LOST:Season 3の音楽

さてさて、13日の午後に東京から戻って参りました。映画のマスコミ試写が2本あったの
ですが、これから原稿を書くので、詳しくは落ち着いてからまた後ほど。本日は『LOST』の
シーズン3について少々。

・・・などと書いてみたものの、実はあまりシーズン3は印象に残っていなかったりします。

何というか、前半から中盤あたりまでドラマのテンポが悪くて、ドラマを見ながら「早くメインの
話を進めて下さいよー」と何度思った事か・・・。個人的にはなかなかキツいシーズンでした。
聞けばシーズン3は中盤から視聴率の低下が顕著で、シリーズ最低の数字を記録した
そうで、ま、それも無理ないかな、と思ったりするわけです。

謎を次から次へと提示する割には、解決される要素が少ない。フラッシュバックで見せる
登場人物たちの過去の繋がりも、何だかこじつけっぽい感じになってきたし(ロックの父親が
実はあの人と因縁があった、という展開はどうなんだろう)、第63話「エクスポゼ」に至っては
本筋と全然関係ないエピソードだったし、何だか「ドラマの引き延ばし」感が気になってきたのも
このシーズンでした。

と、まぁ間延びした印象を受けるシーズン3なのですが、生存者たちと他のものたちが全面対決
する後半からかなり盛り返してきました。そしてシーズン最終話で披露するあの手法。一瞬、
何があったのかと思いましたが、少なくとも夢オチとか「実は全員死んでいた」系のオチで片付
ける事はなさそうなので安心しました。ま、今更それをやったら視聴者は間違いなく激怒する
でしょうけれども。

さてシーズン3のサントラ盤なのですが、何とCD2枚組です。そのうちDisc-2はシーズン3の
ラスト3話「グレイテスト・ヒッツ」、「決行」、「終わりの始まり」で使われたスコアが収録されて
ます。なかなかの大盤振る舞い・・・なのですが、CDを聴いて思ったのは、「収録曲が多ければ
いいってもんでもないなぁ」という事でした。ドラマの前半はあまり気を入れて見ていなかった
ので、CDも聴くのはもっぱらDisc-2の方でした。

シーズン3のサントラ盤は国内盤としてのリリースがなかったのですが、これはドラマの
視聴率の落ち込みと、「CD2枚組」という構成に伴う製作費の問題があったんだろうなと
思います。もしこのシーズンが高視聴率で、DVDの稼働率も高かったら、国内盤が出ていた
かも分かりませんけど。

そしてドラマはシーズン4へと進んでいくわけですが、今度のシーズンはドラマ展開がスピー
ディーかつメリハリの効いた感じで実に面白いです。いやー、持ち直してよかったよかった。

(まだまだ、つづく)

  

LOST:Season 2の音楽

というわけで、今回は先日のブログでご紹介した『LOST』の続き。
シーズン2の話でございます。

シーズン1の最終話で、助けを呼ぶためにイカダで島を出たソーヤー、ジン、マイケル、
ウォルトの4人。しかし海上で「他のものたち」に襲われて島の海岸に流れ着き、そこで
815便の後部座席に登場していた生存者たちと対面する事になる、というのが序盤の
展開でしたっけ。

で、その後部座席の人たちというのがロス市警のアナ・ルシア、ヤクザ神父のミスター・
エコー、臨床心理士のリビー、歯科医のバーナードといった割とアクの強い面々だった
わけですが、大半がシーズン2(及びシーズン3の序盤)で死んでしまいましたなぁ。
今も活躍してるのはバーナードぐらいか?先日のシーズン5の放送で、アナ・ルシアが
チラッとゲスト出演してましたが。

個人的にはジャックとソーヤーが気に入っているので、彼らの活躍(あるいは行動)に
特に注目しているのですが、最初のシーズンに比べてソーヤーが徐々にいいヤツに
なりつつあるのが興味深かったです。「斜に構えた皮肉屋だけど、実はいい奴」という、
ドラマ的に一番オイシイ役柄。戦隊ヒーロー物で言うところのブラックのポジションですね。
ジャックとソーヤー、ケイトの三角関係を見ていて『鳥人戦隊ジェットマン』を思い出しました。
あれもレッドとブラックがホワイトを取り合う話でしたからね。

放送当時はそれほどでもなかったのですが、最近TVで覚せい剤事件のニュースを見て
ますと、チャーリーのエピソードが実に興味深いものになってきます。落ち目の芸能人や
ミュージシャンがなぜクスリに走るのかとか、禁断症状はどんなものなのかという描写の
リアルさもさることながら、ドラッグってもんは、せっかく掴みかけた幸せも一瞬でフイに
しちまうものなんだなぁ、と痛感してしまうチャーリーの墜ちっぷりが実に悲しい。

さてシーズン2のサントラは、ライナーノーツの原稿締切が最終話(48、49話)の放送前
だったので、曲タイトルをどうしたものかと死ぬほど悩んだ記憶があります。

“I Crashed Your Plane, Brotha”という曲は「ああ、デズモンドのセリフだなー」と本編を
見ていなくてもすぐ分かったのですが、防護服に身を包んだインマンの登場シーンの曲
“Toxic Avenger”なんて、どんなシーンの曲だか全くイメージ出来ませんでした。「何で
ここで『悪魔の毒々モンスター』の原題が出てくるんでしょうね?」とランブリング・レコーズの
Mさんと話したくらいです。多分、防護服=Toxic=毒々モンスターという言葉遊びだったん
でしょう。余談ですが、『LOST』のサントラは毎回”言葉遊び”の入った曲タイトルが多く、
なかなかレコード会社泣かせ&ライター泣かせな作品でございます。

音楽の雰囲気はシーズン1とほぼ一緒。やや内省的なスコアが増えたかもしれません。
ギターでGrant-Lee Philipsが参加している点が、コアな洋楽ファンにはポイント高いかと。

(まだ、つづく)

『LOST Season 2』オリジナル・サウンドトラック
音楽:マイケル・ジアッキノ
品番:GNCE3068
定価:2,625円

 

LOST:Season 1の音楽

先月からAXNで『LOST』第5シーズンの放送が始まったわけですが、いやーシーズン4も
そうでしたが、なかなか快調な滑り出しじゃありませんか。

映画の場合、その作品が面白いかツマラナイかは最初の20分くらいを見れば大体分かると
言いますが、TVシリーズの場合は第1話・2話の内容や展開で、そのシーズンが面白いか
ツマラナイか判断出来るような気がします。そういう意味では、今回の『LOST』はこれからの
展開に期待が持てそうな感じです。

実はワタクシ、『LOST』のシーズン1と2のサントラ盤にもライナーノーツを書かせて頂いて
おりまして、その関係で『LOST』とは長ーいお付き合いがあったりします。

8/26にランブリング・レコーズさんからリリースになる『LOST:シーズン4』のライナーノーツも
自分が担当する事になったため、先月はシーズン4の音源を聴きつつDVDをレンタルしまくって
延々「おさらい」をしておりました(どの曲がどの話のどの場面で使われたかを再確認する
必要があったので)。

・・・というわけで、シーズン4のサントラ・リリースまでの間に、これまでのシーズンの音楽を
ざざーっと振り返ってみたいと思います。

シーズン1は第1話(いわゆるパイロット版)から凄かった。TVドラマとは思えないほどリアル
だったオーシャニック航空815便の墜落現場のシーンにも驚かされましたが、その場面で流れる
スコア”World’s Worst Beach Party”(←ブラックユーモアのキツいタイトルです)や、謎の
怪物の初登場シーンのスコア”Run Like, Um… Hell”の迫力がまた凄かった。

実は『LOST』の音楽は全編ナマのオーケストラで演奏されてます。やっぱりシンセ・ストリン
グスとフルオケでは、音の厚みや奥行き感が全然違いますね。

基本的にTVドラマの音楽は、予算と製作期間の関係上、シンセを使った打ち込み主体の
スコアになるわけですが、『LOST』のシーズン1ではヴァイオリン26、ヴィオラ16、チェロ10、
コントラバス4、トロンボーン10、ハープ4、ギター3、パーカッション3というかなり贅沢なオケ
編成でスコアを演奏しているのです。

さすが『メダル・オブ・オナー』シリーズでもフルオケ音楽を鳴らしたマイケル・ジアッキノ。
『LOST』でもこだわりのオーケストラ・スコアを聴かせてくれてます。

シーズン1のサントラ盤には『LOST』のメインテーマ”Hollywood and Vines”や「生存者たちの
テーマ」とでも言うべき”Win One for the Reaper”、サンのテーマ”Departing Sun”、ジョン・
ロックのテーマ”Crocodile Locke”など、シリーズを通して使われているメロディーをモチーフに
したスコアが全27曲/65分収録されています。

どれも聴き応えがあるのですが、筆者的にはジアッキノ本人も一番気に入っているエピ
ソードという第23話「迫りくる脅威」のスコア”Parting Words”(ソーヤーたちのイカダが島を
発つシーンの曲)をベストに挙げたいです。

(つづく)

サントラ盤はランブリング・レコーズから発売中。

『LOST』オリジナル・サウンドトラック
音楽:マイケル・ジアッキノ
品番:GNCE3057
定価:2,625円

 

プリズン・ブレイク (Season 3 & 4)

前回シーズン1と2について書いてからちょいと間が空いてしまいましたが、本日は『プリズン・
ブレイク』のシーズン3と4に関する他愛のないお話でございます。

シーズン1で脱獄ドラマ、シーズン2で『逃亡者』のようなドラマ展開を見せた同シリーズですが、
シーズン3はパナマの刑務所”SONA”を舞台に再び脱獄ドラマに戻りました。

しかしまぁ、SONAはフォックスリバーの上を行く劣悪な環境の刑務所ですな。
「ムショ内に刑務官がおらず、ボス格の囚人ルチェロが所内の悪党を全部仕切っている」という設定がナイス。
ムショのモメ事は当事者同士が決闘して解決。
すなわち死んだ奴が負け! 何て分かり易いルールでしょう。

そのSONAにはマイケルが収監されてしまうわけですが、
マホーンとベリック、ティーバッグも一緒。
何とかして塀の外からマイケルを助けようとするのは、
前シーズンで力仕事専門だったリンカーンというのがなかなかスリリングです。
マイケルに比べると明らかに頭脳の点で劣るので、
「ホントにリンク兄貴で大丈夫かいな」と、見ていて非常にハラハラするのです。
案の定、「組織」のスーザン(本名グレッチェン・モーガン)を出し抜こうとしちゃあ失敗するし。

ま、「マイケルやリンクが考えた作戦が、必ずしも成功するとは限らない」というのがこのシリーズの面白さでもあるわけですが。
SONAでのマイケルとその仲間(?)たちの騙し合いも面白い。

シーズン3の見所は、キャラクターの人間関係のビミョーな変化ですね。
その正義感の強さ故に、道を踏み外して組織の手先に成り下がってしまったマホーンの悲哀とか、
前半はそのマヌケな言動で相変わらず笑いを取りつつも、
「サラが×された」という話を耳にした途端に心変わりするベリックの人間くささとかの描写がよい感じ。
でもティーバッグは相変わらず。
ルチェロに取り入る時の卑屈な演技はいつ見ても笑える。
ロバート・ネッパーの芝居は原語(字幕)と若本規夫氏の吹替えで違った味わいがあるので、
一粒で二度おいしい(←古い表現)感じです。

シーズン4はと申しますと、
日本ではまだ後半のDVDがレンタル開始になっていないのであまり詳しい事は書きませんが、
脱獄ドラマから一転、『スパイ大作戦』とか『特効野郎Aチーム』のようなドラマ展開になります。

「こりゃちょっと唐突すぎないか?」とか、
「今まで自由を求めて警察とかFBIから散々逃げ回っていたのに、結局国家権力の手先になっちゃうわけ?」
などと最初のうちは違和感があったのですが、これはこれで結構楽しめて見られてしまうんだな。

特にマホーンとリンカーンが和解するエピソードとか、
目立った活躍のなかったベリックが人生最大の男気を見せるエピソードとか、
泣ける展開が多くて、なかなかアツいシーズンになってます。
ドラマを見ていて目頭が熱くなったのは久しぶりでした。

唯一気になったのは、
シーズン4になってマイケル(というかウェントワース・ミラー)がちょっと太めになった事ですかね。
彼の持病が悪化して任務遂行に支障が・・・というのがシーズン4のドラマのキモになっているのに、
ぽっちゃりして病的に見えないというのはどうしたものか。
後半のエピソードになったら痩せるんだろうか。

・・・というわけで、前作に引き続き、
ランブリング・レコーズさんからシーズン3と4の代表的なスコアをコンパイルしたサントラ盤が7/22にリリースになります。音楽のノリはこれまでのシーズンとほとんど一緒。
耳慣れたメロディーが違うアレンジで演奏されたりするので、
前作のリミックス・アルバム的な楽しみ方もできそうな気がします。
“Dirt Nap”とか”Fin Del Camino”、”Breaking and Entering”などはなかなかカッコいい感じのスコアではないかと。

今回はシリーズ完結記念ということで、
日本版ブックレットには音楽担当のラミン・ジャワディ氏のコメントが載っています。

ジャワディ氏の好きな登場人物とか、
作曲者本人が語る『プリズン・ブレイク』の音楽の魅力とか、
作曲にまつわる苦労話とか何とか話してくれましたので、
ぜひぜひ国内盤をよろしくお願い致します。
日本のファンへのメッセージ&サイン(印刷だけど)も付いてますので。

『プリズン・ブレイク Season 3 & 4』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ラミン・ジャワディ
品番:GNCE-7058
定価:2,625円

プリズン・ブレイク(Season 1 & 2)

今月から『プリズン・ブレイク』ファイナル・シーズンのレンタル開始という事で、
ドラマをずーっと観てきたワタクシなどは、
何かこう、最終シーズンを迎えて感慨深いものがありますな。

ランブリング・レコーズさんからリリースになっている、
『プリズン・ブレイク』のサントラ盤(シーズン1と2の音楽を収録)のライナーノーツを書かせて頂いたのですが、
その際に何度も何度も本編を観たせいか、
キャラクターに愛着が湧いてしまいました。
大半がフダ付きの悪党なのにねぇ…。

視聴者人気が高いキャラは誰なんでしょう。
うーん、マリクルースひと筋で義理堅いチンピラのスクレ(アマウリー・ノラスコ)とか、
ロバート・ネッパーの怪演と、
若本規夫氏の強烈な日本語吹替えの相乗効果でキャラが立ちまくりのティーバッグとか、
もともと隠れファンの多かったウィリアム・フィクトナーが演じるマホーン捜査官あたりでしょうか。

個人的には、彼らに加えてベリック(ウェイド・ウィリアムズ)にも注目してます。
この人、自業自得とはいえ刑務官→賞金稼ぎ→囚人と波乱の人生を送るハメになって実に哀れを誘うんですが、
結構間が抜けていて言動が笑えるところがミソかな、と。

シーズン3の話になりますが、
パナマの刑務所でズルして決闘で勝ってしまうくだりなんかは、
ベリックの憎めない小悪党ぶりがうまく出ていてナイス・エピソードです。
この人に今後どういうドラマが用意されているのか、密かに楽しみだったりします。

さて『プリズン・ブレイク』の音楽なのですが、
ハンス・ジマーの主宰する音楽家集団「リモート・コントロール」所属のラミン・ジャワディが担当しています。
『Mr.ブルックス完璧なる殺人鬼』(07)や『アイアンマン』(08)など、
このドラマの仕事を経て一気に売れっ子になりました。

サントラ盤にはシーズン1と2の代表的なスコアが収録されているのですが、
ドラマの主要キャラはシーズン1でほぼ全員出揃っているので、
いわゆる彼らのテーマ曲的な音楽はCDにほとんど収録されています。

「プリズン・ブレイクのテーマ」とでも言うべき「Strings of Prisoners」を始め、
ティーバッグが画面に登場する時のフリーキーな曲(T-Bag’s Coming For Dinner)とか、
アコースティック・ギターを使ったスクレのテーマ曲(Sucre’s Dilemma)など、
4シーズン通して使われているメロディーも多々あります。

スコアの基本構成は「シンセ・ストリングス+打ち込みのリズム+生楽器(orサンプリング)」みたいな感じです。
『プリズン・ブレイク』の音楽で最も耳に残る「♪ すきゃぼぼぼー」という掠れたバンブー・フルートのような音も、
多分サンプリングで作ってます。

『24 -TWENTY FOUR-』のようにヒロイックなメロディーを聴かせるタイプの音楽ではありませんが、
「漢(おとこ)っぽさ」を感じさせる硬派なスコアという印象ですね。
渋カッコイイです。

ジャワディはクラウス・バデルトの『リクルート』(03)とか、
ジマーの『バットマン ビギンズ』(05)などの追加音楽を担当しているのですが、
『プリズン・ブレイク』のサントラ盤を聴いてから(追加音楽を手掛けた)別な映画のサントラを改めて聴き直すと、
「ジャワディはこの曲(あるいはスコアのこの部分)を担当したんじゃないの?」とピンと来る箇所が結構あります。

お手元にジマー/ジャワディ関連のCDのある方は、ぜひお試しあれ。

『プリズン・ブレイク』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ラミン・ジャワディ
品番:GNCE-7004
定価:2,625円