「BANGER!!!」の担当の方から「『クリード』について何か音楽コラムを書いて下さい!」と言われていたので、数日前に先方へ原稿をお送りしました。
で、本日サイトにコラムがアップされました。
名曲を産み出した『ロッキー』からサウンドトラックを引き継いだのは、『ブラックパンサー』作曲家! | BANGER!!!
https://www.banger.jp/movie/3416/
『クリード』シリーズについては、以前当方のブログでもあれこれ書かせて頂きましたが、
『クリード 炎の宿敵』を観て、『クリード チャンプを継ぐ男』の音楽の構成がよく分かったという話。 https://www.marigold-mu.net/blog/archives/9673
ビル・コンティのあのメロディー、使ってます!『クリード チャンプを継ぐ男』のオリジナル・スコア https://www.marigold-mu.net/blog/archives/7385
BANGER!!!に載せて頂くからには、もっとちゃんとした文章を書かなければと思い、大幅に加筆修正というか構成を練り直させて頂きました。
ワタクシ的には「ロッキーのテーマ」「ロードワーク」のメロディもさることながら、
ビル・コンティが作曲した「エイドリアンの愛のテーマ」の使い方が心の琴線に触れたので、その部分についての記述が多めになったます。
『クリード』シリーズの音楽は『ブラックパンサー』(18)で大ブレイクしたルドウィグ・ゴランソンが作曲していますが、
ビル・コンティの『ロッキー』(76)シリーズの音楽を研究したということで、随所にその研究の跡が垣間見える楽曲構成になっています。
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件の「エイドリアンの愛のテーマ」にしても、
1作目のサントラに収録された「First Date」を聴いてみると、
「エイドリアンの愛のテーマ」のピアノ主題から「ロッキーのテーマ」のピアノバージョンへと移行する構成なのですが、
これが『クリード チャンプを継ぐ男』になると、
「ビアンカの愛のテーマ」(ギターのアルペジオとハミングの部分)から「エイドリアンの愛のテーマ」、その後「アドニスのテーマ」を経て「ロッキーのテーマ」のピアノバージョンへと展開していく構成になっていて、きちんとコンティのマナーを踏襲していることが分かる。
で、この曲が流れるのは『クリード チャンプを継ぐ男』のどんな場面だったかというと、
1. アドニスとビアンカの初デート at チーズステーキのお店(ここで「ビアンカの愛のテーマ」)
2. エイドリアンとポーリーの眠る墓を訪ねるロッキー(ここから「エイドリアンの愛のテーマ」)
3. エイドリアンに近況報告をしながら、新聞を広げて「さてと、世の中では何が起きてるんだ?」と物思いにふけった時、アドニスのことを思い出すロッキー(ここで「アドニスのテーマ」)
4. 久々に「マイティ・ミッキーのボクシングジム」へ足を運ぶロッキー(ここで「ロッキーのテーマ」のピアノバージョン)
…という流れになっておりまして、
音楽の展開とドラマの展開が完璧にシンクロしているわけです。
時間にして2分30秒くらいの曲ですが、
このような演出も相まってものすごくドラマティックなスコアになっているのではないかと。
そして『クリード』のスコアで個人的にここがすごいなと思ったのは、ヒップホップ/R&Bからオーケストラ音楽への移行が何の違和感もなくシームレスに行われることでした。音楽の流れが自然なんですよねー。
ゴランソンはチャイルディッシュ・ガンビーノ(ドナルド・グローヴァー)やチャンス・ザ・ラッパー、ハイムのプロデュースでも高く評価されている人だから、
様々なジャンルを自家薬籠中の物にして、映画音楽にも活用できる人なのでしょう。
そういえばロッキングオンのブルーノ・マーズのインタビューで、
「”ブラック・ミュージック”っていうのは、ロック、ジャズ、R&B、レゲエ、ファンク、ドゥーワップ、ヒップホップ、それにモータウンのことを指してるんだってことを理解しなきゃだめだ」
…と語っている内容のものがありましたが、
ゴランソンはそれを実践しているミュージシャン/プロデューサーと言えるのかもしれませんね。
■参考文献
ブルーノ・マーズが語るブラック・ミュージックへの熱い想い。
「大きな喜びを与え、人生のサントラになってくれた」-rockinon.com|
https://rockinon.com/news/detail/174931
今回の『クリード 炎の宿敵』を観て、
1. 「Gonna Fly Now」と「Going The Distance」はクライマックスで使う。
2. ロッキーがエイドリアンの墓を訪ねるシーンで「エイドリアンの愛のテーマ」を使う。
3. ロッキーが出る限りは「ロッキーのテーマ」のフレーズは必ず使う。
…ということが分かったので、
いずれ製作されるであろう3作目でもこの音楽演出は引き継がれるのではないかと思います。
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