先日、綱渡り師フィリップ・プティの実像に迫る『マン・オン・ワイヤー』というドキュメンタリー映画のサントラ盤のお仕事をやらせて頂きました。
ユニバーサルミュージックからこの作品のサントラ盤がリリースになりましたが、
音楽をあのマイケル・ナイマンが担当しております。
担当、というのはちょっと適切な表現じゃないかもしれません。
と申しますのも、この映画の音楽はナイマン本人の了承を得た上で、
彼の過去音源を”再利用”する形で構成されているからなんです。
先日、綱渡り師フィリップ・プティの実像に迫る『マン・オン・ワイヤー』というドキュメンタリー映画のサントラ盤のお仕事をやらせて頂きました。
ユニバーサルミュージックからこの作品のサントラ盤がリリースになりましたが、
音楽をあのマイケル・ナイマンが担当しております。
担当、というのはちょっと適切な表現じゃないかもしれません。
と申しますのも、この映画の音楽はナイマン本人の了承を得た上で、
彼の過去音源を”再利用”する形で構成されているからなんです。
今度の「日曜洋画劇場」で『ファイヤーウォール』(06)を放送するという事で、
本日はそのお話。
ランブリング・レコーズのMさんからライナーノーツの執筆依頼を頂いたのは、
2006年1月下旬の事でした。
原稿の〆切りが2/17で、
映画の内覧試写が2/10という結構ギリギリなスケジュールだったのですが、
いざ本編を観たら〆切りの事など忘れて、
二人で「いやーなかなか面白かったですねぇ」と言いながら、
しばし映画談義で盛り上がってしまったのを覚えています。
今から遡ること2年と数ヶ月前、フレイヴァー・オブ・サウンド様から『ディパーテッド』スコア盤のライナーノーツのお仕事を頂きました。
音楽はデヴィッド・クローネンバーグ作品でおなじみのハワード・ショア。
名作『インファナル・アフェア』(02)のハリウッド・リメイクという事で、オリジナル版を観て男泣きしてしまった自分には不満な点も結構あったりするのですが、それでもこの映画は自分にとって特別な作品なのです。多分、これから先もずっと。
何故かというと、このサントラの仕事でチャーリーさん(Charlie DeChant)とご縁が出来たようなものだからです。
今回はヴィン・ディーゼル兄貴久々の主演作『バビロン A.D.』のお話。
日本版ポスターなどのメインビジュアルは割と『フィフス・エレメント』(97)的な
近未来イメージになっておりますが、映画本編は何というかこう、もっと薄汚い
荒廃した感じの世界です。何しろ「戦争やテロで秩序が崩壊した未来」という
設定なので。世紀末的世界観を愛好する人には、結構グッと来るビジュアル
かもしれません。
物語はと申しますと、ディーゼル兄貴が演じる傭兵トーロップが、腐れ縁の
マフィア・ゴルスキー(ジェラール・ドパルデュー)からの「オーロラっちゅー
若い女をモンゴルの修道院からニューヨークまで運んでくれや」という
明らかにヤバそうな依頼を受けた事から、壮絶な戦いに身を投じる事に
なるというストーリーです(かなり大雑把ですが)。
兄貴の仁義溢れる行動や、肉弾戦やスノーモービルを駆使したアクションなど、
結構いい感じでストーリーが進みまして、「いいぞいいぞ」と思うんですが、
なぁぁんか終盤の展開が強引&尻切れな感じなんですよね。
明らかに途中のドラマをブッツリ切った感のある編集が気になって、どうにも
居心地が悪いのです。特にラストがなぁ・・・。「そこで終わるのか?」という感じ。
というのもこの映画、どうやらスタジオ側が勝手に短く編集したらしいんですな。
上映時間90分なので、元々はあと10分か20分くらい長かったんじゃないかと。
自分の作品を勝手にいじられたって事で、監督のマチュー・カソヴィッツは
それはもう大激怒したそうです。映画の最終編集権が監督の手に行かない
ような契約内容だったんでしょうか。気の毒としか言いようがありません。
そんなわけで、大幅に時間を短縮された映画本編では結局何が言いたかった
のか分からない部分もあるかと思います。その説明が足りない部分を補完
してくれるのが、アトリ・オルヴァルッソンの音楽なんですな。
アトリさんは『バンテージ・ポイント』(08)の音楽で名前が知られるように
なった人で、ジマー軍団の一人です。
『バンテージ・ポイント』の時は、デジタルビートをガンガン鳴らしたリズム
重視のスコアを作曲していましたが、『バビロン A.D.』では一転、オーケス
トラと合唱隊を導入して荘厳なミサ曲のようなスコアを書き下ろしています。
これを聞いただけで「この映画、単なるアクション映画じゃないな」と思って
頂けるハズ(ま、製作のゴタゴタのせいで本編はアレな出来でしたけど)。
映画のクライマックスで流れる「Babylon Requiem」という曲が大迫力で、
なかなか聴き応えがありますぞ。
今回、スコアの中で「Agnus Dei」と「Dies Irae」というラテン語のミサ曲の
歌詞を引用しているのですが、なぜこの2曲が選ばれたのかというのにも
ちゃんと理由があるんですねぇ。さてその理由とは?
・・・申し訳ありませんが、それはランブリング・レコーズさんから発売中の
日本版サントラCDをご購入頂いて、ライナーノーツを読んで頂ければと
思います。いやーワタクシもライナーを書いた手前、CDを買って頂けると
有難いので・・・。
他にもアトリさんにインタビューして、いろいろ小ネタをいろいろ書かせて
頂きましたので、買って損はさせません(笑)。ぜひぜひ国内盤をよろしく
お願い致します。
今日は映画館(泉コロナワールド)に行って、この映画のパンフレットを
買ってきました。インタビューでお世話になったアトリさんに日本版CDと
一緒に送る予定です。ライナーを英訳しないといけないから、先方に
発送するまで数日かかるな、こりゃ。
『バビロン A.D.』オリジナル・サウンドトラック
音楽:アトリ・オルヴァルッソン
品番:GNCE-7047
定価:2,625円
今月から『プリズン・ブレイク』ファイナル・シーズンのレンタル開始という事で、
ドラマをずーっと観てきたワタクシなどは、
何かこう、最終シーズンを迎えて感慨深いものがありますな。
ランブリング・レコーズさんからリリースになっている、
『プリズン・ブレイク』のサントラ盤(シーズン1と2の音楽を収録)のライナーノーツを書かせて頂いたのですが、
その際に何度も何度も本編を観たせいか、
キャラクターに愛着が湧いてしまいました。
大半がフダ付きの悪党なのにねぇ…。
視聴者人気が高いキャラは誰なんでしょう。
うーん、マリクルースひと筋で義理堅いチンピラのスクレ(アマウリー・ノラスコ)とか、
ロバート・ネッパーの怪演と、
若本規夫氏の強烈な日本語吹替えの相乗効果でキャラが立ちまくりのティーバッグとか、
もともと隠れファンの多かったウィリアム・フィクトナーが演じるマホーン捜査官あたりでしょうか。
個人的には、彼らに加えてベリック(ウェイド・ウィリアムズ)にも注目してます。
この人、自業自得とはいえ刑務官→賞金稼ぎ→囚人と波乱の人生を送るハメになって実に哀れを誘うんですが、
結構間が抜けていて言動が笑えるところがミソかな、と。
シーズン3の話になりますが、
パナマの刑務所でズルして決闘で勝ってしまうくだりなんかは、
ベリックの憎めない小悪党ぶりがうまく出ていてナイス・エピソードです。
この人に今後どういうドラマが用意されているのか、密かに楽しみだったりします。
さて『プリズン・ブレイク』の音楽なのですが、
ハンス・ジマーの主宰する音楽家集団「リモート・コントロール」所属のラミン・ジャワディが担当しています。
『Mr.ブルックス完璧なる殺人鬼』(07)や『アイアンマン』(08)など、
このドラマの仕事を経て一気に売れっ子になりました。
サントラ盤にはシーズン1と2の代表的なスコアが収録されているのですが、
ドラマの主要キャラはシーズン1でほぼ全員出揃っているので、
いわゆる彼らのテーマ曲的な音楽はCDにほとんど収録されています。
「プリズン・ブレイクのテーマ」とでも言うべき「Strings of Prisoners」を始め、
ティーバッグが画面に登場する時のフリーキーな曲(T-Bag’s Coming For Dinner)とか、
アコースティック・ギターを使ったスクレのテーマ曲(Sucre’s Dilemma)など、
4シーズン通して使われているメロディーも多々あります。
スコアの基本構成は「シンセ・ストリングス+打ち込みのリズム+生楽器(orサンプリング)」みたいな感じです。
『プリズン・ブレイク』の音楽で最も耳に残る「♪ すきゃぼぼぼー」という掠れたバンブー・フルートのような音も、
多分サンプリングで作ってます。
『24 -TWENTY FOUR-』のようにヒロイックなメロディーを聴かせるタイプの音楽ではありませんが、
「漢(おとこ)っぽさ」を感じさせる硬派なスコアという印象ですね。
渋カッコイイです。
ジャワディはクラウス・バデルトの『リクルート』(03)とか、
ジマーの『バットマン ビギンズ』(05)などの追加音楽を担当しているのですが、
『プリズン・ブレイク』のサントラ盤を聴いてから(追加音楽を手掛けた)別な映画のサントラを改めて聴き直すと、
「ジャワディはこの曲(あるいはスコアのこの部分)を担当したんじゃないの?」とピンと来る箇所が結構あります。
お手元にジマー/ジャワディ関連のCDのある方は、ぜひお試しあれ。
『プリズン・ブレイク』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ラミン・ジャワディ
品番:GNCE-7004
定価:2,625円