が多いのだけれども、
全ての音に意味があってムダな音がひとつもない(ように聞こえる)。
ザクザク刻むストリングスと、
エコーを利かせたダビィな音響処理も心地よい。
今回は内容が内容だけに、
『ゼログラ』『フューリー』に比べるとロック色が強めになっているのも聴きどころです。
かつてプライスはギャング・オブ・フォーのアンディ・ギルのもとで働いていたので、
こういうロック方面の音にも強い作曲家なんですよねー。
(プライスは本作でギター、ベース、シンセを弾いています)

 

メインテーマの勇ましくもどこか哀愁を漂わせたメロディーも秀逸。
『ランボー』のメインテーマにも通じる男泣き必至のメロディーですねこれは。
一人娘を気にかけるデッドショットのテーマとか、
常人には理解しがたいハーレイ・クインとジョーカーの”愛のテーマ”とか、
ディアブロの”悲しい過去のテーマ”とか、
本作のプライスの音楽は悪党たちのアナーキーな破壊活動っぷりよりも、
彼らの人間性や贖罪といった側面に迫った曲作りをしている印象です。

 

エアー監督も本作を『特攻大作戦』(67)に例えているし、
プライスもそんな監督の意向を理解して、
「悪党にだって心はあるんだ!」
…というメッセージが伝わるようなサウンドを心がけたのかもしれません。
パンキッシュでブッ飛んだビジュアルのスーサイド・スクワッドの面々に比べると、
プライスの音楽は思ったよりマジメだった、というのがワタクシの感想です。

…というわけで、
ワタクシ的には『スーサイド・スクワッド』のサントラはボーカルコンピ盤ではなく、
スティーヴン・プライスのスコア盤のほうをプッシュさせて頂きたいと思います。

 

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