公開前にあちこちから断片的に得た情報で、
恐らく『ゾディアック』(07)の流れを汲む会話劇になるのだろうなーとは思っていたのですが、
この映画の会話のテンションというか緊張感は、
どちらかというと舞台劇のそれに近い印象でした。
映画で言うとジャック・レモンとアル・パチーノが共演した『摩天楼を夢見て』(92)のノリ。
パンフの資料によると、フィンチャーは役者を個別にこっそり呼んで、
「この場面ではお前の言っている事の方が正しいから、絶対に譲るな」と焚きつけてから撮影に入ったそうなので、
役者同士の言葉のやりとりの迫力が半端じゃない。
「自分の方が正しい」という絶対的な自信のもと、
双方がものすごい勢いで主張しまくる。
どちらも絶対に折れない。
実際に日本の職場であんな議論をしたら、人間関係が崩壊しそうです。
さすがディベート大国アメリカ。
いろんな意味でリアルなアメリカ文化を疑似体験出来る映画かもしれません。
それが面白いかどうかは別として、ですが。
『ゾディアック』の撮影時にマーク・ラファロが、
「フィンチャーはカメラを回しっぱなしにするから、トイレに行く時間もなかった」と言ってましたが、
今回も1シーンの撮影に90テイクとか200テイクなんて事もザラだったとか。
このテイク数は拷問に近いですね…。
フィンチャーのこだわりも凄いが、それに応える俳優も凄い。
決して楽しい内容の映画ではありませんが、
テンションの高い俳優の演技は一見の価値ありでしょう。