「ニコラス・ケイジの不自然な髪型が気になって、映画に集中出来ない」など、本筋と
あまり関係のない感想が聞こえてくる『バンコック・デンジャラス』(08)を日曜に鑑賞。
(確かに『ダ・ヴィンチ・コード』(06)のトム・ハンクスみたいな不自然な髪型でしたが・・・ )
オキサイド・パン&ダニー・パン監督のタイ映画『レイン』(00)のセルフ・リメイクなのですが、
やはりというか何というか、かなりキャラ設定をいじってます。
オリジナル版の主人公は耳の聞こえない青年コンでしたが、リメイク版の主役は彼を
プロの殺し屋に鍛え上げるジョー(ニコラス・ケイジ)の方です。で、コンの「生まれつき
耳が聞こえない」という設定は薬局勤務の女性フォン(チャーリー・ヤン)に転用され、
フォンと恋に落ちるのはコンではなくジョーになってます(ちなみにリメイク版のコンは
クラブダンサーのオームというおねーちゃんに萌え萌えになります)。
ま、前評判よりはそこそこ楽しめた映画だったように思うのですが、最大の難点は
ケイジの髪型・・・ではなく、「彼が冷酷無比な殺し屋に見えない」という事ですな。
基本的にケイジは悪役を演じる時も、どこかしら茶目っ気というか愛嬌を持たせるタイプの
役者なので、暗殺者を演じるにはどうも人間味がありすぎるような気がしました。
「ケイジが演じてるキャラなら、絶対ただの冷徹な殺し屋じゃないよねー」という先入観を
持って映画を観てしまうというか。その辺がちょっと緊張感に欠けるかなぁ、と思いました。
『ディア・ハンター』(78)とか『デッド・ゾーン』(83)の頃のクリストファーウォーケンとか、
『エンゼル・ハート』(87)の頃のミッキー・ロークあたりだと、こういう役がハマるのかな。
やっぱり暗殺成功率99%の殺し屋を演じるなら、もっとニヒルな感じでないと。
フォンの前でタイの激辛料理を食って悶絶した時の「困り顔」が、一番ニコラス・ケイジ
らしい瞬間だったような気がします(笑)。殺し屋としてこれはどうかと思うなぁ。
ただ、あの切ないラストで映画がスパッと終わるのは良かったです。もしこれがブラッカイマー
映画だったら、ジョーの「あの行動」の後に「コンとオームの結婚式」とか「フォンのその後」
みたいな余計な映像を足して、エンドタイトルでベタな主題歌(もちろんバラード)を流して
映画の余韻を台無しにするような気がするので・・・。
本作の音楽は、超売れっ子作曲家のブライアン・タイラーが担当しています。この方、
以前は割といろんなジャンルの映画の音楽を手掛けていたように思うのですが、最近は
『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』(06)、『イーグル・アイ』(08)、『ランボー 最後の
戦場』(08)とか、アクション映画の仕事が続いている様子。
果たして今回の音楽はというと、ほぼ上記作品と同じ感じ。オーケストラに打ち込みと
ナマの打楽器のリズムを組み合わせた、「燃えるアクション・スコア」を鳴らしています。
タイラー自身も自らオーケストラを指揮している他、パーカッション、ギター、ピアノ、
数種類の弦楽器を演奏してます。
ま、どの楽団が演奏してもあんまり変わらない感じのサウンドかな、と思うのですが、
演奏はこだわりのプラハ交響楽団。なぜにプラハ・フィル?そういえば映画の冒頭で
ジョーがプラハで仕事していたけど、それが理由じゃないよなぁ。
何はともあれ、音楽はよい感じです。ジョーの暗殺ミッション時に流れる「Assassin」は
オーケストラのキレのある演奏と強烈なビートがなかなかアツいし、後の悲恋を予感
させる「Fon’s Theme」の哀愁のメロディーは男泣き必至。
一部で「鳴らしすぎ」とか「騒々しい」と評される最近のタイラーですが、このテのB級
(準A級)アクション映画は、これぐらい派手に鳴らしてくれないと逆に物足りませんって。
サントラ盤は輸入盤で入手可能。スコアが78分弱収録されているので、CDのお値段
から考えるとかなりお得な気がします。