ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、『バリー・シール アメリカをはめた男』(17)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。
先日劇場でパンフレットを買ってきたのですが、これだけ劇中で懐メロをガンガンかけていたのに音楽についてコラムでほとんど触れられていなかったので、ワタクシがこの場を借りて全曲ざっくりご紹介させて頂こうかなと。
ちなみに個人的な推し曲については前回のブログでご紹介したので、こちらも併せてご覧頂ければと思います。
なおamazonのカスタマーレビューなどでツッこまれる前に補足させて頂きますが、トーキング・ヘッズの”Slippery People”とジョージ・ハリスンの”Wah-Wah”はアルバム未収録なので、この2つの曲については何らかの手段を用いて補完して頂ければと思います。
では前回のおさらいということで、まずは収録曲から。
1. A Fifth of Beethoven / Walter Murphy & The Big Apple Band
2. One Way Out / The Allman Brothers Band
3. Blue Bayou / Linda Ronstadt
4. Seguro Lo Hara Otro / John Ever Villa
5. Black Widow Blues / Townes Van Zandt
6. Hooked On Classics (Part 1 & 2) / Louis Clark & The Royal Philharmonic Orchestra
7. I Don’t Need You / The Troyes
8. Loud N’ Restless / Loosely Tight
9. What Makes A Good Man? / The Heavy
10. What Now? / Christophe Beck (Score)
11. Sandanistas y Reagan / Christophe Beck (Score)
12. Heading to the States / Christophe Beck (Score)
“A Fifth of Beethoven”(運命’76)は映画のオープニングを飾った曲。
交響曲第五番「運命」のディスコバージョンというだけでも十分キャラが立ってるのに、「ユニバーサルスタジオのロゴ音楽を遮って曲が流れ出す」という最高にインパクトのある使われ方をしてました。
ちなみに作曲者のウォルター・マーフィーは、『サタデー・ナイト・フィーバー』(77)のサントラ盤ライナーノーツでは完全に一発屋扱いされてました。
オールマン・ブラザーズ・バンドの”One Way Out”は、CIAのシェイファーにスカウトされたバリー・シールの偵察ミッションの時に流れていた曲。ツインギターとツインドラムが繰り出すグルーヴがアツい名曲ですが、劇中ではそのまま曲を流すのではなく、ギターリフ部分を強調した編集が加えられていた模様。
リンダ・ロンシュタットのBlue Bayouは、バリーがオチョア邸に連れて行かれた時にかかっていた曲。
この泣けるバラードをバックに、バリーに麻薬の運び屋ミッションを強要するという曲とのギャップが激しすぎる意地悪な笑いを提供しております。
John Ever VillaのSeguro Lo Hara Otroは、密輸ミッション大成功でお祝いムードのオチョア邸でかかっていた曲。John Ever Villaはコロンビアのインディー・バンドです。
この時代(70年代後半)だったらデオダードとかモンゴ・サンタマリアとかのメジャーな曲を使ってもよさそうな感じですが、まあ予算の問題とかライセンスの事情とかいろいろあるのでしょう。
あるいはマイナーでもいいから”コロンビアのバンド”にこだわりたかったのか。
タウンズ・ヴァン・ザントは前回のブログでご紹介したとおり。シール一家がルイジアナ州バトンルージュからアーカンソー州ミーナに引っ越す道中でこの曲が流れてました。
カントリー系ミュージシャンの曲を象徴的に流すことによって、「シール一家は田舎町に引っ越してきました」的な状況を説明する音楽演出と言えるでしょう。
ルイス・クラークのHooked On Classics (Part 1 & 2)は、密輸ビジネスが大成功で我が世の春を満喫中のバリーのモンタージュ映像のシーンで使われてました。
超有名クラシック曲のフレーズが次から次へと登場するアップテンポで祝祭性にあふれた曲なので、こういう画面の切り替わりが早いモンタージュ映像とも相性抜群でした。
個人的にはこういうアレンジのクラシックを聴くと『パロディウス』シリーズの音楽を思い浮かべてしまいます。
なぜこの曲だけパンフで紹介されたのかなと思ったのですが、多分「史上最も売れたクラシックのアルバム」というギネス記録があるからではないかと。
ザ・トロイズのI Don’t Need Youはバリーのダメ義弟JBが格納庫でダラダラ仕事をしている時にかかっていた曲。問題児のJBの存在自体がバリーからすれば「I Don’t Need You」という暗示なのかもしれません。
で、そのJB役のケイレブ・ランドリー・ジョーンズは役作りで80年代のロックを聴きまくって、アリス・クーパーやアンドリュー・ダイス・クレイを参考にしたそうですが、そんな彼が劇中の車の中で聴いていたのが、アリゾナ出身のB級ハードロック・バンド、ルーズリー・タイトの曲。
劇中で聴いていたのは”Renegade”という曲だったのですが、なぜかサントラ盤に収録されたのは”Loud and Restless”という別の曲。ポスプロの段階で曲を差し替えたのか、あるいは権利関係の事情で”Rnegede”をサントラに入れられなかったのかもしれません。
ザ・ヘヴィーの”What Makes A Good Man?”は前回ブログでご紹介したとおり。
この曲についてはあんまり書きすぎるとネタバレになってしまうので割愛。
曲タイトルや歌詞の内容も含めて、いろいろ考えさせられる曲です。
そして今回のクリストフ・ベックのスコアは完全にギターロック・インスト。
劇中では1分~2分くらいのスコアがもっと使われていましたが、その中からインパクトのあるスコアを3曲セレクトした感じ。12曲目のHeading To The Statesのメロディが本作のメインテーマにあたるのかなと思います。
未収録曲もいくつかありますが、印象的な場面で使われた曲や、映画の中で長めの時間流れた曲はバッチリ押さえてあるので、極めて満足度の高いコンピレーション盤ではないかと思います。
『バリー・シール アメリカをはめた男』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ヴァリアス(クリストフ・ベックほか)
レーベル:Rambling RECORDS
品番:RBCP-3219
発売日:2017/10/18
定価:2,400円+税
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