『ゴールデン・リバー』のアレクサンドル・デスプラのスコアは、西部劇音楽界のサード・ウェーブだと思う。

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、
『ゴールデン・リバー』(18)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。

音楽担当は『グランド・ブダペスト・ホテル』(14)と『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)でアカデミー賞作曲賞を2度受賞した才人アレクサンドル・デスプラ。
そのデスプラが西部劇音楽初挑戦!というだけでも、
20数年来のデスプラーなワタクシとしては、この映画が楽しみで楽しみで仕方がなかったのでした。

彼のフィルモグラフィー的には、
確かに本格的な西部劇音楽は初挑戦なのですが、
『ファンタスティック・Mr.FOX』(09)で西部劇のノリに近い音楽は一度担当しているのですね。

「所帯を持ってカタギになっても、泥棒稼業の味が忘れられねぇ」的なお父さんギツネのお話でしたが、
デスプラはギターやバンジョー、トランペット、ティンパニ、ジューズ・ハープ(口琴)を使ったスコアを作曲していて、音の質感的にもブルーグラス/ウエスタンと言ってもいいサウンドを聴くことが出来ました(アルバム13曲目のBeans Secret Cider Cellarなんかはモロに西部劇風のスコアでした)。

だから今回の『ゴールデン・リバー』もこういう方向に行くのかな、と予想を立てていたのですが、いざ音源を聴いてみたら全く違ったという。

音楽の概要は先日BANGER!!!のコラムでざっくりご紹介させて頂いたので、
まずはこちらをご覧頂きたいと思います。

ジェイク・ギレンホール主演『ゴールデン・リバー』は
ジャック・オーディアール監督と天才作曲家が攻めの音楽で描く、
異色の仏製ウエスタン | BANGER!!!

https://www.banger.jp/movie/12107/

 

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『ゴールデン・リバー』のサントラ盤は、輸入盤より日本盤(国内盤)をオススメしたいその理由。

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、
『ゴールデン・リバー』(18)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。

音楽担当は超売れっ子にして天才作曲家のアレクサンドル・デスプラ。
ワタクシの大好きな作曲家の一人なのですが、
『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』(17)以来のライナーノーツのお仕事だったので嬉しかったですね~。

ワタクシ、こちらのサントラ盤は映画の邦題が決まる前の『The Sisters Brothers』の時から既に自費で買って聴いておりまして、
たぶん仕事で聴きこんだ分も合わせて80回くらいアルバムを聴いたんじゃないかと思うのですが、そのワタクシからあえて言わせて頂きますと、

『ゴールデン・リバー』のサントラ盤は、輸入盤ではなく国内盤のご購入をオススメします。

「そりゃアンタがライナーノーツを書いたんだから国内盤を勧めるよね~」と思われるかもしれませんが、それ以外にもちゃんと理由があるんです。
割と大事なことなので、今回はまずそれをお話ししようかなと。

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リーアム・ニーソン主演のアクション映画にジョージ・フェントンの音楽だと…!? 『スノー・ロワイヤル』はその意外な組み合わせが面白い!

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、
『スノー・ロワイヤル』(19)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。

ワタクシは『アンノウン』(11)、『フライト・ゲーム』(14)、『トレイン・ミッション』(18)でリーアム・ニーソン主演作のサントラ盤ライナーノーツを書かせて頂いているので、またリーアム映画のお仕事が回ってきて最高に嬉しかったですね~。

で、今回の音楽を担当したのはジョージ・フェントン。

…ってコレ、かなり意外な人選じゃありません??

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キアヌ暴走!…しかし「『レプリカズ』は家族の物語」と作曲家のマーク・キリアン氏は語った。

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、『レプリカズ』(18)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。
音楽は『アイ・イン・ザ・スカイ/世界一安全な戦場』(15)のマーク・キリアンと、謎の人物ホセ・”ペペ”・オエダの二人。

マーク・キリアンの映画音楽は10年くらい前から結構注目していて、初めて買ったサントラは『トレイター 大国の敵』(08)でした。『ザ・ウォード/監禁病棟』(10)や『リベンジ・オブ・ザ・グリーン・ドラゴン』(14)、前述の『アイ・イン・ザ・スカイ』のサントラももちろん持ってます。

なんでキリアンの音楽に興味を持ったかというと、「オーケストラにエレクトロニクス、民族音楽をミックスしたハイブリッドなサウンド」を得意とする作曲家なので、ワタクシの大好きなマイケル・ダナさんの音楽に共通するものがあったからなんですね。

だから機会があったら是非ご本人にインタビューしたいなと常々思っていたのですが、音楽を担当した作品が日本で劇場未公開だったり、サントラがリリースされなかったり、輸入盤は出てるけど公開規模が小さいので国内盤は発売されなかったり、なかなかライナーノーツを書かせて頂く機会に恵まれませんでした。

ところが今回『レプリカズ』のサントラ盤が発売されるということで、「この時を待っていた…!」とばかりにキリアンさんにインタビューを申し込みまして、ありがたいことに二つ返事でOKを頂いたのでございました。

ワタクシの好きなキアヌ・リーブスの映画のサントラ盤ライナーノーツを書かせて頂けて、その上ずっとインタビューしてみたかったマーク・キリアンにも詳しくお話が聞けて思わず嬉しくなってしまいました。

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『荒野にて』のスコアは”考えるのではなく、感じる音楽”…だと思う。

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、
『荒野にて』(17)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。
音楽はジェームズ・エドワード・バーカー。

日本のサントラリスナーにもほとんど知られていない作曲家ですが、
ワタクシちょうどこの仕事の数週間前に『タイム・トゥ・ラン』(15)をDVDレンタルで観ていて、
「B級アクション映画専門の作曲家さんかと思ったら、アンドリュー・ヘイのようなアート系映像作家の作品も担当するんだなぁ」という感じで、どんな音楽を書いたのか俄然興味が湧いてきたのでした。

で、ランブリングさんから送って頂いた音源を聴いてみたら、
当方の想像以上に深遠な音世界を構築していたので、軽く衝撃を受けた次第です。

そして試写で映画本編を観たらさらに衝撃。
上映時間122分の中で、スコアが使われていたのは20分ちょっとでした。。
思えば『さざなみ』(15)もスコアが一切ない映画でしたね。。

それじゃあ今回もスコアがなくてもよかったんじゃね?…と思われるかもしれませんが、ヘイ監督はそうしなかった。
その理由を考えてみると、
やはり「荒野」という特殊なロケーションと、
そこを彷徨う口数の少ないナイーブな少年の機微を描くためには、
ここぞというところで音楽が必要だったのでしょう。

 

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