先日のブログでチラッと触れた、映画『シングルス』(92)の公開25周年記念サントラ盤が届きました。
CD2枚組、通常サイズより気持ち大きめの紙ジャケ(光沢なし)。
ディスク1は当時リリースされたサントラそのままの内容で、ディスク2に未発表音源やデモ音源、ライブ音源などを収録。
ブックレットは20ページで、キャメロン・クロウ監督のライナーノーツと全曲解説つき。貴重な写真もいろいろ収めてあります。
SINGLES (SOUNDTRACK / 25th ANNIVERSARY DELUXE EDITION) – amazon
ワタクシが本格的に映画を見始めたのが90年代に入ってからなので、『シングルス』は青春時代の思い出の映画のひとつなのです。個人的にキャメロン・クロウ監督作の最高傑作は『シングルス』ではないかと思っております。
『ザ・エージェント』(96)”以前”と”以降”でクロウ監督の作風が微妙に変わったような気がするのですが、ワタクシは断然『ザ・エージェント』”以前”のクロウ作品推しです。具体的にタイトルを挙げると『シングルス』、『セイ・エニシング』(89)、『初体験/リッジモント・ハイ』(82:原案・脚本)の3本ですね。
さて今回の『シングルス』デラックス版サントラのセールスポイントですが、まずシチズン・ディックの”Touch Me, I’m Dick”が収録されていること。
シチズン・ディックというのは映画を観た方には説明不要ですが、劇中マット・ディロン扮するミュージシャン、クリスのバンド。バンドメンバーにパール・ジャムのエディ・ヴェダーとジェフ・アメン、ストーン・ゴサードがいるという「ほぼパール・ジャム」なバンドなのですが、劇中では全く売れていないという設定。
で、映画の中でシチズン・ディックのアルバムが音楽誌でコキ下ろされるというシーンがあるのですが、今回のアルバムではそのレコード評を完全収録。
「またもやこれか、格好だけのクリスの歌」
「彼は他の街に行って葬られるべき」
「メンバーのストーン、ジェフ、エディは健闘している」
…というような字幕が出ていましたが、レコード評の原文を見たら本当にそう書いてありました。
…というか、架空のレコード評にもかかわらず、すごく本格的な音楽評が書いてあってついじっくり読んでしまいました。当時からそう思っていましたが、この映画は細部までものすごく作り込んでありますね。
あとはアリス・イン・チェインズの”Would?”、”It Ain’t Like That”、サウンドガーデンの”Birth Ritual”のライブ音源が聴けるのが嬉しい。
劇中で彼らのライブシーンが写ってましたが、あの場面の曲が今回のアルバムでバッチリ聴けるわけです。”Would?”と”Birth Ritual”は通常盤にはスタジオ録音版が入ってましたが、”It Ain’t Like That”はライブ音源もスタジオ録音版も未収録でした。
そしてクリス・コーネルの”Nowhere But You”、”Spoon Man”、”Flutter Girl”のデモ音源バージョン。
これは「自分のバンドを失ったクリスが路上で売っていたデモテープ」という設定で作ったものらしい(そのシーンは撮影したにもかかわらず最終的にはカットされた模様)。さっきも書きましたが、小道具をここまで作り込むとは…。
映画音楽ライター的には、ポール・ウェスターバーグ(元リプレイスメンツ)のスコアが聴けるのが嬉しかったりするのですが、今の今までウェスターバーグの書き下ろしたオリジナル・スコアだと思っていた曲が、実はクリス・コーネルの作曲/演奏したスコアだったというのは25年目の新発見でした(Score Piece #4という曲)。
この曲がちょっと愛らしさを感じさせる素朴なギターロック・スコアがなかなかよいのです。
前述の貴重なデモ・バージョンの音源も含めて、コーネルの置き土産を受け取ったような、寂しさと喜びが混ざった不思議な気分になりましたね…。
「映画のサントラ」という枠を超えた、あの時代のグランジ・ロックの熱狂をディスク2枚にまとめた資料的価値の高いアルバムではないかと思います。
Daryl Hall & John Oates 関連商品 好評発売中!
■Eliot Lewis / 6 & One
レーベルショップ
iTunes
■Eliot Lewis / Enjoy The Ride+Master Plan
レーベルショップ
Enjoy The Ride (iTunes)
■Charlie DeChant / Like the Weather
レーベルショップ
iTunes