『デッドプール2』(18)は前作に引き続き日本盤サントラがリリースされると聞き、
「デップー続編の音楽ってタイラー・ベイツさんでしょ?あーあ、ライナーノーツを書きたかったなぁ…」と思ったのですが、
よく調べてみたら日本盤がリリースになるのはソング・コンピレーション盤のほうで、スコア盤は輸入盤のみらしい、ということが分かりました。
(前作は1枚のアルバムにスコアと歌モノの両方が収録されてたのですが)
ライナーノーツが書けなかったというよりも、
そもそもスコア盤が日本盤として出なかったわけで、
何だかホッとしたような、
でもスコア盤の不遇な扱いが悲しいような、
複雑な心境になってしまいました。
もっとも、ワタクシはベイツさんの『リミット・オブ・アサシン』(17)のサントラ盤ライナーノーツを書かせて頂いたので、まぁいいかという感じではありますが。
さて『デップー2』のサントラ盤に話を戻しますと、
スコア盤のジャケ写を見たら、
インスト曲だけのはずなのに「PARENTAL ADVISORY: EXPLICIT CONTENT」の警告マークが印刷されてまして、
「スコア盤にも何かヤバい歌詞のヒップホップとかロックの歌モノが入ってるのかな?」と思ったのですが、そうじゃなかった。
では何でそんな事態になったのか?
まず曲タイトルが下品。
HOLY S*** BALLS
B****
D***
MOTHER F*****
…という伏せ字の曲タイトルが5曲もある始末。
さすがデップー。
『デップー2』のスコアはフルオケ+混声合唱+バンドサウンド(キーボード/ギター/ベース/ドラムス/パーカッション)という編成なのですが、問題は2番目の混声合唱。
“HOLLY S*** BALLS”とか”MOTHER F*****”とかヤバいワードがバンバン登場する歌詞を朗々と歌って下さってます。
しかも英語のリスニングが苦手な人でもバッチリ聞き取れるぐらいクリアに「ホーリー・シッボー、ホーリー・シッボー」「マザーファ×カーーー!」と熱唱している。
さすがデップー(二度目)。
楽譜を渡された時の合唱隊の皆さんのリアクションが見てみたかった。
ネットでちょっとばかり情報を漁ってみたところ、
当初『デップー2』のコーラスはフェイク・ラテン語(偽ラテン語)で歌っていたようなのですが、
デヴィッド・リーチ監督の発案で「デップーがこういう感じのキャラだし、いっちょオゲレツにやってみるか」という感じでこうなったらしい。
で、いざやってみたら「HOLY S*** BALLS」の語感がコーラス的にとてもいいということで、ベイツさんもご満悦だった模様。
インタビュアーに「スコア盤で初めてペアレンタルなんちゃら認定を食らいましたが、ご感想は?」と聞かれて、
「狙い通りだぜ!(ニッコリ)」みたいな返答をしていて失笑。
おかしいですよベイツさん!(褒め言葉)
『デッドプール』は1作目のトム・ホルケンボルフ(ジャンキーXL)の音楽がかなり人気があったにもかかわらず、
監督のティム・ミラーが続編に登板しないことになって、
ホルケンボルフも「ティムが監督しないなら自分も音楽はやらない」ということになって、
監督が『ジョン・ウィック』(14)、『アトミック・ブロンド』(17)のデヴィッド・リーチに決まったら、
これらの作品でタッグを組んだベイツさんが参加したという流れだったわけですが、
ホルケンボルフもベイツもそれぞれ監督に”仁義”を通したということになりますね。
ベイツにとっては相当ハードルの高い仕事だったと思いますが、
前述のキワドい混声合唱のアイデアなど、なかなか健闘しているのではないかと。
デップーが”Xフォース”なるチームを結成するらしいので、
思ったよりも正統派のヒロイックなメロディがあるのが前作との大きな違いかなと(まぁデップーはそういうヒロイックなテーマ曲すら笑いのネタに昇華していそうな気がするのですが)。
タイラー・ベイツ版”X-メンのテーマ”なのだと思ってスコア盤を聴くと、それはそれでなかなか感慨深い。
あ、全体的なサウンドはいつものベイツさんのザクザクした感じの音楽なので、
ベイツさんらしさは出ていると思います。
デップーを愛してやまないリスナーはソング盤もスコア盤も両方”買い”ですね。
朗々と「マザーファ×カーーー!」と歌う曲、楽しいですよ。