ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、ノオミ・ラパス七変化(正確には七変化+1の八変化か?)ディストピアSFスリラー、『セブン・シスターズ』(16)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。
こちらの作品は本国(というかアメリカ)ではダウンロード版のみのリリースで、ワタクシがお仕事の依頼を頂いた時点では、日本での劇場公開も新宿シネマカリテしか決まっていなかったのですね。
なので「ランブリングさんもなかなかチャレンジ精神旺盛な作品リリースをなさるんだなぁ」と思った次第でして。
で、いざ内覧試写で映画を拝見させて頂いたら、「ノオミ・ラパスは残機7で超管理社会を生き抜けるか?」という一種のアクションゲーム的な世界観がツボにハマりまして、予想以上に面白い作品でした。
さらに音楽もかなり良く出来ていて、「あー、このサントラの仕事に当たってよかったなぁぁぁ」と嬉しくなってしまったのでした。
オリジナル・スコアの作曲はノルウェー出身のクリスチャン・ウィーバ。本作と同じトミー・ウィルコラが監督した雪山ゾンビホラー映画『処刑山 デッド・スノウ』(09)の音楽を担当していたりもするけれど、基本的に日本ではほぼ無名の作曲家。
名字(Wibe)の読み方も「ワイブ」だったり「ウィーベ」だったり「ウィーバ」だったり統一されていないのですが、プレス資料の表記が「ウィーバ」だったのでそれに倣いました。
何しろ資料に乏しい作曲家さんだったので、ワタクシ締切スケジュールにあまり余裕がなかったにもかかわらず、映画音楽ライター根性を出してウィーバさん本人にコンタクトを試みたところ、「日本では(僕のサントラが)CDで出るの? そりゃいいや!何でも聞いてくれよ!」といった旨のお返事を頂きまして、オフィシャルなプロフィール資料を送ってもらったり、『セブン・シスターズ』の音楽製作についてかなり詳しく話を聞かせてもらうことに成功しました。
ウィーバさんの資料に目を通したり、彼からいろいろ話を聞いたりしているうちに、「なるほど、こういう方なのね」とか、「ここの音楽はこういう意図で作られていたんだなぁ」とか、とても勉強になりました。
…というわけで詳しくは『セブン・シスターズ』サントラ盤をご購入頂いて、音楽に耳を傾けながら拙稿に目を通して頂きたいと思うのですが、ここではライナーノーツとも少し違った視点から、クリスチャン・ウィーバと『セブン・シスターズ』の音楽をざっくりご紹介したいと思います。
この方、映画音楽家が本職という感じではなくて、もともとは「アニマル・アルファ」というノルウェーのハードロックバンドのリーダー兼ギタリストでした。
知る人ぞ知るマニアックなバンドではあるのですが、映画『ヘンゼル&グレーテル』(13)をご覧になった方なら、エンドタイトルで流れたパンキッシュなハードロック曲を覚えていらっしゃると思います。
あの曲は”Bundy”というのですが、あれを演奏していたのがアニマル・アルファです。
『ヘンゼル&グレーテル』も監督はトミー・ウィルコラだったので、ウィルコラとウィーバは『処刑山』から『セブン・シスターズ』までずっとコラボが続いているということになりますな。
『ヘンゼル&グレーテル』のスコア作曲はアトリ・オーヴァーソンでしたが、エンドクレジット曲でちゃんと”盟友”ウィーバのバンドの曲を使ってあげたという。
『セブン・シスターズ』は超大作規模の予算ではなかったと思うのですが、それでもちゃんとスロヴァキア・ナショナル交響楽団とフィルハーモニア管弦楽団の生オーケストラを使っているし、ギターやシンセサイザー、打ち込みのリズムを駆使したキレのあるサウンドを聴かせてくれています。
注目すべき点はアナログシンセサイザーの名機「Oberheim Matrix-12」を使っていることですね。ヴィンテージシンセの厚みのある音がスコアのいいアクセントになってます。
メインテーマのメロディーもしっかりしてます。2度3度くらいサントラを聴けば、「あ、このメロディーがそう(メインテーマ)なのか」とお分かり頂けると思います。悲壮感を漂わせたメロディーでなかなかいいですよ。
『セブン・シスターズ』オリジナル・サウンドトラック
音楽:クリスチャン・ウィーバ
レーベル:Rambling RECORDS
品番:RBCP-3214
発売日:2017/10/11
定価:2,400円+税