ランディ・エデルマンの音楽が好きなので、『ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝』サントラ盤の音楽解説が書けて嬉しかったというお話。

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、『ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝』(08)のサントラ盤に音楽解説を書かせて頂きました。スコア作曲はランディ・エデルマン。
国内盤サントラはもう廃盤&在庫切れなので、デジタル版へのリンクを貼っておきます。

The Mummy: Tomb Of The Dragon Emperor Original Motion Picture Soundtrack – amazon music

物語についてはもはや説明不要でしょう。冒険野郎リック・オコーネル(ブレンダン・フレイザー)とその仲間たちがミイラ退治を繰り広げるアクション・アドベンチャー・シリーズの第3作目です。今回は舞台をエジプトから中国に移し、ジェット・リー扮する皇帝とその配下の兵馬俑軍団相手に荒唐無稽なドツキ合いを繰り広げております。

物語の舞台が中国に移った時点で少々嫌な予感がしていたのですが(そもそもその時点で邦題の『ハムナプトラ』ではないわけですし)、エヴリン役もレイチェル・ワイズからマリア・ベロに替わったり(念のためフォローしておきますとマリア・ベロは演技派の名女優ですし自分は好きです)、リックの息子のアレックスにイマイチ好感が持てなかったり、全体的にモヤモヤする映画でございました。

このように作品の出来に関しては正直微妙な感じだった『ハムナプトラ3』ですが、音楽はなかなか良かったです。第1作のジェリー・ゴールドスミス、第2作のアラン・シルヴェストリと来て、今回はロブ・コーエン監督のお気に入り作曲家ランディ・エデルマンが音楽を担当しております。

続きを読む

仕事納め

30日の午後に、今年最後の仕事を済ませて参りました。
これで2008年度のレーベルの仕事は全て終了という事になります。

28日と29日は仕事のリサーチ&私用で東京に行っていたのですが、ニュースで報道された通り、
29日は東北新幹線が運行管理システムのトラブルに見舞われまして、仙台に戻ってくるのも
ひと苦労でございました。

「帰省ラッシュ+運行ダイヤの乱れ」ですから、その混雑ぶりは推して知るべしといった感じです。
ああ疲れた。JRもこういう大事な時期にトラブル起こすかなぁ、フツー。

さて今回は2008年を振り返るという事で、今年購入したアルバムで個人的に気に入った作品を
トップ5形式で挙げてみたりしたいと思います。

1. PUPA “Floating Pupa” (EMIミュージック・ジャパン)
 今年一番聴きました。エレクトロニカとアコースティック・サウンドが絶妙なさじ加減でミックスされた
 心地よいサウンド。幸宏さんの名盤”Blue Moon Blue”に「キュートさ」を加味した進化形かと。
 「Tameiki」と「How」を聴いて高野寛さんの完全復活を確信した次第です。

2. Daryl Hall & John Oates “Live at the Troubadour” (Shout! Factory)
 ホール&オーツの2008年5月のライブを収録したCD2枚組+DVD付きの豪華盤。ダリル・ホールが
 web上で展開しているライブ企画”Live from Daryl’s House”の延長線上にあるアンプラグドな
 演奏ですが、彼らの80年代の瑞々しさが随所に感じられてよい感じです。
 
3. Yellow Magic Orchestra “LONDONYMO” & “GIJONYMO” (commons)
 YMO(というかHuman Audio Sponge)のロンドン/スペイン公演を収録したライブ盤。Sketch Showの
 楽曲は(いい曲ではあっても)淡々としたノリのものが多かった印象があるのですが、このライブの
 アレンジはメリハリが効いていて、ワタクシはこちらのバージョンの方が好きです。

4. Steve Jansen “Slope” (samadhisound)
 元JAPANのスティーヴ・ジャンセンの初ソロ作品。アンビエント/エレクトロニカ系の楽曲がメインで、
 シルヴィアンやティム・エルセンバーグらがゲスト・ヴォーカリストとして参加。出来ればスティーヴも
 1曲くらい”Stay Close”や”BETSU-NI”で披露した美声を聴かせてほしかった…。

5. miette-one “Children’s Corner” (abcdefg record / Girl School)
 名古屋のインディーズレーベル「abcdefg record」の女番長(とレーベルのサイトに書いてあります)、
 miette-one女史による、ヨーロピアン・テイスト溢れるラブリーなガールズポップス・アルバム。
 「インディーズでガールズポップスを演るとはどういう事か?」という課題に対するひとつの答えが
 この作品にはあるのではないかと思います。勉強になりました。

…とまぁ、見事に偏ったラインナップになってしまいましたが、そもそもマイベストなんていうのは
そういうものなわけでして、大目に見て頂ければと思います。

明日は映画『ミラーズ』(08)を観てきます。

  

地球が静止する日(音楽について)

さて、今回は昨夜のブログで予定外に話が長くなってしまった『地球が静止する日』のつづきです。
本日は音楽について。

何故ワタクシがこの映画の音楽について(ブログを2部に分けてまで)お話ししたいかと申しますと、
国内版CDにライナーノーツを執筆するに当たって、作曲家のタイラー・ベイツさんご本人に
インタビュー出来たからなのですね。

ベイツさんといえば、ロックバンド”PET”の元メンバーで、『ドーン・オブ・ザ・デッド』(04)や
リメイク版『ハロウィン』(07)などホラー映画御用達の作曲家として知られておりまして、
いろんな意味でクセ者ミュージシャンなんじゃないかと内心ハラハラしていたのですが、
それは杞憂に終わりました。実際のベイツさんは、当方のひとつひとつの質問に丁寧に答えて
くれるナイスガイでございました。しかもルックス的にもなかなか男前だったりします。
「イケメン映画音楽家」みたいな売り文句で紹介したら、結構人気が出るかもしれません(笑)。

そのベイツさんが「今回はナラティブな音楽は必要なかったんだ」とインタビューで語ってくれた
ように、『地球が静止する日』の音楽は喜怒哀楽の感情が明確なメロディーで表現されているような
タイプのスコアではなく、抽象的なイメージのサウンドになっています。もっとも、数々のホラー
映画で世紀末的ムードを漂わせたスコアを書き下ろしてきたベイツさんなので、今回の「人類が
滅亡すれば、地球は生き残れる」というテーマを掲げた本作の音楽担当にはピッタリの人選と
いえるでしょう。

スコアは「オーケストラ+合唱隊+打楽器隊」の構成で、なかなか迫力ある音を聴かせてくれます。
『地球の静止する日』と同様テルミンも使っているようですが、今回はあまり印象に残る使い方では
ないような気も致します。

その代わり、ベイツさん自ら「ギターヴァイオル」という楽器を弾いております。この楽器、CDのクレジット
などでは”bowed guitar”などと書かれる事もありますが、バイオリンのように弓を使って弾くギターと
イメージして頂ければよろしいかと。レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジやシガー・ロスなども自身の
アルバムで演奏した事があるので、ご存じの方もいらっしゃるかと思います。
で、この楽器がなかなかドクトクな音色を発しておりまして、謎めいた宇宙人のドラマにマッチした
音世界を作り出しております。

…というわけで、ランブリング・レコーズさんからリリースになる国内盤には、ライナーノーツの中で
タイラー・ベイツさんご本人が話してくれた曲作りのプロセスや、キャリアの方向性を決定づけた
思い出の映画、ロブ・ゾンビ監督の某作品を担当した時の苦労話など、いろいろ書かせて頂きました
ので、興味のある方は輸入盤ではなく国内盤をお買い求め頂ければ幸いに存じます。

国内盤の発売日は来年1月21日となっておりますので、ひとつよろしくお願い致します。

『地球が静止する日』オリジナル・サウンドトラック
音楽:タイラー・ベイツ
品番:GNCE7040
定価:2,625円

   

地球が静止する日

本日はweb上で賛否両論巻き起こっている映画『地球が静止する日』について。

この映画はロバート・ワイズ監督の古典SF作品『地球の静止する日』(51)のリメイク
なわけですが、冷戦下の核戦争の脅威を描いていた前作と異なり、今回は環境破壊
への警告がテーマとなってます。

例によって宇宙からの使者クラトゥ(キアヌ・リーブス)は「地球外文明の代表」として
地球にやって来るわけですが、リメイク版はこの時点で既にある「任務」を遂行する
気でいるので、核戦争を放棄するよう「説得」に来た51年版のクラトゥ(マイケル・
レニー)に比べると今回は非情な感じに描かれてます。

ま、それも無理ないかなと思うわけです。51年版同様、地球に降り立ったクラトゥは
おもむろに米軍に発砲されて負傷するし、「国の代表(=大統領とか)に会わせて
ほしい」と頼んでも拒まれるし、オリジナル版から57年経っても人類(特にアメリカ人)が
全然進歩していないんですな。相変わらず米軍は「未知なるもの」に攻撃を仕掛ける
ことしか考えてないし…。これだから「友好的な態度で説得を試みても聞く耳持たない
だろう」ってな発想になるのも分かる気がするのです。

で、クラトゥ氏は「人類が滅亡すれば、地球は生き残れる」とのたまうワケですが、
これも何となく納得してしまうんですよ。特にアメリカは環境問題に取り組みたがら
ない国ですからね。そういえば『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』でも、シャアは
アクシズを地球に激突させて人類を粛清しようとしていましたし、『機動戦士Vガン
ダム』ではタイヤ付き戦艦で地球上のあらゆる建造物をブッ潰す「地球浄化作戦」
なんてのもありましたな。「人類が生きている事自体、地球にとって有害である」
という発想は、割とよくある考え方なのかもしれません。

原作では、クラトゥが人類に警告を発するため、30分だけ世界中の電気をストップ
させるシーンが物語の中盤にあるのですが、今回のリメイク版ではその場面がラスト
シーンに移されているのです。これはヘレン(ジェニファー・コネリー)やバーンハート
教授(ジョン・クリース)が「危機に瀕したとき、人類は変わる事(進化)ができる」と
言った事を受けてのラストなのでしょう。

「そんなに人間が変われるというなら、この状況から変わってごらん」という、クラトゥ
から出された地球人への課題というか試練というか…そんな感じかな、と。「ここまで
切羽詰まった状況にならないと、人間って行動を起こさないモンかなぁ〜」とも思うの
ですが、そういやワタクシ自身も来年の年賀状を数日前にやっと書き終えたばかり
でした。うーむ、そう考えるとなかなか深いメッセージだ(笑)。

映画の中身について言えば、キアヌのクラトゥ役はなかなかハマっておりました。
この人はこういう無表情なキャラクターを演じると神秘的な感じになりますからね。
薄幸のヒロインを演じたジェニファー・コネリーもステキでよかったなぁ。ウィル・スミスの
息子はちょっとイラっと来たのでノーコメント。
脇役で『プリズン・ブレイク』のロバート・ネッパー(ティーバッグ役の人)と、『24 -TWETNY
FOUR-』のロジャー・クロス(カーティス役の人)が軍人役で出てましたね。多分、ネッパー
の演じた軍人はバグの大群に巻き込まれてお亡くなりになったかと。

さて『地球の静止する日』の音楽といえば、バーナード・ハーマンのテルミンを使った
音楽が有名ですが、今回のリメイク版の音楽を手がけたタイラー・ベイツは、51年版は
意識せずに全くのオリジナル音楽を書き下ろしました。

今回、音楽についてもいろいろ書こうと思ったのですが、文章が予想以上に長くなった
ので「次回につづく」という事にさせて頂きます。

なお、国内版サウンドトラックCDはランブリング・レコーズより1/21に発売です。

『地球が静止する日』オリジナル・サウンドトラック
音楽:タイラー・ベイツ
品番:GNCE7040
定価:2,625円

   

人付き合いが苦手なら、急がずゆっくり向き合っていけばいいじゃない、という話。『ラースと、その彼女』

本日はシュールでハートウォーミングな映画『ラースと、その彼女』(07)について。

ビクターのTさんから
「(この映画の)ライナーノーツを書いてみませんか?」というお話を頂いた時、
『ラース』についてあった知識といえば、
「極度にシャイな青年がリアルドール(いわゆるダッ○ワイフ)にフォーリンラブする話」で、
「第80回アカデミー賞の脚本賞にノミネートされた」という事くらいでした。

「リアルドールに云々」という所で、
ジョン・ウォーターズとかトッド・ソロンズ監督の映画のようなノリだったらちょっとなぁ、と構えていたのですが意外や意外。
この映画はマジメなテーマに取り組んだ心温まる作品だったのでした。
アカデミー賞ノミネートはダテじゃありません。

映画の中身は先に述べた通りです。
極端にシャイだが心優しい青年ラース(ライアン・ゴズリング)が、
リアルドールの”ビアンカ”を「僕のガールフレンドなんだ」と真顔で兄夫婦(ポール・シュナイダーとエミリー・モーティマー)に紹介した事から始まる、
田舎町のシュールでほんわかした日常を描いているのですが、
この何気ない描写がいいのです。

一般的にこういう奇妙な行動を起こす主人公が出てくると、
「彼の過去に何があったのか?」みたいな話になるわけですが、
この映画はそういう展開にはならない。
(”幼少期のトラウマが原因”という説明が多少ある程度)
セラピー大国のアメリカにしては珍しい展開といえるでしょう。
愛とか優しさの定義はいろいろありますが、
この映画で言わんとしているのは、
「相手を理解し、全てを受け入れる事が真の愛情であり優しさなのではないか」
という事なのではないでしょうかねぇ。
人付き合いが何かと苦痛になりがちな今の世の中、
早急に結果を求めるのではなくて、
波長の合いそうな人をゆっくりまったり見つけていけばいいじゃない。
そして相手の求めているものに気づいてあげればいいじゃない。
そんな映画です。

さてその奇妙な主人公をもっさり演じるライアン・ゴズリングも、
ビミョーに気持ち悪くて絶妙に愛らしい主人公を好演。
『完全犯罪クラブ』(02)の頃は何だかあまりパッとしない印象でしたが、
『ステイ』(05)のあたりから、
「口数が少なくて何を考えているか分からない男」という、
独自のキャラを確立した感じです。

あまり中身について語ってしまうと映画を観た時の感動が薄れてしまうので、
感想はこのへんで。詳しくは本編をご覧頂ければと思います。

本作の音楽を手掛けたのは、
プロデューサー/ギタリスト/テクスチャリストなど様々な肩書きを持つデヴィッド・トーン。
デヴィッド・シルヴィアンやミック・カーン、
デヴィッド・ボウイらのアルバムにギタリストとして参加しているので、
洋楽ファンにもおなじみかと。

今回のサントラでは、アコースティック・ギターを中心に、
ストリングス、ピアノ、クラリネットなどを重ね合わせた、
オーガニックな癒し系アンビエント・スコアを聴かせてくれています。
ノリ的にはジョン・ブライオンの『パンチドランク・ラブ』(02)とか、
『エターナル・サンシャイン』(04)の音楽に近い感じでしょうか。

映画本編同様、「つつましい優しさ」に満ちたサウンドが実に心地よいです。
就寝前に聴きたい一枚に(勝手に)認定。

国内盤はビクターエンタテインメントより発売中。
ジャケットデザインが輸入盤よりオシャレな感じになっておりますので、
個人的にオススメです。

『ラースと、その彼女』オリジナル・サウンドトラック
音楽:デヴィッド・トーン
品番:VICP-64640
定価:2,520円