2016年は有名ミュージシャンの訃報が続いた年でしたが、
年の瀬になってピエール・バルー氏の訃報まで聞くことになるとは…。
先日チネ・ラヴィータで『男と女』(66)のデジタル・リマスター版を観て、
「ああ、やっぱりこの映画はいいなぁ」と余韻に浸っていただけに、
この知らせはショックが大きすぎますね…。
ワタクシがピエール・バルーというアーティストを知ったのは、
高橋幸宏のアルバム『薔薇色の明日』と『四月の魚』のサントラ盤がキッカケでした。
ワタクシ母親の影響で、
幼稚園の年長ぐらいの頃からYMOを聴いていたマセガキだったのですが、
昔も今も幸宏さん派でして、
幸宏さんのソロアルバムも片っ端から聴きまくっていました。
(ちなみに従兄は坂本龍一派でした)
幸宏さんのソロアルバムの中でも『薔薇色の明日』が特に好きで、
それゆえアルバム1曲目の「Ripple」がとても印象的だったのですが、
この曲に作詞とボーカルで参加していたのが、
他ならぬバルー氏だったわけです。
その後『四月の魚』のテーマソングで、
バルー氏の詞と歌声に再び出会うことになるのですが。
当然、ワタクシの母は『男と女』を知っている世代ですので、
「ピエール・バルーはこういう人で…」と教えてくれましたが、
何しろ当時のワタクシは小学校低学年ですので、
実際に『男と女』を観るのはずっと後(=高校1年生ぐらいの頃)のことでした。
『男と女』という映画はワタクシの映画観や音楽観、
人生観、恋愛観など、
あらゆるものに影響を与えた特別な作品なので、
詳しい感想は割愛しますが、
とにかくこれは素晴らしい作品だと感動しまして、
ビデオやDVDで何度も観たし、
サントラ盤もSLCのステレオ録音盤を繰り返し聴きました。
で、数年前にそのバルー氏が仙台でミニコンサートを行うという機会がありました。
場所はカフェモーツァルト・アトリエ。
娘さんのマイアさんがアルバム「地球をとってよ!」の先行販売をやっていたから、
2009年の暮れ頃だったのかな。
ジャケットは完成していたけれどもCDプレスがまだだったので、
当日会場でアルバムを購入した人には、
後からプレス盤のCDが別途郵送されてきたような記憶があります。
ライヴは全体的にリラックスした雰囲気の中で行われた、
いい感じに”ゆるい”ムードの演奏だったのですが、
映画の中でアンヌの夫を演じていたバルー氏が、
自分の目の前で”Samba Saravah”を歌っている姿には心底シビれました。
仙台に居ながらにしてバルー氏を生で見られるとは思いませんでしたからね…。
カフェライブならではの企画として終演後にサイン会ありまして、
そこそこ長い時間(数分くらいですが)バルー氏とお話しする機会がありました。
当方のバルー氏の音楽への30年以上にわたる思い入れを、
数分間でどう伝えるか悩んだのですが、
長年聴きこんだ『男と女』のサントラ盤と、
幸宏さんの「薔薇色の明日」と「四月の魚」のアルバムを持参していって、
「僕はユキヒロさんのアルバムであなたの曲を知りまして…」
…と話を切り出してみることにしたのでした。
するとバルー氏は「そうなのかね、ありがとう。おぉ、これは懐かしいなぁ。うーん、彼(=幸宏さん)の曲はいいよねぇ…」と仰って、感慨深げにアルバムを手に取って眺めていたのを今でも覚えています。
80年代当時、自分の同年代の友達でYMOや幸宏さんの曲を好きで聴いていたようなマセた子供はいなかったし、
高校時代も『男と女』がいいと言っていたクラスメートも皆無に等しかったし、
ましてやフランシス・レイやピエール・バルーの音楽を知っていた同級生は全くいなかったので、
映画や音楽の趣味に関しては相当肩身の狭い思いをしておりました。
が、大人になってこのようにご本人に自分の思いの丈を伝える機会に恵まれたことで、
自分の映画や音楽への飽くなき探究心も決して無駄ではなかったと実感出来て、
何だか救われたような気分になったのでした。
それゆえに今回のバルー氏の訃報は、
自分を形成する大事な部品のひとつが欠けてしまったような気持ちになるのですが、
『男と女』という作品とバルー氏の音楽は、
これからも特別な作品として自分の心の中に在り続けるのだろうと思います。
R.I.P.
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