『あの歌を憶えている』劇場用パンフレットに書いたプロコル・ハルム「青い影」コラムの補足 その3: 法廷闘争について思うこと

セテラ・インターナショナル様からのご依頼で、映画『あの歌を憶えている』(23)の劇場用パンフレットにプロコル・ハルムの「青い影」に関するエッセイを書かせて頂きました。

字数の都合や話の本筋から離れてしまうという理由から、パンフのエッセイでは書けなかったネタをブログで補完させて頂きますということで、これまで難解極まりない歌詞と「青い影」が出来上がるまでの経緯について書きました。

今回は著作権を巡る法廷闘争について書かせて頂こうかなと思います。

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パンフレットにエッセイを書くにあたって、一連の「青い影」法廷闘争の流れをまとめてあるサイトなどを読み漁っていったのですが、毎日のように記事を熟読していくうちに、果たして自分は『あの歌を憶えている』のエッセイを書いているのか、「青い影」訴訟のレポートを書いているのかどっちなんだ?…とよく分からなくなってきました。
なのでパンフレットでは要点だけ簡潔にまとめた感じです。あと、当方の好きなマシュー・フィッシャーの苦悩を知って頂きたいな…という思いも少なからずあったかもしれません。

そんなわけで、詳しい話はブログで書かせて頂きます。
今回もテキストが長いです。

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『あの歌を憶えている』劇場用パンフレットに書いたプロコル・ハルム「青い影」コラムの補足 その2: 「青い影」ができるまで

セテラ・インターナショナル様からのご依頼で、映画『あの歌を憶えている』(23)の劇場用パンフレットにプロコル・ハルムの「青い影」に関するエッセイを書かせて頂きました。

字数の都合や話の本筋から離れてしまうという理由から、パンフのエッセイでは書けなかったネタをブログで補完させて頂きますということで、前回は解釈が難しい歌詞について書きました。

今回は名曲「青い影(A Whiter Shade of Pale)」ができるまでの過程について少し補足させて頂こうかなと思います。

作詞家(詩人)のキース・リードが、バンドマネージャーのガイ・スティーヴンス宅のホームパーティーで気分を悪くした夫人にガイが「顔色が悪いぞ(You’ve gone a whiter shade of pale)」と言った言葉にインスパイアされて書いた歌詞だった、というのは有名すぎる話なのでパンフのエッセイでは割愛しました。

自分はコロナ禍の不要不急の外出を控えていた時期にプロコル・ハルムのアルバムを集中的に聴いていて、初期3作のアルバムのことや、「青い影」を含む彼らの曲ができた過程を知りたくなったので、ゲイリー・ブルッカーやマシュー・フィッシャー、リードのインタビューを読み漁っていました。

パンフに寄稿したエッセイは、そのときに得た情報をもとに書いたとも言える気がします。しかし、それを全部書くと話しが長くなる上に『あの歌を憶えている』の話から逸脱してしまうので、要点をまとめて書いた感じです。

パンフに書ききれなかった細かいトピックはこれから書いていきたいと思いますが、ハッキリ言って長いです。お暇なときに目をお通し下さい。

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『あの歌を憶えている』劇場用パンフレットに書いたプロコル・ハルム「青い影」コラムの補足 その1: 難解な歌詞について

セテラ・インターナショナル様からのご依頼で、映画『あの歌を憶えている』(23)の劇場用パンフレットにプロコル・ハルムの「青い影」に関するエッセイを書かせて頂きました。

ミシェル・フランコの映画と言えば劇伴/主題歌の類を一切使わず、挿入歌は生活環境音扱いで、エンドクレジットも無音というのが定番なので、当初は「音楽について何か書くことあるんだろうか?」と思いました。
しかし「青い影」が劇中で重要な役割を担っているということで、プロコル好きの当方としては「それでしたらぜひ」とお引き受けした次第です。

そして試写を拝見したところ、「ミシェル・フランコの映画を見終わってこんなにホッとした気分になったのは初めてだな」と思いました。
『父の秘密』(12)にしろ『或る終焉』(15)にしろ『母という名の女』(17)にしろ『ニューオーダー』(20)にしろ、心の底から打ちのめされる静かで憂鬱な展開を見せておいて、無音のエンドクレジットで更に沈んだ気持ちにさせられるのがフランコ映画のトレードマークと言えるわけですが、今回はヘヴィなテーマを描きつつも、最後に「これ本当にフランコの映画なの?」というささやかな救いのある作品でした。

個人的に一番驚いたのは「ミシェル・フランコ映画でエンドクレジットに曲がある」ということでした。このことは予備知識なしで映画を観たときに「おやっ?」と新鮮な驚きを体験して頂きたかったので、パンフにはあえて書きませんでした。

このように字数の都合や話の本筋から離れてしまうという理由から、パンフのエッセイでは書けなかったネタもいくつかありますので、そのあたりは当方のブログで何回かに分けて書いていこうかなと思います。

まずは今も議論が交わされている「青い影」の難解な歌詞について少し書かせて頂こうかなと。

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ブライアン・フェリー「Retrospective: Selected Recordings 1973-2023」デラックス・ボックスセットを聴いて年末年始を過ごしたお話。

自分はブライアン・フェリー(とロキシー・ミュージック)のオリジナルアルバムは全部持っているし、フェリーさんのレア音源も企画盤やサントラでかなり集めている方だと思うので、公式サイトでアナウンスがあったCD5枚組+フォトブックのボックスセットは、果たして買うべきかどうかと正直かなり悩みました。

しかしDISC FIVEのレア音源集の魅力には抗えず、それ以上にフェリーさんの音楽を40年近く追ってきた身としては、これはコレクションとして買っておくべきアイテムなのだろうと思い直し、割と早い時期に予約注文した次第です。

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Retrospective: Selected Recordings 1973-2023 (Super Deluxe Boxset) [5CD+BOOK]- TOWER RECORDS

その後発売日(というか日本国内ショップの入荷日)が遅れたり、お届け予定日の数日前に受取先のコンビニがまさかの1週間臨時休業に入ってしまったり…と予期せぬ事態に見舞われたものの、紆余曲折を経て11月下旬には当方の手元に製品が届きました。

ボックスセットといっても先頃発売になった「マムーナ」のCD3枚組デラックス・エディションぐらいと思っていたのですが、ライナーノーツつきフォトブックが気合いの入った出来映えだったため、当方の想像以上に現物はサイズが大きかったし重かった。

豪華ブックレットには各曲ごとに演奏に参加したミュージシャンの名前が記載されているので、映画のサントラでもスタッフクレジットまでつぶさに目を通す自分としては、こういう細かな情報が実に有難い。

収録曲は全て書き起こしするのが面倒なので、画像をご覧下さい。

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アルバムのテーマは「ラーメン離婚」だった!? 1996年当時の幸宏さんのインタビュー記事と共に「Portrait with No Name」を聴く。

昨年の暮れからコツコツ買い揃えていっている、高橋幸宏さん東芝EMI在籍時代のアルバムのリマスタリングSHM-CD盤。先日「Portrait with No Name」を買いました。1990年代当時好きでよく聴いたアルバムです。

Portrait with No Name (SHM-CD限定盤) – amazon
Portrait with No Name<SHM-CD 限定盤> – TOWER RECORDS

ご本人は2006年のレコード・コレクターズのインタビューで「自分の中ではあっさりし過ぎている印象があって」と仰っていましたが、個人的にはCMタイアップ曲が3曲あったせいか歌謡曲テイスト強めだった「Mr. YT」より、”ドラムンベース邂逅編”とでも言うべき「Portrait with No Name」のほうが好きでした。

連休中実家に帰ったとき、自分の部屋で当時新星堂が発行していたフリーペーパー「pause」の幸宏さんのインタビュー記事のスクラップを見つけまして、懐かしいなぁ、そういえばこんなことを仰ってたなぁと思いながら読んでいました。

そのフリーペーパー誌上で幸宏さんご本人が全曲解説をしていらっしゃったので、大雑把にまとめてご紹介したいと思います。

■アルバムの隠れテーマは「ラーメン離婚」だった!?

シングル曲「名もなき恋愛」の歌詞の打ち合わせで、鈴木慶一が「最近”ラーメン離婚”ってのが多いらしいよ」という話を切り出したのだとか。
「ラーメン離婚ってなに?」…という感じですが、要は「夫が夜遅くに帰って来て、妻に”ラーメン作ってくれる?”と頼むと、妻はただ黙ってラーメンを作ってくれる。そして次の日の朝に“私はあなたのラーメンを作るために結婚したんじゃありません”と書き置きを残して出て行く」というシチュエーションのことらしい。

で、夫が食べたがっているラーメンを作ってあげるという行為が「ラーメンを作るために結婚したんじゃない」という問題にすり替わるのはなぜだろう? という話になって、「それはつまり、二人の間に”何もなければいい”ということなんだろうか。期待も、形も、名前も…」という結論になって、「Portrait with No Name」というアルバムタイトルが生まれることになったのだそうです。
「Nameless」みたいなタイトルはストレート過ぎてカッコ悪いので、アメリカの”A Horse with No Name”からアイデアを頂いたと仰っていました。

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