先日アカデミー賞の各種ノミネート作品/人物が発表になりましたが、
去年とはガラッと変わった印象ですねー。
ワタクシは映画音楽ライターですので、
音楽部門がどう変わったかということが最大の関心事なわけでして。
先頃受賞結果が出たゴールデン・グローブ賞のノミネート作品もリストアップしつつ、
いろいろと検証していこうかなと思います。
まずゴールデン・グローブ賞の音楽賞ノミネートは以下の通り。
ニコラス・ブリテル/『ムーンライト』
ジャスティン・ハーウィッツ/『ラ・ラ・ランド』
ヨハン・ヨハンソン/『メッセージ』
ダスティン・オハロラン and ハウシュカ/『LION 25年目のただいま』
ハンス・ジマー、ファレル・ウィリアムス、ベンジャミン・ウォルフィッシュ/『Hidden Figures』
※受賞したのはジャスティン・ハーウィッツでした。
次にアカデミー賞の最優秀作曲賞ノミネートはこうなりました。
ニコラス・ブリテル/『ムーンライト』
ジャスティン・ハーウィッツ/『ラ・ラ・ランド』
ミカ・レヴィ/『ジャッキー/ファースト・レディー 最後の使命』
ダスティン・オハロラン and ハウシュカ/『LION 25年目のただいま』
トーマス・ニューマン/『パッセンジャー』
まず今回のアカデミー賞作曲賞ノミネートで「おや?」と思ったのが、
毎年”レジェンド枠”でノミネートされていたジョン・ウィリアムズが候補から外れたこと。
やはり『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』(16)では分が悪かったか。
(音楽は素晴らしかったけど、映画の出来が若干ビミョーだったからなぁ…)
そしてヨハンソンの『メッセージ』が候補から外れて、
ミカ・レヴィの『ジャッキー/ファースト・レディー 最後の使命』が入ってきたこと。
ヨハンソンは『博士と彼女のセオリー』と『ボーダーライン』で連続してオスカー候補になっていたから、
今回もノミネートされると思ったんですけどねー。
『Hidden Figures』は作曲家の名前が3人クレジットされているので、
アカデミー賞の候補になるのはちょっと難しいだろうと思ったのでこれは想定内として、
その代わりにトーマス・ニューマンの『パッセンジャー』がノミネートされたのはちょっとしたサプライズでした。
ワタクシはこの枠に『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のレスリー・バーバーか、
『Nocturnal Animals』のアベル・コジェニオウスキが入ってくると予想してたので…。
「映画音楽と言えばウィリアムズ、ゴールドスミス、モリコーネ。新しいアーティストの作品はほとんど聴かん」という古株のサントラ・ファンからすると、
「この人たちの名前、聞いたことないぞ!どういう人なんだ?」という顔ぶれかもしれませんが、
ワタクシのような新しい作曲家さんが大好きな人間からすると、
今回は大変興味深い&面白いノミネート結果になりましたねー。
これまでアカデミー賞の作曲賞部門の傾向というと、
普遍的なオーケストラ音楽が好まれるか、
オーケストラに非西洋的な音楽の要素をミックスしたものが好まれるか、
ヨーロッパのベテラン作曲家の作品が好まれるケースが多かった気がします。
だから数年前までは、
今回のダスティン・オハロランやニコラス・ブリテルのようなポスト・クラシカル系や、
トーマス・ニューマンやミカ・レヴィ、ヨハン・ヨハンソンが作るようなアンビエント/ニューエイジ系の音楽は、
高いクオリティにもかかわらず不当に評価が低かった印象があります。
しかし『ソーシャル・ネットワーク』でトレント・レズナーとアッティカス・ロスが作曲賞を受賞したあたりから、
選考側の音楽の好みも微妙に変わってきたのかなー、という”流れ”のようなものが見えてきました。
そして今回、その新しい”流れ”が一気にやって来たなという感じです。
まあ今回は作曲賞も歌曲賞も、
九分九厘ジャスティン・ハーウィッツの『ラ・ラ・ランド』が受賞すると思いますが、
ノミネートの過程まででも十分楽しませて頂きました。
実際、ワタクシもノミネート作品のサントラ盤を買い漁って聴いておりますが、
どれも本当にクオリティの高い素晴らしい音楽なんですよ。
(『ジャッキー』と『Hidden Figures』は商品の発送待ちなのでまだ聴けず)
特に『メッセージ』と『パッセンジャー』は、
SF映画音楽の新たな地平を切り開く傑作スコアではないかと思っております。
今回のノミネート結果で、
「新しい映画音楽家の作品はあまり興味ない」というリスナーの方が、
彼らの作品に興味を持って頂けると嬉しいな、と思います。