『スマーフ2』のスコア盤でヘイター・ペレイラの職人技を楽しむ

smurfs2

本日は前回のつづき。
『スマーフ2 アイドル救出大作戦!』(13)の音楽について。
作曲は前作に引き続きヘイター・ペレイラの担当。
この方、シンプリー・レッドの元ギタリストでもあります。
1988年から1996年までバンドメンバーでした。

ペレイラの名前はハンス・ジマーの音楽が好きな人なら既にご存じでしょう。
ジマーの『グラディエーター』(00)とか『M:I-2』(00)、
ハリー・グレッグソン=ウィリアムズの『アンストッパブル』(10)とか、
『サブウェイ123 激突』(09)、『ドミノ』(05)などのスコアでもギターを弾いてます。

 

ギタリストとしてはアクションからシリアスドラマ、ロマコメまで、
幅広いジャンルに起用されているのですが、
「映画音楽家」としては圧倒的にロマコメとアニメ映画が多いのがこの人の特徴です。
『怪盗グルーの月泥棒』(10)とその続編、
『ビバリー・ヒルズ・チワワ』(08)に『おさるのジョージ』(06)、
バンドメンバー役でカメオ出演もしている『恋するベーカリー』(09:ジマーと共作)、
そして『スマーフ』シリーズというラインナップをモノにしています。
シリアスドラマは『ヘイヴン 墜ちた楽園』(04)と、
『Ask The Dust』(06:ラミン・ジャワディと共作)くらいではないかと。

で、今回サントラ盤のライナーノーツを書かせて頂く事になったわけですが、
共通の知人がいたのでペレイラさんにインタビューさせて貰う事が出来ました。
先に結論から申し上げますと、すごくいい人でした。

リモート・コントロール所属アーティストから引っ張りだこの多忙な人なので、
当初の予定より質問の回答が遅れたのですが、
後になって「この前は返事遅れてゴメンな。〆切りには間に合ったかい?」
なーんてわざわざペレイラさんの方から連絡を寄越してくれたりして、
それが嬉しかった…というか、誇張でも何でもなくちょっと感動しました。
『ホワイトハウス・ダウン』(13)のトーマス・ヴァンカーさんもいい人だったけど。

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ハンク・アザリアの奮闘に☆2つ半 『スマーフ2 アイドル救出大作戦!』

TheSmurfs2

『スマーフ2 アイドル救出大作戦!』(13)のサントラ盤ライナーノーツを担当する事になり、
7月中旬に内覧試写に行ってきました。

日本語吹替えのみの上映と聞いていたので、
試写も日本語吹替えかなーと思ったら、
何と字幕版での上映で非常に得した気分になりました。
ベテラン声優さんも多数起用している作品なのですが、
主要キャラの声がタレントだったので、まぁそのへんで吹替え版はちょっと…。

ストーリー的には、何というか非常に騒々しいです。
『スマーフ』の原作のマンガもこういうノリなのでしょうか。
(たぶん脚色の段階でかなりアメリカナイズされていると思うのですが)

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メインテーマがカッコいい『ホワイトハウス・ダウン』の音楽

white house down

というわけで前回の投稿の続き。
『ホワイトハウス・ダウン』(13:以下WHD)の音楽について。
こちらのサントラ盤のライナーノーツを書かせて頂きました。

作曲はハラルド・クローサーとトーマス・ヴァンカーの二人。
スコアの作曲から映画の共同プロデュース、
さらに共同で脚本まで手掛けてしまうクローサーと、
彼の下で下積みをしながらキャリアを築いてきたヴァンカー。
綴りは「Thomas Wandar」なので表記は「ワンダー」じゃないの?とも思うのですが、
いろいろ調べてみたら「ワンダーでもヴァンカーでもどっちでもOK」という状態で、
こういう場合どっちにするべきかとかなり悩みました。

しかしながら同じ発売元(ランブリング・レコーズさん)の
『デイ・アフター・トゥモロー』(04)のサントラ盤ライナーノーツには、
「トーマス・ヴァンカー」と記載されておりましたので、
今回もそれに合わせた形になります。
ハンス・ジマーも今の表記になるまで「ズィマー」とか「ツィマー」とか安定しなかったので、
ヴァンカーも今よりもっとメジャーになったら、
カタカナ表記も統一されるのではないかなーと思います。

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バイオレンス控えめ、爽快感重視の『ホワイトハウス・ダウン』

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先月中旬に『ホワイトハウス・ダウン』(13:以下WHD)を内覧試写にて鑑賞。
『エンド・オブ・ホワイトハウス』(13:以下EOW)と見事にネタかぶりしてしまった本作ですが、
個人的にはこっち(『WHD』)の方が楽しんで観られました。

密室(ホワイトハウス内)で繰り広げられる武装集団との攻防戦は、
ほとんど『ダイ・ハード』(88)のノリ。
ジョン・マクレーンはロシアで息子と暴れてなんかいないで、
ホワイトハウスで大統領とコンビを組んで大暴れするべきだったと思います。

自分はジェラルド・バトラーもアントワン・フークアも好きだし、
『EOW』も面白かったとは思うのですが、
あの映画はエンタメ系アクションにしては暴力描写が正直キツすぎました。
テロリストの攻撃でバタバタと殉職するシークレット・サービスを筆頭に、
北朝鮮ガンシップのミニガン掃射で次々に殺される一般市民、
発射コードを吐かせるために容赦なくボコられる女性国防長官(メリッサ・レオ)、
アメリカへの見せしめでテロリストにあっさり殺される韓国首相などなど、
国際的にいろいろマズいんじゃないかという描写も含めて、
観ていて「いいのかコレ…?」と若干引いてしまうシーンもありました。

その点『WHD』はバイオレンス控えめで、
愛国的なメッセージもそれほど前面に押し出していないので、
ポップコーンとかホットドッグ食いながら見ても、
食べ物がマズくならない娯楽映画に徹していて、
ある意味安心して観られます。

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ダニー・エルフマンがサム・ライミと和解したことがまず嬉しい『オズ はじまりの戦い』の音楽

先日『オズ はじまりの戦い』(13)のサントラ盤リリースに関してあれこれ書きましたが、今回はダニー・エルフマンのスコアについて書かせて頂きます。

Oz The Great and Powerful (Original Motion Picture Soundtrack) – amazon music

映画ファン…というかサントラリスナーの方なら既にご存じの通り、エルフマンとサム・ライミは『スパイダーマン2』(04)のときに音楽の方向性を巡って意見が対立し、それ以降半ば絶交状態だったわけですが、本作で9年ぶりのタッグ復活となりました。

…などとサラッと書いてしまいましたが、エルフマンは『スパイダーマン2』の時に「彼は以前とは全くの別人になってしまった。二度と仕事したくない」的な発言をしておりましたので、これは奇跡に近いことではないかと思います。もっとも、マイケル・ダナも『ハルク』(03)の降板トラブルでアン・リーと疎遠になっていたのが『ライフ・オブ・パイ』(12)でコンビ復活を果たしているので、9年も経つと皆さんいろいろ心境が変化するのかな、とも思います。

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