遅ればせながら、
先日『ゴースト・イン・ザ・シェル』(17)を観てきました。
ワタクシ『攻殻機動隊』は95年の劇場映画と『イノセンス』(04)、
テレビシリーズの『STAND ALONE COMPLEX』を鑑賞済で、
原作マンガを途中で挫折して、
『ARIZE』は観ていないという程度の攻殻フォロワーですが、
そのレベルのワタクシが今回の実写版を観た印象だと、
「様々な手法で表現できる壮大な物語のひとつの解釈」としては、
実写版のストーリーもアリではないかという感じです。
欲を言えば、イシカワのネットに潜入しての情報収集シーンをもっと観たかったなと思いましたが。
ワタクシの場合、今回の実写版『攻殻』最大の関心は音楽でございましたので、
ここでは音楽について思ったことをあれこれ書かせて頂きます。
音楽を手掛けたのはクリント・マンセルとローン・バルフェの二人。
当初はマンセル単独名義だったはずなのですが、
後になってバルフェの名前が併記されるようになりました。
(併記だから追加音楽という感じでもなさそう)
当初はLakeshore Recordsからサントラ盤がリリースされる予定だったものの、
マンセル単独ではなくなったことで音楽の権利関係がややこしくなったのか、
音楽の一部差し替えがあってアーティスト側(=マンセル側)がサントラリリースに待ったをかけたのか、
外野の人間には事情がよく分かりませんが、
気がついたら発売中止になってしまいました。
いい感じのサウンドだったので実に勿体ないですね…。
今回の『ゴースト・イン・ザ・シェル』の音楽は、
アニメ版『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の川井憲次氏の音楽リスペクトなのか、
抑制されたトーンのアンビエント/エレクトロニカ系スコアだったように思います。
アクション大作のようなエピック系の大仰な音楽ではなかったので、
『攻殻』の世界観になかなか合っているサウンドだったのではないかと。
で、どの曲がマンセルの担当で、
どの曲がバルフェの担当だったのかということになるわけですが、
エンドクレジットを確認したところ、
音楽部門は「CLINT MANSELL SESSION」と「LORNE BALFE SESSION」が分かれて表記されていて、
確かバルフェの方に「Japanese Choir Counducted by (arranged byだったかもしれない)」という記述があったので、
日本語コーラスを使った曲はバルフェの担当ということになるのではないかと。
(マンセルの方にはJapanese Choir関連の表記はなかったと思う)
日本語コーラスといっても、
エンドクレジット曲は川井憲次氏のUTAI IV Reawakening (Steve Aoki Remix)なのでこれは別ですが。
思えば『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の海外バージョンでは、
エンドクレジット曲が「謡 III」からパッセンジャーズ(ブライアン・イーノとU2のユニット)の「ONE MINUTE WARNING」に差し替えられたのに、
今回の実写版『攻殻』ではちゃんと川井氏の曲を使ってくれるとは有難いではありませんか。
マンセルとバルフェが完全分業制でスコアを作曲してはいるものの、
スコア全体としては非常にまとまりがあってチグハグな印象は全くなかったです。
マンセルがアンビエント/エレクトロニカ系サウンドを得意としているのは周知の事実ですが、
バルフェも『ロンドン・ヒート』(12)でアンビエント系アクション・スコアを鳴らしていたので、
『ゴースト・イン・ザ・シェル』のような”インテリジェンスを感じさせるサウンド”にも対応出来る人なのですね。
つくづくサントラ盤が発売中止になったのが残念です。
それにしても今回の『ゴースト・イン・ザ・シェル』、
実写化されたのが今の時期で本当によかったと思います。
もし『マトリックス』がヒットしていた頃に実写化していたら、
音楽もテクノやインダストリアル・ロック系の曲をコンパイルした、
アーティストタイアップ色の強い薄っぺらなサントラになっていただろうし、
オリジナル・スコアもフツーのSFアクション音楽になっていたような気がするのです。
(少なくとも、今回マンセルとバルフェが書き下ろしたようなサウンドにはならなかったと思う)
音楽担当を巡るちょっとしたゴタゴタや、
サントラ発売中止などもございましたが、
ワタクシ的には電子音率高めなマンセルの音楽が久々に聴けて嬉しかったし、
バルフェの音楽も手堅い作りだったので、
楽しんで本編を鑑賞することが出来たのでありました。
マンセルのエレクトロニカ系スコアではこのあたりが結構好きです。