ヘザース / ベロニカの熱い日

数日前にeiga.comのゴシップ記事にぼーっと目を通していたら、

全てはウィノナ・ライダーの妄想?『ヘザース』(89)続編はなしと監督が明言

・・・という見出し(記事)が視界に飛び込んで参りました。

ま、映画のラストでJ.D.(クリスチャン・スレーター)は爆死しましたからね。続編を作るのは
無理だし、そもそも続編を作っちゃいけないタイプの映画だよなぁ、と思っていたので特に
驚きはしなかったのですが、マイケル・レーマン監督のコメントがちょっとイジワルな感じ。

「ウィノナが続編の話を持ち出してくるのはいつものことで、(脚本家の)ダンも僕もそれを
ジョークにしているぐらいなんだ」

・・・って、ネタにされてます。ウィノナさんカワイソすぎ(涙)。これじゃ映画の中のヘザースの
イジメと何ら変わらないなぁ。大体、レーマンだって最近ロクな映画撮ってないじゃないの。
数年前に奇行(=万引き疑惑)でキャリアにケチがついて以来、すっかり「ウィノナ=変人」
というレッテルを貼られてしまってますが、あんまりイジメちゃいけませんって。それにしても、
この調子だとウィノナさんの完全復活はまだまだ先になりそうだな・・・。

そんなワタクシは20年来のウィノナ・ライダーのファンでございます、ハイ。

ま、確かにこの方は昔から変わり者だったわけですが、80年代は「不思議ちゃん」系の
役を演じると抜群にキュートでした。『ヘザース』も80年代ファッションに身を包んだ
ウィノナさんはスーパー可愛かったし、自身の実体験をそのまま演技に転化させたような
「いじめられっ子」ベロニカ・ソーヤー役も最高にハマってました。日頃の恨み辛みを日記に
書き殴る描写とか、文系女子のダークな一面を垣間見た気がしました(笑)。

で、ベロニカに屈折した愛情(?)を抱くJ.D.役のクリスチャン・スレーターがまたいいんだな。
アナーキーで悪魔的な魅力を持つ危険な男を好演してます。

コイツがヘザースの片割れとか、ベロニカに恥をかかせたフットボール部のいけ好かない
上級生をブッ殺しちゃあ自殺に偽装するんですが、どんなにイヤな奴でも自殺(ホントは違う
わけですが)した途端、学校中が彼らを聖人君子のように扱い始める、というくだりが何とも
風刺が効いております。偽善をあざ笑う究極のブラックユーモア。これがなかなか的を射ている
から、この映画は面白い。「笑える」のではなく「興味深い」という意味での面白さなのですが。

ま、ブラックなテーマはさておき、ウィノナ・ライダーが抜群にカワイイので、それだけでも
必見の映画でしょう。

そういえば、その後スレーターは『ベリー・バッド・ウェディング』(98)で「もしもJ.D.が大人に
なったら?」みたいなキャラを演じてましたが、カルト的人気を得た『ヘザース』と違って、
こっちの映画は酷評されましたなぁ。ま、叩かれるのも無理もない内容だったわけですが。

さて『ヘザース』の音楽は、デヴィッド・ニューマンが担当しております。トーマス・ニューマンの
1歳違いの兄・・・なのですが、アカデミー賞常連の弟に比べると、どうにも作品に恵まれない
気の毒な人です。『愛に翼を』(91)とか『ブロークダウン・パレス』(99)とか、佳作も結構多いん
だけどなぁ。

『ヘザース』では、いかにも「80年代の音」といった感じのシンセ・スコアを鳴らしています。
J.D.のためのライトモチーフでハーモニカを使っているのがポイントでしょうか。チープな
シンセ・サウンドが結構聴いていてクセになり、個人的には好きな一枚です。

確か中古CD屋で偶然見つけて580円くらいで買った記憶がありますが、いい買い物でした。
(最近見かけませんしね)

  

Out of Touch

今週はレーベルの決算報告書を作ったり領収書の整理をしたりでモーレツに
忙しくなってしまったので、本日のブログはお休みさせて頂きます。

Daryl Hall & John Oatesの名曲”Out of Touch”のノーテンキかつシュールな
PVでお楽しみ下さい。

そういやこの曲、『グランド・セフト・オート バイスシティ』のラジオ曲Flash FMでも
フィーチャーされてましたっけ。いつ聴いてもノれる曲です。

見所はオーツさんのアクロバティックな側転シーン(3:40頃)。

   

Have Fun, Stay Single

キャメロン・クロウ監督作『シングルス』(92)を久々に鑑賞。

当時「イカす音楽とファッションの発信地」として脚光を浴びていたシアトルを舞台に、
6人の独身男女の恋愛模様をユーモラスに描いた作品です。
個人的にクロウ監督の最高傑作ではないかと思っております。
(この時代のキャメロン・クロウはよかった…)

主なキャストはマット・ディロン(ロックバンド「シチズン・ディック」のリーダー・クリフ)、
ブリジット・フォンダ(クリフのガールフレンド、ジャネット)、
キャンベル・スコット(運輸省で超特急パーク&ライド計画に携わる公務員スティーヴ)、
キラ・セジウィック(環境保護委員会の職員リンダ)などなど。

主役はスティーヴとリンダなんですが、
サブエピソード担当のクリフとジャネットが実にいい味を出しておりまして、
巨乳好きのクリフのために豊胸手術を考えるジャネット(貧乳)が最高に可愛い。
そんなブリジット・フォンダも今やダニー・エルフマン夫人。時の流れを感じます(涙)。

ちなみにジャネットに豊胸手術を思いとどまらせる美容整形外科の医者を演じているのは
ビル・プルマン。
他にも「彼は2代目スコセッシよ!」と紹介されるビデオ・ディレクター役のティム・バートン、
『エイリアン』(79)のトム・スケリット(シアトル市長役)、
『スモーキン・エース』(07)のジェレミー・ピヴェン、
『キリング・ゾーイ』(93)のエリック・ストルツ(パントマイム芸人役)、
キャメロン・クロウ監督(インタビュアー役)等もカメオ出演してます。
ストルツは当時ブリジット・フォンダの恋人でした。
ヴィクター・ガーバーやポール・ジアマッティも端役で出ています。

余談ですが、映画の後半でスティーヴのパーク&ライド計画がシアトル市長からダメ出しを喰らって、
スティーヴは失意のあまり辞職(クビになったのかもしれない)してしまうのですが、
これを見ると本当にアメリカ人は車が好き(=電車が嫌い)なんだなーと思ってしまう。

ま、そんなこんなでこの映画の音楽なんですが、
これがまたロック好き垂涎のサントラというか何というか、
すごい顔ぶれが揃ってます。

まず、主題歌とスコアを担当しているのが元リプレイスメンツのポール・ウェスターバーグ。
主題歌の”Waiting for Somebody”と”Dyslexic Heart”はキャッチーで最高。

シチズン・ディックのメンバーとしてパール・ジャムのエディ、ジェフ、ストーンが顔を出しているほか、
彼らは未発表曲”Breath”、”State of Love and Trust”も提供。
そのシチズン・ディックの持ち歌”Touch Me I’m Dick”を作曲したのはマッドハニー。
「ベルギーでは売れている」バンドだそうです(クリフの劇中のセリフ)。

そしてアリス・イン・チェインズは”Would?”と”It Ain’t Like that”をライブハウスのシーンで熱唱。
これがまたグランジィかつハードロックな感じでイカす。
後者の曲は惜しくもサントラ未収録。

懐メロも結構使われてますが、
別格扱いなのはリンダとスティーヴのロマンティックなひとときを演出するジミ・ヘンドリックスの”May This be Love”。
さすがキャメロン・クロウ、ここぞという時の懐メロの使い方が相変わらずウマい。

劇中で使われた約30曲のうち、
サントラ盤にはシアトルのグランジ勢の曲を12曲+ジミヘンの曲を1曲収録。

■トラックリスト
1. Would? – Alice in Chains
2. Breath – Pearl Jam
3. Seasons – Chris Cornell
4. Dyslexic Heart – Paul Westerberg
5. Battle of Evermore – The Lovemongers
6. Chloe Dancer / Crown of Thorns – Mother Love Bone
7. Birth Ritual – Soundgarden
8. State of Love and Trust – Pearl Jam
9. Overblown – Mudhoney
10. Waiting for Somebody – Paul Westerberg
11. May This Be Love – Jimi Hendrix
12. Nearly Lost You – Screaming Trees
13. Drown – Smashing Pumpkins

映画公開当時は「流行最先端の音が詰まったアルバム」だったわけですが、
今は「90年代のあの頃」を振り返る1枚として、
また違った面白さが味わえるサントラになっているのではないかと思います。
中古CDショップで見かけたら即保護しましょう。
後に『マン・オブ・スティール』(13)で使われる事になる、
クリス・コーネルのソロ曲”Seasons”も収録されているので、
買っておいて損はないと思います。

ちなみに国内盤を買っても歌詞・対訳は載ってません。残念。

   

ジャズ批評7月号

「ジャズ批評」7月号で、チャーリー・デシャントの『ライク・ザ・ウェザー』が紹介されていました。
169ページの新譜紹介のページにちょこっと。

ちょこっとだけとはいえ、「ジャズ批評」に製品紹介が載るというのはなかなかではないかと。

ウチのような立ち上げて間もない弱小レーベルの場合、「新譜を出しても雑誌社からスルーされる」
という可能性も大いにあったわけで(大規模な広告展開に出られないですからね・・・)、毎月膨大な
数のタイトルがリリースされる中で、このCDが新譜紹介に掲載してもらえたというのは大きいのでは
ないかと思うのです。

やっぱり「ホール&オーツのサックス奏者」という肩書きはこういう時に強いなぁ。

全くの偶然ですが、150号記念特別号に掲載されたというのもポイント高いかも。何となくですが。

スムース・ジャズのように聴きやすいけど、聴き込めば聴き込むほど味わい深さが増してくる
奇跡の一枚。皆さんもぜひぜひご体験下さい。
夏の夕暮れ時のドライブのBGMにも最適です。こちらも是非お試しあれ。

Charlie DeChant / Like the Weather
Price: ¥2300 (tax in)
Catalog Number: MGMU1002

Track List

1. Storm Front
2. Twilight
3. Blue Song
4. Don’t Look Back
5. Afternoon
6. Dark of the Moon
7. Heart of Darkness
8. It’s Raining
9. Everyday
10. Sun Shower
11. Moon
12. Tropical Depression
13. Pretty Ordinary Day

 

ミッキー・ローク in “The Wrestler”

「ミッキー・ローク完全復活!」という批評やレビューをあちこちで目にして以来、
見たくて見たくて仕方がなかった『レスラー』をやっと鑑賞。

参った。予想していた事とはいえ、男泣きしてしまいました。

俳優として「落ち目」とされていたロークが、全盛期を過ぎた中年プロレスラーを
演じるという事で、様々なメディアで「ローク自身の人生とシンクロした名演技!」
という賛辞が並んでいるわけですが、そもそもミッキー・ロークという人はこういう
破滅的な人生を送っている男を演じさせると抜群に巧い役者だったんではないかと。

『ランブルフィッシュ』(83)や『エンゼル・ハート』(87)はもちろん、『ホームボーイ』(88)、
『ジョニー・ハンサム』(89)などなど、ロークほどカタギの人生に適合できない
(あるいはする気がない)男の悲哀を表現出来る役者は、後にも先にもなかなか
いないのではないかと思います。B級映画でチンケな悪党を演じていても、何だか
死に際に独特な悲壮感を漂わせていましたし。

で、本作の主人公ランディ・”ザ・ラム”・ロビンソン。彼は全盛期の80年代に絶大な
人気を誇ったものの、20年経った今は身体にガタが来てしまった落ち目のプロレスラー。
衰えてしまったけれども、自身のキャリアに対するプライドは今も失っていない。

そのかわり私生活はボロボロ。なじみのストリッパー・キャシディ(マリサ・トメイ)には
ふとした心のすれ違いから個人的な交際を断られ、疎遠だった一人娘とは関係修復の
機会を自ら台無しにして、挙げ句の果てには絶縁宣言されてしまう。日銭を稼ぐための
スーパーマーケットのバイトも己のプライドがそれを許さず、結局ブチ切れて辞めてしまう。
思うにランディはカタギの生活を送るには不器用すぎる男だったのでしょう。ここがまた
切なくて泣けるんです。

「自分にとって、痛いのは(試合で傷つく事はなく)外の現実の方だった」と悟った
ランディは、ガタガタになった身体に鞭打って、宿敵アヤトッラー(アーネスト・ミラー)
との20周年記念マッチに挑みます。「リングの上こそ俺が一番自分らしくいられる
場所なんだ!」と言わんばかりに。

ランディはドサ周りの興行中に心臓発作を起こし、医者から「もう一度リングに上がったら、
命の保証はありませんよ」と言われていたわけですが、それでも会場に集まったファンの
ため、そして自分が自分らしくあるために、必殺技「ラム・ジャム」(トップロープからの
フライング・ボディプレス・・・でいいのかな?)を繰り出します。あのトップロープに上った
時の感極まった表情・・・。切なくて、でもすごく神々しくて、泣けました。不器用だけれども、
一本筋の通った男の生き様に号泣です。

プロレスとミッキー・ロークと80年代ハードロックが好きな方は必見です。
人生の辛さや孤独さを背中で語る、ランディ(=ローク)の後ろ姿にシビレて下さい。

・・・というわけで話は変わって本作の音楽ですが、ランディは「80年代に絶大な人気のあった
レスラー」という設定なので、劇中でも80年代ハードロックがガンガン流れます。ランディの
入場曲はQuiet Riotの”Bang Your Head (Metal Health)”だし、彼がボロ車の中で聴いている
曲はCinderellaの”Don’t Know What You Got (Till It’s Gone)”やRattの”I’m Insane”など、
珠玉のハードロック・ナンバーばかり。彼にとっては、80年代の栄光の記憶が唯一の心の拠り所
という事なのでしょう。ああ、切ない・・・!

「80年代のハードロックは最高だった。ガンズ、デフ・レパード、モトリー・クルー・・・。なのに
90年代にニルヴァーナが出てきて音楽がシリアスになっちまった。90年代はクソだ」みたいな
ランディとキャシディのセリフのやり取りがあって、バーでRattの”Round and Round”を2人で
歌い出すシーンがあるのですが、あの時の2人の表情がとてもよかったです。

で、ランディ最後の試合の入場曲はGuns N’ Rosesの名曲”Sweet Child O’ Mine”。
この「ランディにとって特別な試合」という雰囲気を感じさせてくれる選曲センスが最高です。
このシーンも、ある意味男泣き必至の粋な演出ですね。

サントラ盤はKOCH RECORDSから輸入盤が出ています(ブルース・スプリングスティーンの
主題歌は未収録)。また、先日調べたらitunesでクリント・マンセル作曲のスコアが1曲購入
可能になってました(メドレー形式で8分前後の曲)。ギターでスラッシュが参加しているので、
興味のある方はこちらもどうぞ。