THE 4TH KIND

the 4th kind

この『フォース・カインド』(09)という映画、先月上旬に内覧試写を観に行った時には貰った資料に12/23(水)公開予定と書いてあったんですが、どうやら18日(金)に変更になったようですな。

プレス資料の裏に「ネタバレになるような表現を使用されての(記事・宣伝の)ご掲載に関しましてはご配慮下さい」と書いてあるので、その言いつけを守るとなると、非常に紹介が困難な作品なんですよねー。でもまぁ、その辺に気をつけてあれこれ書いてみたいと思います。

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パブリック・エネミーズ(音楽について)

publicenemies

マイケル・マン映画に欠かせないものと言ったら、
そりゃもう凝りに凝った選曲で聞かせるサウンドトラックに他ならないわけで、
今回も男臭い世界を彩るクールで激シブな楽曲がズラリと揃いました。

まず映画の予告編で使われるや否や
「このカッコイイ曲は何?」とサントラ・ファンの関心を集めたギター曲ですが、
これはブルース・ミュージシャンのOtis Taylorが歌う”Ten Million Slaves”という曲。
映画ではもう一曲、テイラーの”Nasty Letter”という曲が使われているのですが、
こちらは本作より先に『ザ・シューター/極大射程』(07)のラストで使われてました。
どっちも激シブでイカす曲なんですが、
個人的には後者の方がお気に入り。
なぜかというと、映画の中でなかなかスタイリッシュな曲の使われ方をしているから。
強いて言うなら、『コラテラル』(04)でAudioslaveの”Shadow On The Sun”が使われた時の、
あのノリに近いかもしれません。

そんなテイラーの曲も秀逸なのですが、
それ以上に本作のサウンドトラックを語る上で欠かせないのが、
ダイアナ・クラールが歌う”Bye Bye Blackbird”でしょう。
映画では序盤のクラブのシーンで流れるのですが、
この曲はそれ以降もビリーとデリンジャーの関係を象徴する曲として重要な意味を持っていきます。
映画のラストではこの曲の題名に引っかけたセリフのやり取りがあるのですが、
これがまた泣ける。
少々クサい演出だけど泣ける。
「硬派なフリしてロマンティスト」というマイケル・マン節が炸裂する名場面といえるでしょう。

その他、サントラ盤にはビリー・ホリデイの曲が3曲、
ブルース・フォーラーのスウィング・ジャズ、
Blind Willie Johnsonの陰鬱なブルース、賛美歌などが収録されています。

オリジナル・スコアの作曲は、『ヒート』(95)以来久々のマン作品登板になるエリオット・ゴールデンサル。
『タイタス』(99)とか『エイリアン3』(92)のあの個性的なスコアに比べると、
今回はかなり抑制の利いたサウンド。テーマ曲の哀愁のメロディーが印象的です。

マイケル・マンは既存のスコアを使い回す事も結構多いのですが、
特に『ヒート』のスコアが今でもお気に入りらしく、
『コラテラル』と『マイアミ・バイス』(06)でも一部のスコアを使い回していましたが、
今回も”Hanna Shoots Neil”を使ってました。

エンドクレジットによると、
その他にも『悲しみが乾くまで』(07)からヨハン・セーデルクヴィスト&グスターボ・サンタオラヤの”After the Shooting”、
『シン・レッド・ライン』(98)からジョン・パウエルの”Beam”(音楽はハンス・ジマー担当でしたが、このスコアに関してはパウエル作曲だったらしい)を使っていた模様です。
テンプ・トラックで使った曲をそのまま完成版に使ったのかな。
せっかくゴールデンサルと組んだんだから、曲を書き下ろしてもらえばいいのに…とも思いますが。

何はともあれ、サントラ盤はゴールデンサルの重厚なスコア7曲と、
ブルース/ジャズを中心にセレクトした歌モノ9曲を収録した、
渋いコンピレーション・アルバムに仕上がっております。
マン作品のサントラにハズレなし。

アーティストについてはライナーノーツで簡単に紹介させて頂きましたので、
そちらの方も併せて目を通して頂ければと思います。

 

『パブリック・エネミーズ』オリジナル・サウンドトラック
音楽:エリオット・ゴールデンサル他
品番:UCCL-1150
定価:2,500円

 

The Time Traveler’s Wife

the time traveler's wife

昨日は映画館に行ったら、映画の日でも何でもないのにチケット売り場に行列が。何でかなー
と思ったら、『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』の公開初日だったんですね。

自分が観に行ったのは『THIS IS IT』ではなく『きみがぼくを見つけた日』(09)だったので、
本日はそのお話をダラダラと。

この映画、原題は『The Time Traveler’s Wife』なんですが、何だかずいぶん特徴のない邦題に
なってしまいました。ま、既に原作小説がある作品ですし、過去に『タイムトラベラー きのうから
来た恋人』(99)という映画もあったので、今回「タイムトラベラー」という言葉が使えなかったのかも
しれません。時空旅行がキーの話だけに、ちょっと第一印象で損をしているような気がします。

本作は「自分の意思とは関係なく、日常生活中に突然、不特定の場所・時間に時空旅行して
しまう」という特異体質を持った男ヘンリー(エリック・バナ)と、幼い頃に彼と運命的な出会いを
果たした良家のお嬢様クレア(レイチェル・マクアダムス)の悲恋ドラマ。「自分の意思とは関係
なく云々」というのは、『LOST』第4シーズンのデズモンドのような感じですかね。

ひと昔前までは、こういうタイムトラベル作品(例えば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ)は
「過去を変えたら現在や未来はどうなる?」というタイムパラドックス的な要素が物語の重要な
ポイントになったわけですが、『LOST』といい本作といい、どうも最近は「起きてしまった過去の
出来事は変えられない」という考え方が浸透しつつあるようです。

本作の脚本(=脚色)を手がけたのが『ゴースト/ニューヨークの幻』(90)、『ジェイコブス・ラダー』
(90)などのブルース・ジョエル・ルービンという事で、映画の後半から独自の死生観に基づいた
運命論的な話になります。「この世での死が全ての終わりではない」というような展開は、過去の
作品のテーマと共通するものがあるような気がしました。

・・・と、まぁ異色の恋愛ドラマが展開する本作ですが、物語の世界を異色たらしめているのは
マイケル・ダナの音楽によるところも大きいのではないかな、と自分は思います。ピアノや弦、
木管で奏でられるミニマリスティックなメロディーは甘すぎず冷たすぎず、劇伴として実にいい
感じのバランス。登場人物の心理状態を観客に想像させる余地を残しているので、感動を強要
するような押しつけがましさがない。言わば和食のような慎ましい味わいの音楽。『17歳のカル
テ』(99)とか『偶然の恋人』(00)の音楽も抑えた感じで良かったもんなぁ。

サントラ盤には、ヘンリーとクレアの結婚式のダンス・パーティーの場面で流れる”Love Will
Tear Us Apart”(Joy Divisionのカヴァー)も収録。この曲がこういう風に化けるとは思わな
かった。ムード歌謡風というのでしょうか。ちょっと衝撃。

CDの最後にLifehouseの”Broken”が収録されていたので、てっきりエンドクレジットで使われる
のかと思いましたが、エンドクレジットはスコアのメドレーでした。この曲はイメージソングという
扱いなんでしょうか。もっとも、今回はダナのスコアで〆て正解だったと思いましたが。

   

もうひとつの『アドレナリン:ハイ・ボルテージ』サウンドトラック

crank high voltage EP

大したネタじゃないし、書こうかどうしようか考えたのですが、せっかくなので『アドレナリン:ハイ・ボルテージ』(09)関連のネタをもうひとつ。

『ハイ・ボルテージ』は、マイク・パットンのスコア盤がLakeshore Recordsからリリースになっている事を前々回に書かせて頂きましたが、劇中使用曲を7曲収録したミニアルバム『Crank: High Voltage EP』がiTunes限定でこっそりリリースになっていたりします。

収録曲は以下の通り(曲名/アーティスト名)。

1. Honky Tonk Badonkadonk / Jarrett & Long
2. F**k You Tough Guy / T.S.O.L.
3. La Noche / Los Mil Amores
4. Suck My D**k! (X Rated Club Edition) / Dickheads
5. Unmei / Love and Hate
6. Spacer / Raney Shockne
7. Tears on My Pillow Little Anthony and The Imperials

Jarrett & Longは、前作『アドレナリン』(06)でビリー・レイ・サイラスのヒット曲をカヴァーしたカントリー・ロック・アーティスト。監督に気に入られてまた起用されたんだろうなぁ。

5曲目の”Unmei”はどういうわけか日本語の女性ボーカル曲。チープなテクノ風味のオケと「♪そーらをー見上げるとーきーあなーたも見てるー ♪It’s Destiny, I find You」というノーテンキな歌詞が印象に残る珍奇な一品(誰が歌っているのかは不明)。映画の中でもひときわ異彩を放っておりましたね、そういえば。

劇中最も目立った使われ方をしていたREO Speedwagonの”Keep On LovingYou”は、やはりというか何というか「大人の事情(=たぶん権利関係)」で収録されませんでした。といっても、この映画が好きでサントラに興味がある方の6割は『グランド・セフト・オート:バイスシティ』が好きで、そのうちの3割の方は『バイスシティ』のサントラも持っていると思うので、Emotion 98.3を聴けばこの曲が収録されているのでレッツ・トライ。

ちなみにネヴェルダイン/テイラー監督の新作は、ジェラルド・バトラー主演の近未来暴力ゲーム・アクション『Gamer』(09)。主演俳優の人選といい、映画のテーマといい、「無骨な男にイカレたアクションをやらせる」という点で一貫したものがありますな。楽しみだけど。

『Gamer』オフィシャルサイト(英語)
http://gamerthemovie.com/