マイケル・ダナ名作選 / 秘密のかけら -Where The Truth Lies- (2005)

where the truth lies

『ケルティック・ロマンス』のアーティスト、マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る不定期連載企画。

今回はマイケルの作品から、盟友アトム・エゴヤン監督の『秘密のかけら』(05)をご紹介します。

舞台は1972年のLA。新進気鋭の女性ジャーナリスト・カレン(アリソン・ローマン)が、50年代に絶大な人気を誇ったスタンダップ・コメディアン二人組「ラニー&ヴィンス」の伝記を執筆する過程で、彼らが関与したとされる女子大生殺人事件の真相に迫っていくエロティック・サスペンス。

セクシャルな一面ばかりが強調されている作品ですが(まぁ実際キワドイ描写が多いけど)、映画の終盤まで真犯人が分からないトリッキーな物語構成とか、ソフトフォーカスをかけて50年代ハリウッドをセクシャル&きらびやかに再現した映像とか、「酒・ドラッグ・女・マフィア」というショウビズ界の裏の顔を赤裸々に綴ったストーリーとか、なかなか見応えのある内容でした。「大人のためのサスペンス・ミステリー」という表現がぴったりかと。ネットリしたエロティシズムや暴力描写の見せ方に、どことなくブライアン・デ・パルマの初期作品を彷彿とさせるものもありました(ナイトクラブのシーンでは長回しの映像もあったし)。

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『ダークナイト ライジング』のサントラ盤ボーナストラックを検証する

the dark knight rises

おとといAmazonから『ダークナイト ライジング』(12)の輸入盤が届きました。
自分の場合、最終的に940円で買えてしまいました。

「輸入盤とはいえ、超大作のサントラが940円で買えちゃっていいのかなぁ…」などと、柄にもなく円高ドル安をはじめとする経済情勢などあれこれ考えてしまって、非常に複雑な心境になりました。

さて今回のサントラ盤、15曲で52分弱でした。

THE DARK KNIGHT RISES – Original Motion Picture Soundtrack (amazon)

本編が2時間44分ある事、そして前作『ダークナイト』(08)のサントラ盤が収録時間73分強(特装版のDISC2は50分強)だった事を考えると、ボリューム的に何か物足りないという印象があります。この場合のボリュームというのはあくまで収録時間や収録曲数的な話で、音楽の出来はまた別のお話。

が、しかし。どうやらこれはレーベル側も計算ずくの売り方のようで、アルバムをいろんな形態でリリースし、それぞれ違ったボーナストラックをつけて稼ごうという思惑らしい。

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リゾート感覚のジャズ・スコアが心地よい『ラム・ダイアリー』の音楽

rum diary

映画本編は個人的にイマイチだった『ラム・ダイアリー』(11)ですが、
音楽(サウンドトラック)はなかなかよかった。
もしかしたら、映画を観る前にサントラを聴いて、
「音楽がこのクオリティなら映画もイケるはず!」と、
期待値をガーッと上げてしまったのがマズかったのかもしれません。

オリジナル・スコア作曲はクリストファー・ヤング。
本作のブルース・ロビンソン監督とは『ジェニファー8』(92)で組んだ事があるのですが、
ロビンソンがほぼ20年ぶりにメガホンを取った作品で、
ヤングに再び作曲を依頼するというこのエピソードがまず素晴らしい。

で、本作のためにヤングが書き下ろしたのが、
リゾート感覚溢れる珠玉のラテン・ジャズ・スコア。
ラテン・パーカッションやギター、ハモンド・オルガンが織りなすグルーヴが実に心地よいのです。
スコアによってはジャズのみならず、ブルース調の曲もあり。

ヤングというと『ブラックサイト』(08)とか『スペル』(09)とか、
ホラー・サスペンス系のスコアで有名ですが、
『ラウンダーズ』(98)、『ワンダー・ボーイズ』(00)、『シェイド』(03)など、
ジャズ・スコアも非常に巧い作曲家でもあります。
今回はその流れ。今回もジャズ・アルバムとしてのクオリティーはかなり高いです。

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マイケル・ダナ名作選 / ニュースの天才 -Shattered Glass- (2003)

shattered glass

『ケルティック・ロマンス』のアーティスト、
マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る不定期連載企画。

今回はマイケルの作品から『ニュースの天才』(03)をご紹介します。

アメリカの由緒ある(らしい)政治雑誌『ニュー・リパブリック』の若手人気記者スティーヴン・グラス(ヘイデン・クリステンセン)が、
過去複数回に渡って記事を捏造していたという実話を元にした映画。
ヘイデンは「救いようのない嘘つきなのに、人当たりが良くてイケメンなのでつい周りもダマされて甘やかしてしまう」という、
同性からするとかなりイヤな男を好演。
『スター・ウォーズ』のep2と3でラジー賞を受賞してしまったヘイデンですが、
本作ではその汚名返上を果たしております。
この人いい役者だと思うんだけどなぁ。『アウェイク』(07)もよかったし。

ちなみに雑誌編集長のチャックを演じたピーター・サースガードは、
この映画でインディペンデント・スピリット賞とゴールデン・グローブ賞の助演男優賞の候補になり、
全米批評家協会賞で同賞を受賞しました。
相変わらず堅実な芝居をしてます。

さて本作の音楽についてなのですが、
サントラ盤のブックレットにビリー・レイ監督が寄稿したライナーノーツが載っておりまして、
まずこの内容が結構スゴイ。
何しろ書き出しが「マイケル・ダナは私をマヌケ野郎だと思った事だろう」ですから。

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ジェフ・ダナ名作選 / At Sachem Farm (1998)

uncorked

『ケルティック・ロマンス』のアーティスト、マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る不定期連載企画。

今回は弟ジェフの作品から『At Sachem Farm』(98)をご紹介します。

・・・といっても、この映画は日本未公開でDVD化もされてないんですよねー。ノース・カリフォルニアの広大な敷地に住むイギリス人青年ロス(ルーファス・シーウェル)と、婚約者(ミニー・ドライヴァー)、変わり者の叔父(ナイジェル・ホーソーン)、ロスの弟らの人間模様を描いたヒューマン・ドラマといった内容。

映画の内容も地味だし、劇場公開やDVDリリース、TV放映の度にタイトルが”At Sachem Farm”、”Higher Love”、”Uncorked”とコロコロ変わるなど不遇な扱いを受けた映画でもあるのですが、「音楽がいい映画」と当時そこそこ話題になりました。

この映画の途中で、ロスがギターコンサートを開くシーンがあるのですが、この場面の音楽に注目が集まりました。ここで実際にギターを弾いているのが、ルーファス・シーウェル・・・ではなく、映画のオリジナル・スコアを作曲しているジェフ・ダナ本人というわけです。

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