トロピック・サンダー

昨日、TSUTAYAに寄ったらDVDがレンタル開始になっていたので借りてきました。

まぁ、去年映画館で見てるんですけどね。このテの映画は初見だといろいろ
小ネタとか見逃しがちなので、DVDでしっかり観ようと思ったわけです。

しかしアレだ、いつ見てもスゲェ映画だなと(笑)。手間暇かけて(+お金も)バカをやるというのはヒジョーに痛快です。コメディーっていうのは、基本的に大まじめにバカをやらなきゃダメなんですよ。フザケた映画でも、やってる本人はフザケちゃいけないという。

冒頭のフェイク予告編も凝ってますな。いちいち配給会社のロゴまで出してくれるんですが、『スコーチャー6』がユニバーサルで『ファッティーズ2』がニューライン・シネマ、『悪魔の小路』がフォックス・サーチライトってのがまた「よく分かってるな」と。
配給会社の作品傾向をキッチリ押さえてます。

本編については、あちこちの映画誌やらブログやらで言及されているだろうからここでは割愛。そのかわり劇中の音楽についてちょっと触れさせて頂きます。

ベン・スティラーは自身の監督作で毎回ポップ・ミュージックをガンガン流すのですが、
今回は「ベトナム戦争映画でありそうな曲」をテーマに懐メロをセレクトしております。

映画冒頭のThe Temptationsの「Ball of Confusion (That’s What the World is Today)」を筆頭にローリング・ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」、Ten Years Afterの「I’d Love to Change the World」、Steppen Wolfの「The Pusher」、Buffalo Springfieldの「For What It’s Worth」、ニック・ノルティが火炎放射器をブッ放すシーンで数秒だけ使われるThe Edgar Winter Groupの「Frankenstein」など、まぁ見事なラインナップです。立て続けに聴くと退廃的な気分になる事うけあい。

『ファッティーズ2』の予告編でQuiet Riotの「Cum On Feel the Noize」が使われているんですが、これは「Feel the Noize=オナラの音を聴け」って事でしょうか。

あと予告編といえば『悪魔の小路』ではEnigmaの「Sadness, PT.1」が使われておりまして、これがまた見事なハマリっぷり。あの映画のああいう場面にこういう曲を持ってくるセンスがたまりません。

タグのエージェント、リック(マシュー・マコノヒー)のケータイの着うたがDan Hillの「Sometimes When We Touch」というのも、ありがちでナイスな選曲。

ハゲヅラ装備のトム・クルーズが『卒業白書』(83)の如く踊りまくる曲は、Flo Rida featuring Faheem Najmの「Low」とLudacrisの「Get Back」。
後者はエンドクレジットの曲です。トム様とヒップホップという組み合わせが絶妙。

トドメは劇中とエンドクレジットで合計2回使われるThe Crystal Methodの「The Name
of the Game」。映画ファンには『ブレイド2』(02)とか『バリスティック』(02)でもおなじみの曲ですな。

で、スコア作曲は『俺たちフィギュアスケーター』(07)のセオドア・シャピロ。
ギターがギャイーン!打楽器がドンドコドコドコ!みたいな感じで、コメディー映画らしからぬむやみにアツい音楽で盛り上げてくれますぞ。

さてサントラ盤はと申しますと、Lakeshore Recordsからコンピ盤とスコア盤の2種類がリリースになってます。コンピ盤は大半の曲を押さえてありますが、ストーンズやリュダクリス、バッファロー・スプリングフィールドの曲は未収録。
このあたりがちと残念ですが、まぁストーンズの曲はなかなかサントラ盤に収録されませんからね。『カジノ』(95)とか『ザ・ファン』(96)もそうでしたし。

何にしても、2枚まとめて聴けばお腹いっぱいというか、とても暑苦しい気分になるので、ハイになりたい時にオススメ。

ジャケットもむさ苦しい+暑苦しい感じでステキです。

24:リデンプション

『24 -TWENTY FOUR-』も今年でシーズン7に突入という事で、昨年11月にアメリカで
放送された『24:リデンプション』が今月19日からDVDリリースになります。

『リデンプション』はシーズン6と7を結ぶ2時間のスペシャル放送です。シーズン6で
身も心もボロボロになってしまったジャック・バウアー(キーファー・サザーランド)が、
安息の地を求めてアフリカ・サンガラに隠れ住むも、結局そこでも内戦のゴタゴタに
巻き込まれて闘いに身を投じるハメになる、というお話。

ジャックは捜査活動中の不法勾留や(シリーズ名物の)過剰な拷問が上院で問題に
なったので、アメリカ本国から召喚命令が下っております。
確かにシーズン6もカーティス(ロジャー・クロス)を撃ち殺したり、身内を拷問したり、
ロシア総領事館に乗り込んだり、やりたい放題だったもんなぁ。まぁ、カーティスの件は
アサドとの遺恨絡みでいろいろあったわけですが、容赦なく射殺せんでも・・・ねぇ?

核弾頭も爆発したし、シーズン6はかなりムチャクチャな内容だったような・・・。
(アレはやっちゃいかんでしょ。相変わらず放射能汚染の描写はテキトーだし)

で、話を『リデンプション』に戻しますと、ジャックにその召喚状を持ってくる慇懃な
大使館員トラメル役が『アリー・myラブ』でビリーを演じたギル・ベロウズなんですが、
何か・・・ちょっと見ないうちに随分ルックスが変わったなぁ、と。果たしてあれは
役作りなのか、今のベロウズが素でああいう感じなのか。後者だったらちょっと
悲しいものがあります。

ジャックの友人ベントン役はロバート・カーライル。元特殊部隊員という設定の割には
ちょっと華奢な気もしますが、まぁ相変わらず幸薄そうな感じでいい味出してます。
実際、本編ではやっぱり不幸な展開に(以下略)。

・・・というわけで、今回のエピソードはジャックがいかにして己の罪と向き合い、
過去にオトシマエをつけるのかが重要なテーマになっています。まさにジャックの
「贖罪と救済(=Redemption)の旅」を描いたドラマというわけですな。ストーリー
後半のジャックの「決断」をお見逃しなく。

音楽はTVシリーズ版と同様ショーン・キャラリーが担当。相変わらずビートの効いた
アグレッシヴな音楽を鳴らしてくれます。ただ今回は舞台がアフリカという事で、
民族楽器の音をサンプリングしてスコアの随所で使ってます。なので、いつもとちょっと
違う感じ。TVシリーズの時よりも荒削りな感じの音楽が多いです。

あと、最近の戦争映画のスコアで定番になりつつある「祈りのような女性ヴォーカル」が、
ドラマティックなパートで時々聞こえてきます。『ブラックホーク・ダウン』(01)で言うところの
リサ・ジェラード的役割ですね。

決して『トロピック・サンダー 史上最低の作戦』(08)の音楽を思い浮かべてはいけません(笑)。
ま、歌っているのは『トロピック・サンダー』と同じリズベス・スコット女史なんですけどね・・・。
何はともあれ、シリーズのファンなら押さえておきたい一品でしょう。

ワタクシも楽しんでライナーノーツを書かせて頂きました。

サントラ盤はランブリング・レコーズから今月18日発売です。

『24:リデンプション』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ショーン・キャラリー
品番:GNCE7046
定価:2,625円

   

ロックンローラ

東京から戻ってきてから、毎年恒例の花粉症の症状が出て来てしまいました。
どうもこの前の東京は花粉の飛散量が多かったらしく、花粉をたんまり
吸い込んで仙台に帰ってきてしまったらしいです。

これから拷問のような日々が続くのだなぁ、と思うとちょっとユーウツです。

ま、それはさておき、先日『ロックンローラ』(08)を観て参りました。

マドンナと結婚してすっかりダメになってしまったガイ・リッチー監督の復活作!
・・・として知られる同作ですが、何だか海外での前評判の割には、日本では
いつの間にか公開日が決まっていて、さしたる宣伝もないままガーデンシネマで
上映されていたような気がします。勿体ないなぁ。面白かったですよコレ。

お話の構成はいつもの通り。ロンドン不動産ビジネスの大金を巡って、マフィアの
ボス・レニー(トム・ウィルキンソン)とその腹心アーチー(マーク・ストロング)、
胡散臭いロシア人実業家(カレル・ローデン)とその会計士ステラ(タンディ・ニュー
トン)、街のチンピラ・ワンツー(ジェラルド・バトラー)とその仲間たち、そしてヤク
漬けのロックスター・ジョニー(トビー・ケベル)がてんやわんやの大騒ぎ(←死語)を
繰り広げるという感じ。

「何の接点もないキャラ同士が、やがて1つの事件で繋がっていくストーリー」、
「複雑にこんがらがったプロットを整理するクールなナレーション」、「ガチャガチャ
したカメラワーク」、「イカす音楽」。もう、やってる事はほとんど『ロック・ストック&以下略』
とか『スナッチ』(00)と全く同じ。

でも、これがいいんですな。だって、マドンナが主演ってだけでアレだった『スウェプト・
アウェイ』(02)とか、カバラ神秘主義にドップリ浸かってヤバ気な出来だった『リボ
ルバー』(05)とか、正直イマイチだったんだもん。「こんなガイ・リッチー映画は観たく
ない!」と誰もが思ったはず。

だから、こうして原点回帰してくれたのは素直に嬉しい。これなら次回作の『Sherlock
Holmes』(09)も期待していいような気がします。

キャストでは、ガキ大将がそのまま大人になったようなジェラルド・バトラーの演技が
なかなかいいですな。『P.S. アイラヴユー』(07)のやんちゃなダメ亭主が更にダメに
なった感じ(笑)。何か、この人が女性ファンに人気がある理由が分かった気がする。
こういうガキ大将っぽいところが母性本能をくすぐるんだろうな、きっと。

あと、マーク・ストロングは最近売れてますね。前日に観た『バビロン A.D.』(08)にも
出てましたよ。『ワールド・オブ・ライズ』(08)とか『リボルバー』にも出てましたしね。
確かにダンディーな感じでカッコいいよなぁ。「細身のアンディ・ガルシア」って感じかな。

サウンドトラックもナイスなコンピレーション。オープニングで派手に流れるBlack Strobeの
「I’m A Man」とか、ジョニーがクラブの用心棒をブチのめすシーンのThe Subwaysの「Rock &
Roll Queen」なんかはアッパーで最高。ワンツーとロシア人2人組のアクション・シーンの
The Hives「The Stomp」からThe Scientists「We Had Love」への流れなんて、映像との
見事なハマりっぷりに脱帽です。笑えるんだけどカッコイイというか。

特筆すべきは、若い頃のジョニーがThe Clashの「Bank Robber」を鏡の前で歌っていて
義父のレニーに折檻されるエピソードですかね。子供なのに選曲が実にシブイ(笑)。
こうしてみると、確かにジョニー・クイドこそ真のロックンローラですな。

未見の方は観ておいて損はないですぞ。

3月17日追記:『ロックンローラ』のサントラ盤は、Universal Musicからリリースになってます(輸入盤)。

    

パッセンジャーズ

さてさて、本日は『レイチェルの結婚』(08)でアカデミー主演女優賞にノミネートされたアン・ハサウェイ主演作『パッセンジャーズ』(08)のご紹介です。

こういう映画は予備知識ナシで観に行った方が断然面白いので、ストーリーについては「飛行機事故の生存者をめぐるサスペンス」という程度で詳細は伏せさせて頂きます。ま、カンのいい人は途中で結末が分かるかもしれませんが、だからといって「オレ、オチが分かっちゃったもんねー」と得意顔で吹聴するのは野暮ってもんです。

この映画で重要なのは、そこに至る「過程」なんですな。サントラ盤の解説にも書きましたが、『パッセンジャーズ』は「結末」ではなく「過程」をじっくり味わって頂きたいと。ワタクシはハーヴェイ・カイテルの「あの映画」とか、ユアン・マクレガーの「あの映画」の世界観が大好きなので、ラストは不覚にも目頭が熱くなりました。

特にパトリック・ウィルソンの演技がいいんですよ。『リトル・チルドレン』(06)で「プロム・キング」を演じたあの人なんですが、この映画ではミステリアスな生存者エリックを演じております。登場した時は大惨事で死にかけた割には妙に平然としていて、診察を口実にクレアをナンパしたりするヤサ男なのですが、映画が後半に進むにつれて繊細かつ包容力のある面を見せてくれたりして、なかなかカッコイイではないかと思ってしまったわけです。

女性ドラマを得意とするロドリゴ・ガルシア監督だけあって、アン・ハサウェイもかわゆく撮れてます。一応キャリアウーマン的役どころなのでしょうが、イマイチ頼りない感じが萌えどころというか(笑)。全編出ずっぱりですし、「ハサウェイたんラブラブ」な人にも満足して頂けるかと。

さて『パッセンジャーズ』の音楽はといいますと、エドワード・シェアマーが担当してます。強烈な個性のあるアーティストではないので、いまいちメジャーになりきれない感はありますが、今回の音楽はアンビエント系でよい感じ。シェアマーといえば、『光の旅人 K-PAX』(01)というアンビエント・スコアの隠れた名作を世に送り出した実績があるわけですが、本作はその延長線上にある音楽といっていいでしょう。ピアノ(キーボード)のメランコリックな調べと、さざ波のように押しては退いていくシンセ・サウンドが心地よいです。特にエンドタイトル曲が出色なので、映画が終わっても席を立たない方がよろしいかと思います。

サントラ盤はランブリング・レコーズより3月4日発売です。輸入盤はハサウェイたんの顔が少々バタ臭い(?)感じで写っているので、ジャケットは国内盤の方が日本人の美的感覚に合っていると思います。

『パッセンジャーズ』オリジナル・サウンドトラック
音楽:エドワード・シェアマー
品番:GNCE7045
定価:2,625円

    

ベスト・サウンドトラック・30トラックス

ワタクシは「情緒」にこだわるタイプなので、音楽アルバムというものは音楽とジャケット、
歌詞カード(もしくはライナーノーツ)、ケースなどをひっくるめた「パッケージ」になって
初めてひとつの作品になるものと考えていたりするわけです。

なので、アーティストの作品をCDとして手元に置いておきたい(インテリアとして部屋に
飾ったりするので)ワタクシとしては、「曲をダウンロードして買う」という習慣がどうにも
馴染めなかったりするのですが、最近になって「ま、ベスト盤とかリミックス盤くらいは
配信でもいいかな」と思うようになりました。

やっぱりコンセプトとかアーティストの世界観/メッセージが確立されたオリジナル・
アルバムは真剣に聴きたいけれども、リミックス盤とか新規リスナー向けのベスト盤
なんかはもっと気楽に聴いてもよいのではないかと。

…などという事を考えていたら、いつもお世話になっているランブリング・レコーズさんから
『ベスト・サウンドトラック・30トラックス』なるiTunes限定のコンピ盤の情報を頂きました。

コチラのアルバム、いわゆる新旧有名映画のサントラ・ベスト的な内容なのですが、
既存の音源をコンパイルしたものではなく、プラハ交響楽団が新たにカヴァー演奏した
内容になってます。

主な収録作品は『スター・ウォーズ』、『ゴッドファーザー』、『ロッキー』といったクラシックの
定番作品から『ターミネーター』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『ブレードランナー』などの
80年代作品、『ハリポタ』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』といった近作まで有名どころを網羅
している感じ。基本的にそれぞれの作品のテーマ曲やスコアの組曲が収録されてます。

プラハ・フィルは映画音楽のカヴァー録音にあたって、実際にその映画のレコーディングで
使われたオリジナルの譜面か、サントラと同じオーケストレーションの譜面を使って演奏
するので、カヴァー集でも「原曲と雰囲気が違ったらイヤだなー」という心配もほとんど
ありません。なかなかいい塩梅です。

で、アルバムのお値段なんですが、30曲・約2時間収録で1,200円。こういったベストをCDで
出すと大体2枚組で3,000円前後ですかね。それを考えるとヒジョーにお得です。

「とりあえず有名映画のテーマ曲だけざざーっと聴きたいんだけどな・・・」とお考えの方には、
お値段は安いわ置き場所はとらないわで、なかなか便利なアイテムではないかと思います。

今からこのテのベスト盤を買うなら、コレを押さえておけば不自由しないでしょう。
iTunesをご利用の方は、コチラから製品サイトに行けますぞ。

ま、パッケージ主義のワタクシではございますが、「ベスト盤はお安く配信で、オリジナル・
アルバムはパッケージで」というふうに買って頂くと、消費者のおサイフにも優しい上に、
音楽市場にも優しいのではないかと思った次第です。

・・・というわけで、3月4日にランブリングさんからリリースになる『パッセンジャーズ』の
サントラ盤は、ぜひぜひCDでお買い求め下さい。

ワタクシも一生懸命ライナーノーツを書きましたので、よろしくお願い致します。
(その話についてはまた今度)