今回は25日から公開になった映画『ブーリン家の姉妹』(08)についてのお話を少々。
エリザベス1世の生みの親として知られるアン・ブーリンに実は妹がいて、
時のイングランド国王ヘンリー8世の寵愛を巡って、姉妹の間で壮絶な愛憎劇が
繰り広げられるというストーリー。
ヘンリー8世の寵愛というより、王妃の座を狙うアン・ブーリンをナタリー・ポートマンが
演じ、「清純で心優しい」妹のメアリーをスカーレット・ヨハンソンが演じている…のですが、
ゴシップ紙などでインタビュー中の態度の悪さとか奔放な私生活を度々スッパ抜かれている
ヨハンソンが清純派のメアリーを演じるというのは「ちょっとイメージが違うなぁ」という気もします。
で、映画の中身はと言いますと、アン・ブーリンの狡猾さとヘンリー8世の女ったらしぶりが
印象に残ります。
アンはヘンリー8世を手玉にとって、妹メアリーを宮廷から追い出し、キャサリン・オブ・
アラゴンとの離婚を迫り、ローマ・カトリック教会からも決別させるなどやりたい放題。
ヘンリー8世はいわゆる「アン・ブーリン萌え」状態なので、完全に彼女の言いなりに
なってしまうんですな。この時期イングランドの歴史が大きく動いたわけですが、
その背後にはこういう事情があったというわけです。そう考えると、伝統ある英国王室の
お家騒動も、高尚なんだか低俗なんだかよく分からなくなってきます。
そういえば昔、ハーマンズ・ハーミッツの”I’M HENRY THE VIII, I AM”という曲がありましたね。
『ゴースト ニューヨークの幻』(90)でパトリック・スウェイジが歌ってたアレです。
何だかフザケた感じの曲だった印象がありますが、ヘンリー8世という人物は割と
歌われている歌詞のまんまのお人だったようです。ってことは、やっぱり通俗的な人だったのか。
さて本作の音楽を担当したのは、『潜水服は蝶の夢を見る』(07)のポール・カンテロン。
全編クラシック出身らしい流麗かつ上品なオーケストラ・スコアで纏めています。
メロディーもしっかりしていて、”Opening Titles”で聴けるメインテーマと、”Anne is Exiled”や
“Anne Charms Henry”などで使われるアン・ブーリンのテーマの2つを中心とした主題曲で
構成されています。CDの収録時間62分とコストパフォーマンス的にもお買い得。
クラシック音楽に興味のある方にオススメしたい一品です。
ちなみにこのカンテロンという方は、若い頃に大変な目に遭いつつも努力してプロの
音楽家になったというエピソードがございます。
一体どういう目に遭ったのかは、私が国内盤CDに寄稿したライナーノーツを読んで
頂ければと思います。
その国内盤CDは、ランブリング・レコーズより発売中。
『ブーリン家の姉妹』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ポール・カンテロン
品番:GNCE7033
定価:2,625円