『ワールド・ウォーZ』のサントラ盤にMUSEとThis Will Destroy Youの曲を追加した話

当方は地域的にテレビ東京「午後のロードショー」を観られない環境に住んでおりますが、SNSなどで「明日の放送作品はこちら」というお知らせを見かけると「ふーん、せっかくだから久々にその映画のサントラでも聴こうかな」という感じで、日々鑑賞するサントラの指針になることも多々あります。
そして時には「ああ、そういえばあのサントラ盤に曲を補完しようと思って先送りしていたっけ」と思い出すこともあります。

今週午後ローで放送の『ワールド・ウォーZ』(13)は後者、すなわち「サントラに未収録の曲を自前で追加するか」と思い立った作品でした。

『ワールド・ウォーZ』のサントラ盤自体は当時ワーナーから発売になっていて、スコア作曲が自分の大好きなマルコ(・ベルトラミ)さんだったので、即予約注文して買いました。

World War Z / Music from the Motion Picture – amazon music

当時のブログでもあれこれ書いていたのかな。高速オスティナートを使った疾走感のあるホラー音楽が実にマルコさんらしくて面白いです。音響的なシンセの使い方も面白い。

マルコさんの友人でもあるトミー・リー・ジョーンズの発案で、噛みついて襲ってくる”Z”な方々の脅威を音楽で表現するため、ペッカリーの頭蓋骨の音(顎/歯をカチカチ鳴らしたと思われます)を打楽器の一種として使ったそうですが、どれがその音なのかというのは曲を聴いてもよく分かりません。まあ「そういう音を使ってます」程度に覚えておくと面白いかなという感じ。

アルバムにはマルコさんの劇伴を11曲収録していて、プレイタイムは44分くらい。
映画本編が1時間56分あったことを考えると明らかに量が少ない。

本作は度重なる脚本のリライトや追加撮影、公開スケジュールの遅れなどポストプロダクションでゴタゴタしていたので、サントラ盤も中途半端な形で出さざるを得なかったのかもしれません。本来使うはずだった劇伴が最終カットでボツになった可能性もあります。
そのような事情で劇伴が映画本編であまり流れなかったにしても、あと15分くらいはあったのではないかという気もしますが。

そして劇中で使われていたMUSEの”The 2nd Law: Isolated System”と”Follow Me”もアルバム未収録。
ワーナー側としては「MUSEの曲はサントラではなく彼らのアルバムを買って聴いて下さい」ということなのでしょう。そんなわけで、まずはこの2曲を自前で追加しました。

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『サドン・デス』は初期ジョン・デブニーのアクション劇伴の傑作のひとつではないかと思う。

先頃「午後のロードショー」で『サドン・デス』(95)の放送があったとき、「あー、この映画はなんとなく観に行ったら思った以上に面白くて、映画館で続けて2回観たっけなぁ」などと在りし日を偲んでおりました。

自分が「『サドン・デス』なかなかいいぞ」と思った理由のひとつは、まずパワーズ・ブースの悪役演技が見応えあったから。
そしてもうひとつは、ジョン・デブニーの派手に鳴らすタイプのアクションスコアが見事に当方のツボにハマったからでした。

デブニーの音楽が気に入ったのに、なぜ当時の自分はサントラ盤を買わなかったのか。
たぶんまだジョン・デブニーという作曲家のことをよく知らず、サントラの購入を先送りしてしまったのだと思います。
あとはこの時期のVarese盤サントラあるあるなのですが、CDの収録時間が30分台で少なかったせいもあったたかもしれません。

通常版サントラはデジタル版で入手可能
Sudden Death (Original Motion Picture Soundtrack)

そうは言っても力作スコアであることに変わりはなく、「やっぱりサントラ買っておけばよかったな。デジタル版でもいいから買っちゃうか」などと考えていたところ、Vareseからデラックス・エディションのサントラ盤が2,000枚限定リリースになったので即オーダーしました。

Sudden Death (Deluxe Edition) – TOWER RECORDS
※デラックス・エディションのサントラはデジタル版も出てます。
Sudden Death (Original Motion Picture Soundtrack / Deluxe Edition) – amazon music

CDを外したバックインレイのトレイ側の写真がこのシーンなのもよく分かってる感じ。着ぐるみとヴァン・ダムの本気バトルは本作の見せ場のひとつでしたからね。

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格闘技の「打撃音」と父子の「距離感」を疑似体験させてくれる、『ウォーリアー』のマーク・アイシャムの音楽

隠れた名作として根強い支持を集める映画『ウォーリアー』(11)が、1週間限定で上映されるとのこと。

この作品、日本では当時劇場未公開で4年後にDVDリリースとなったわけですが、「なぜこんな名作を劇場公開しなかったのか」と思う前に、本国での公開が2011年9月であったことに気づかなければいけないのかもしれません。

今更申し上げるまでもなく、2011年といえば日本では3月に東日本大震災があった年であり、9月はまだ復興の道すがら。
映画の興行も震災で受けたダメージをまだ引きずっていたと思われるので、「確実にヒットが見込めそうな作品」でもない限り、何でもかんでも劇場公開できる状況ではなかったのだと思います。この映画の場合「総合格闘技」という観る人を選ぶ題材を扱っているため、良質な作品ではあっても万人受けする作品ではない…と判断されたと考えられます。

仮にそうだったとしても、DVDリリースが実現するのにさらに4年もかかっていた事実にいささか驚きますが、発売元も日本でこの映画をどう売り込むか頭を悩ませていたのかもしれません。『マッドマックス/怒りのデス・ロード』(15)のヒットでトム・ハーディの顔と名前が広く知られるようになって、ようやく「カリコレ」での限定上映を経て「マッドマックスのトム・ハーディ主演」というキャッチコピーでDVDリリースに漕ぎ着けることができたと。たぶんそんな感じだったのだと思います。

日本においては「アメリカでの公開時期が悪かった不運な映画」だったとも言えるでしょう。

Warrior (Original Motion Picture Soundtrack) – amazon music

マーク・アイシャムの音楽が好きな自分は、映画本編を観る前にサントラを買って“予習”して聴いていたため、DVDで映画を観る頃にはアイシャムの劇伴が全て頭の中に叩き込まれているような状況でした。

せっかくなので、今回の期間限定上映の機会に劇伴の聴きどころなどご紹介したいと思います。

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坂本龍一 『侍女の物語』のサントラ盤を聴いて気がついたこと。

前回のブログの続きです。

当方が所有している『愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像』(98)と『侍女の物語』(90)のサントラ盤について、ひとつにまとめて話を書こうと思ったものの、『愛の悪魔』のお話が長くなったので二回に分けました。

今回は『侍女の物語』のサントラについて書かせて頂きます。

自分の手元にあるのは1枚目の写真のアルバムなのですが、このジャケットは輸入盤のものです。

しかしバックインレイには日本語が書かれておりまして、盤面を見ると発売元もJapan Records(徳間ジャパン/徳間コミュニケーションズ)となっておりました。ちなみに国内盤サントラのジャケ写はこれ(↓)だったようです。

「なんで自分の持っているサントラは輸入盤と国内盤がごっちゃになっているんだ?」と本気で悩みました。このサントラは中古CD店で買ったので、店頭に並んでいた時点で既に変な製品だったのだろうかとも思いました。
気になって気になってネットで情報を漁り、当時(30年近く前)のことを必死に思い出した結果、このいびつな仕様の理由が分かりました。

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坂本龍一 『愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像』のサントラ盤を聴いて思い出したこと。

先月下旬、X(旧Twitter)で坂本龍一の名前がトレンドに上がっている期間がありました。
「なぜこの時期に?」と思いましたが、どうやら教授が監修した公式楽譜集『オフィシャル・スコアブック 坂本龍一 /04』『オフィシャル・スコアブック 坂本龍一 /05』が復刻・発売になるというニュースの関係だったようです。

オフィシャル・スコアブック 坂本龍一 /04 復刻版 – TOWER RECORDS
オフィシャル・スコアブック 坂本龍一 /05 復刻版 – TOWER RECORDS

せっかく名前をSNSでお見かけしたことだし、今日は教授のサントラを聴いて過ごそうかな…と思い立ち、近頃あまり聴く機会のなかった『愛の悪魔/フランシス・ベイコンの歪んだ肖像』(98)と『侍女の物語』(90)のサントラを聴くことにしました。

曲を聴きながらそれぞれジャケットを眺めていると、「そういえば…」と気がついたこと、思い出したことがいろいろと出てまいりました。せっかくなのでブログのネタにさせて頂きます

LOVE IS THE DEVIL – Original Soundtrack Recording – amazon
LOVE IS THE DEVIL Original Soundtrack Recording – TOWER RECORDS

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