『イコライザー2』の音楽でも”マッコール 仕置のテーマ”は健在でした。

ワタクシ『イコライザー』(14)は脇役の顔を全員覚えるぐらい本編を観たし、
ライナーノーツ執筆の仕事の関係上、
サントラ盤も何十回と聴きまくったこともあり、
この映画にとても思い入れがありまして。

あれだけヒットしたらそりゃ続編も作られるだろうけど、
果たしてその出来栄えはどんなものかな…と、
ワタクシ『イコライザー2』(18)は期待半分・不安半分で観に行きました。
“1作目超え”の続編というものはなかなかありませんからね。。

ペドロ・パスカルの使い方が『キングスマン:ゴールデン・サークル』(17)とほとんど同じでヒネリがないのを除けば、なかなかしっかりした作りの続編になっていて、今回もバッチリ楽しませて頂きました。
「スーザン殺しの黒幕が実は夫でした」みたいな無茶苦茶な展開にならなくて本当によかった(ビル・プルマンが好きなので…)。

 

いきなりトルコから映画が始まった時は、「あー、”今度は世界が舞台だ!”的な続編あるあるなのかなぁ」と不安になりましたが、
マッコールの”出張仕置”が終わったら即アメリカが部隊に戻ってひと安心。

マッコールの病的なまでに几帳面な所作
仕置タイムアタック
身近にある日用品を武器に使用
読書好き
無償の仕置活動(暴力を使わない人助けもする)
適度に距離を置いた市井の人々とのふれあい
進路に悩む若者を説教

…という前作で観客の心を掴んだ演出を全部見せてくれたのはポイント高い。
作り手側が「1作目で何がウケたか」をきちんと理解しているということですね。
「マッコール=仕事人」という表現をよく見かけますが、
仕事人は”仕事料(いわゆるギャラ)”が発生しないとなかなか動き出さないので、
自ら進んで(たぶん必要経費も自腹)仕置を行うマッコールとはちょっと違う。
そういう意味ではマッコールの方が正義の味方指数が高いですね。

メリッサ・レオが『エンド・オブ・ホワイトハウス』(13)に続いてまたしても悪党にボッコボコにされていて、
「フークア監督、メリッサ・レオが大好きなんだなぁ。役者として全幅の信頼を寄せているんだなぁ」と思ってしまいました。

 

『イコライザー2』は音楽も前作と同じでハリー・グレッグソン=ウィリアムズ。
なのでメインテーマ(「マッコールのテーマ」)が引き続き使用されていました。
続編で作曲家が代わったりするとメインテーマのメロディもガラッと変わってしまったりするので、作曲家が同じでテーマ曲が一貫しているのは非常にありがたい。

ところが前作のサントラは収録時間が52分くらいあったのに、
今回のサントラ盤は収録時間が42分に減っていて、
その点だけ購入前に若干不安になりまして。

で、まぁそれでもワタクシHGWが大好きなのでサントラ盤を購入したわけですが、
サウンド的にも前作以上にシブい仕上がりになってるなーというのが第一印象でした。

…というのも、前作は悪役のテディ(マートン・ソーカス)にも印象的なテーマ曲があって、
「マッコールのテーマ」と「テディのテーマ」のふたつのメロディがスコアの中で存在感を見せていたのですが、
今回は「スーザン殺しの黒幕は誰だ?」という話なので、
明確な「悪役のテーマ」が見えてこないんですね。

その代わりに、妻だけでなく親友のスーザンすらも失ってしまったマッコールの「喪失のテーマ」に相当する哀愁のメロディがスコアの中で印象的に響いている。
1作目の時から「音楽を作り込みすぎない、感情を不必要にあおらない」というルールを自らに課して曲作りを行っていたHGWですが、
今回はさらに抑えたトーンのスコアに仕上がったなぁという感じです。

よく考えれば、マッコールの”仕置”は雄叫びを上げながら銃をブッ放したり殴り合ったりするタイプではなくて、
冷静かつムダのない動きで相手を瞬殺するスタイルなので、
アクションシーンの音楽も瞬間的にアガってすぐに冷静さを取り戻すような、
クールで切れ味鋭いサウンドじゃないといけない。
それで生まれたのが、「マッコールのテーマ」のバリエーションである「マッコール 仕置のテーマ」(仮称)だったのではないかと。

その「仕置のテーマ」も映画の中で乱発しないのがニクい。
『イコライザー2』ではオープニングの仕置と、
クライマックスのファイトシーンの2回しか使われなかったんじゃないですかね。
街の小悪党どもは「仕置のテーマ」を使う価値もない小物ということなんでしょうか。カッコいいぞマッコール!
ここぞという時にだけ流れるからこそ、「マッコール 仕置のテーマ」は観客に強烈なインパクトを与えるわけで。

オーケストレーションは「ストリングス+シンセ」をベースに、
HGW自ら弾くピアノとマーティン・ティルマンのエレクトリック・チェロ、
エレクトリックギター2名にチェロのソリスト2名という構成。
『フォーン・ブース』(02)とか『ナンバー23』(07)のような電子音多めの実験的なスコアですね。
音楽の方向性としては『ザ・タウン』(10)にも近いのかなー。

個人的な感想としては、
1作目のサントラの方がキャッチーな感じですね。
続編の音楽は『イコライザー』を愛してやまない人向けのコレクターズ・アイテム的な色合いが強いかなと。

 

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