先日『ブラック・クランズマン』(18)を観てきました。
音楽は”A SPIKE LEE JOINT”に欠かせない作曲家/ジャズ・トランペッターのテレンス・ブランチャード。
「スパイク・リーの映画は音楽もイイ!」という話はよく聞くのですが、
まぁそれは多くの場合劇中の挿入歌のことなんですよね…。
今回のパンフもプリンスが歌うエンドクレジットソング”Mary Don’t You Weep”と、コーネリアス・ブラザーズ&シスター・ローズの”Too Late to Turn Back Now”についてはコラムで触れていたのですが、スコアについての話は全くなし。
ブランチャードは本作の音楽でアカデミー賞作曲賞にノミネートされたんですけどね。。スタッフ紹介のページでブランチャードの略歴が小さく紹介されていた程度でした。
でも劇中使用曲のリストがパンフに小さく載っていたのはナイスな心遣いと言えるかもしれません。
とはいえブランチャードのスコアは完全スルーというのは、
彼の音楽が好きな当方としてはちと寂しい。
…というわけで、ワタクシなりにあちこちで仕入れたネタや、
音楽を聴いていて気づいたことを少しばかり書いてみたいと思います。
スパイク・リーはブランチャードとの最初の頃のミーティングで、
「R&Bバンドみたいな音がほしい」とか「メロディックな要素がほしい」といったようなことをリクエストしたらしいです。
一方のブランチャードも、登場人物の立派なアフロヘアーやレザーコート、ベルボトムジーンズに身を包んだ姿を見て、この映画の音楽にはギター(エレクトリックギター)を使うべきだと提案したのだとか。
ウッドストック・フェスティバルでジミ・ヘンドリックスがアメリカ合衆国国歌を演奏したことも、本作のスコアにエレクトリックギターを使うというアイデアに影響を与えたらしい。
ジミヘンが”あの時代”に発信した”あのメッセージ”を、本作にも音楽的に反映させたということなのでしょうか。
こうしたアイデアがひとつになった結果、本作の音楽はジャズ/ソウル/R&Bの要素を盛り込んだオーケストラ・スコアになっています。
スパイク・リーが言っていた「メロディックな要素」という部分も、
「ロンのテーマ」のブルース調というか、歌謡曲風にも聞こえるメロディ(♪テーンテケテケテンテンテーンみたいな感じ)とか、メインテーマの気だるい感じのギターがなかなか印象的です。
ブラックスプロイテーション映画のスコアのようなファンク調の曲(サントラ16曲目のRon’s Searchや18曲目のHere Comes Ron)もあったりして、シリアスさと遊びの部分の絶妙なバランス感覚がさすがブランチャードといった感じ。
そりゃまあ既製曲のコンピレーションみたいな分かりやすいキャッチーさはありませんが、聴けば聴くほどじわじわと味がしみ出してくるような、何度聴いても飽きないスコアに仕上がっています。
で、ワタクシこの映画のサントラを聴いていて(&本編を観て)気になっていたことがありまして。
映画のラストの方でインパクトのあるヘヴィな曲が流れるのですが、
「コレどこかで聴いたことのある旋律だぞ?何の映画で聴いたんだっけな~」と思っていたら、
何と同じスパイク・リー+テレンス・ブランチャードの『インサイド・マン』(06)のスコア”Photo Opps”でした。。
いや~これにはちょっと意表を突かれました。
『インサイド・マン』のサントラ盤で2分くらいの長さだった曲が、今回は3分40秒くらいになっていたから、本作用に新しくレコーディングし直しているんじゃないかと思われます。
なぜこの曲を使ったのか、
この曲にどんな思いが込められているのか、
一介の映画音楽ライターのワタクシには分かりませんが、
おそらく何らかの意味があるのでしょう。
ちなみに『風と共に去りぬ』(39)のワンシーンが大写しになって始まるオープニングで流れるスティーブン・フォスターの「Old Folks at Home / 故郷の人々(別名Swanee River / スワニー河)」も、既存の音源ではなくブランチャードが新たにレコーディングしたものを使っているようです。
うーん、考えれば考えるほど、
『ブラック・クランズマン』の音楽の奥深さにハマって参りました。
さすがアカデミー賞作曲賞にノミネートされただけのことはあります。
あまり話題になってないけど、このサントラは必聴です。
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BlacKkKlansman: Terence Blanchard (TOWER RECORDS)